死にたがりの矛盾 1
壁から扉の隙間まで移動し、薄ら開く扉から中をのぞく。
見るとやや知能があるゴブリンが三体いた。机に座る行儀悪い奴がそのグループの親玉だろうか? 三体ともまだ幼体だったが、それでも人間を殺す兵としては十分だと俺は知っていた。
「だーかーら、俺らがどうしたのってさー、あの娘をやっちまうんだよ!」
「そりゃいい! 人間の容姿だし、かなりの上玉だから楽しみだぜ!」
ケラケラ笑うゴブリンは、本当に気持ち悪い笑みで吐き気がする。発想もだがな。
「確か大昔、強い兵を作る方法として『人間の女に産ませた赤ん坊』を食うことで、その魔王ほどではないが力をつけさせることができるって話だよな!」
「ああ。しかも今回の魔王の娘は、あの『知将』で『最強』の魔王様すら変える力だってんだから、そのさらにガキはきっと食えば同等だろうよ!」
「まあ、あのガキ自体で楽しむのもアリだがなー!!」
「ちげーねー!」
「「「ハハハハハッ!!」」」
……随分と命知らずなことだ。確かオッサン、マジでマオに負けたって話じゃねーか。あいつ笑って話していたがたまに脇腹とか抑えてたし。
数で負ける最強の話はあるが、それじゃ無理だろ。俺はそんな事を考え納得し……だが離れられない。
そうだよ。早めに話とけば問題は事前に解決するし、オッサンがなんとかするだろ。……だが、握りしめた拳が下ろせない。
まあ何より、魔族の事で何かあっても俺関係ないし。人間どころか異世界人なんだから、他の世界の事情なんて知らぬ存ぜぬだろ?
……だが、俺はいつの間にか、いつも肌身離さず持ち歩く形見のナイフを手に、俺は中に入っていた。
「誰だ––––」
まず近くのゴブリンの首を裂く。親指方向に向けたナイフをそのまま隣で棍棒を持とうとしたもう一体に、小指側に回したブレードで裂く。
その一連の動作に、頭と思うゴブリンは……涙目で棍棒で牽制した。
「ふーん……魔物って泣くんだ」
「お、お前あの奴隷人間だろ! 魔王様に言うぞ!」
「……お前に言えることかよ」
馬鹿馬鹿しいくらい、俺の頭は冷静じゃなかった。
本当、なんで俺今こいつら殺してんだ? 俺は死にたがりだろ?
「……く、っそーーー!!」
「……そんな程度でマオをヤるって?」
俺はくるっと回避し、そのまま回転しながら通り過ぎるゴブリンの首をナイフが当たる。
「…無理だろバーカ」
数秒後、細い首は裂かれ、頭が宙を舞う。