読めない子 2
「……あのような状態で、勇者も倒れ、夫婦も倒れ、戦う状態じゃなかった日から3日たった。エリーは依然苦しんでいたが、そんな中でユウマは私たちの前に現れた」
だんだんと落ち着いたのか袖で涙を拭い、しかし壁を真っ直ぐ見て目を合わせなかった。
「ユウマは最初、あれが夢だったと思い二人を探していたようだった。一応肉が腐らないようにして、いつか彼が望む地で埋葬させてあげようとしていたが、彼に見せるわけにはいかず誰にも触られないところに隠した。……ユウマは、はじめは私とエリーを交互に見て、そして何を思ったのかその場を出て行った。エリーにも、ユウマにも手を出さないように命令していたから他の魔族に襲われる心配はなかったが、最初彼は何か武器を持って仇をうとうとしていると思った。もしそうなら、私の命で償うつもりだった。……だが、戻ってきたユウマは、あの夫妻がその日持ち歩いていたリュックだった。彼は見たことない薬を渡し、彼女の汗を拭い……看病してくれて、多分だが数日は延命できた。子供とは思えない程手際良く、時に本を頼りにこの地に有るあらゆる薬草を調合したりして助けよとしてくれたんだ」
「……なんで?」
何度目かの疑問。でも、今のは一番に分からない疑問。
彼はなぜ、仇であった母を看病したのか、何を考えていたのか、分からない。
それが、彼はそこまで両親を愛していなかったからなのか、または思い付かないほど手の込んだ復讐だったのか……その答えが魔王の口から伝えられそうになった時だった。
遠くで、大爆発の音が響き渡った。