『消せない罪』
「……なんでまだついてくるんですか?」
「あ、あれー? ……どうすんのあんた、バレたじゃない!」
「いやお前がズカズカ歩くからだろ!」
「……もういいわ。引き返せないところまでよく来れたものね」
現在の場所『魔王城前』。
勇者と勝手に言われ、人質に娘取られ、果ては魔王倒せ……本当に最近の人間の国はタチが悪い。同族とはどうも思えない。
––––だが、王都の聖教騎士の団長は明らかに別格。副団長も常識人という点が違うだけで同じ力量を保有するが、その一つの点で私は従うしかない。あの男は異常すぎる性格で、自尊とも取られるかも知れないが王国一つ滅ぼせる私の力でさえ、あの男には知で対抗できない。
だからこうして一人、この地に単身で乗り込んでいる。魔王を倒すため……なのだが。
なんでか、道中で出会ったとある親子が同行するのだ。
「……王都に行けばいいって言ったわよね?」
「だってー、その王都兵に殺されかけたって言ったしさー!」
どうも追われる身のようで、仮に安全が保障される勇者の証を渡しても突き返されるほど信用できないらしく、その母は口をとんがらせてついてくる。
そしてその夫と思しき男も、見た感じはすごく頼りなさそうにニコニコと笑いながらついてくる。
だが、実力は明らか聖教騎士を束にするより遥か上。魔法を使えないという特殊事案を無にするその実力は私を何度か助け、無傷でこの地に立つ事になる。
持っているのは見たことない材質のナイフや、遠くを一瞬で射止める『拳銃』と呼ばれる武器。そしてその二つを華麗に駆使する二人の戦闘能力。
見たことない服装なのに、彼らは『異世界の勇者』と呼ばれてもおかしくないものだった。
そしてもう一人、この場に似つかわしくない少年が母親の背で眠っている。
その少年は戦闘そのものには参加しないが、二人の唯一苦手とする家事を得意とし、これでも昔はかなり手の込んだ料理をした私すら驚くものだった。
その間の二人の申し訳なさには少し笑ってしまい、旅は、意外と快適すぎたものだった。
本当に、快適すぎた。だがら、私の秘密を、『魔王を愛した』事まで話してしまった。
人間にも、魔族にも毛嫌いされる私を、騎士にされた事を除いても二人の夫妻はそんな世界に怒りを向けてくれた。
だから、この先に、最後の戦いに連れていくつもりはなかった………。
「……そん、な…」
だからあの時、私は魔王は向かう剣を晒すように刺された彼と、同じく軌道を晒して刺された彼女にそんな言葉が、後悔が漏れた。