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act.4

 敵性宇宙人と戦争をし始めて最早何百年と経っているらしい。

 そんな世界では宇宙人より齎された魔法みたいな力、超能力を扱う人間もいる。サイコキネシスとか透視と未来予知とかそう言う奴から皮膚が鋼鉄みたいになったり、目からレーザー出すっていうどっかで聞いたことのあるような能力を持った奴もいる。

 そして、そんな能力者が僕等の目の前に立ちはだかっていた。


「俺の力は体をダイヤモンドに変えられる。

 豆鉄砲の弾如きでは俺様の体に傷を付ける事すら不可能だな!」


 ガハハハと下品な笑いを浮かべる男を前に、僕は思わず同居人を見てしまった。確かに、彼の体に6発の弾丸を撃ち込んでみたが、そのどれもが有効弾とは成らず弾かれてしまった。

 こういう時はレーザー弾欲しい。


「君、ダイヤモンド切れる?」

「ん?ワシ、もうやって良いの?

 お前の為に遠慮しとったけど?」

「うん。良いよ。

 100人ぐらい撃ち殺してきたし。最後まで切って良いよ。これ片付ければアリスの家に籠ってるマフィアとも仕事は終わりだし」


 そうなればアリスとはまたしばらく会わなくて済む。正直、定時報告しに行くのも苦痛なのだ。エマみたいなお土産買うぐらいなら家の店に金落とせ!って感じの人間は良い。僕に辛く当たってこないし。

 だから、毎回定時報告しに行く時にお買い物するのが本当に苦痛なのだ。紳士としては花束と消え物を選ぶのは当然だが、好きでもない女の子に好かれる為のプレゼント選びは本当に苦痛でしかない。

 お師匠に言ったら怒られるだろうが、生憎僕は似非紳士だ。

 M1858の弾倉を交換しながら同居人の後ろに回る。


「お初にお目に掛る。

 ワシの名前は秋臣院伊周。しがいない人斬り故に……」

「人斬りだぁ?

 ハン!その細っこい剣で俺のダイヤモンドの体に傷を付けれるとでも?」


 ダイヤ男は笑いながら手にした機関銃を構える。


「それって純正の?」

「うん?ああ、この機関銃か?ああ、そうとも。

 純正のM60だ!博物館に貯蔵されてたのを戦争の騒ぎで好事家がかっぱらってな!それを俺の物にしたって訳だ。二人まとめて死んでくれや!なぁ!!」


 ダイヤ男の機関銃、M60は映画とかでもよく見ていた。欲しい。


「あの銃欲しいなぁ」

「うん?あんな玩具が欲しいのか?」

「バカだな。あれはヒーローが使う銃の一つだぞ?

 欲しいに決まってるだろう」


 弾代とか馬鹿にならないだろうけどさ。ロマンは捨てちゃダメだ。むしろ、この時代、この格好で、このスタイルはロマンの塊だ。主にお師匠の。

 ダイヤ男は腰に構えた機関銃をぶっ放す。機関銃ってのは得てして殆ど弾が当たらない。ちゃんと狙っても当たらない物を腰に構えて撃つんだ。そら当たらない。僕は同居人の後ろに立って煙草を咥える。この前マリーの父親の部屋からすべて拝借してきた物だ。

 彼にはもう必要ないからね。


「なんじゃ?曲芸でも披露させたいのか?ん?」


 同居人はそう笑うと腰を落とし、居合の構えを取る。僕が紫煙を吐き出すと同時にギキンと金属が擦れる音がした。それから数度同居人が刀を持った腕を振るとそんな音が腕を振った回数分だけ響く。


「あん?何した?()()()()?」


 多分、ダイヤ男は違和感に気が付いたのだろう。


「何やったも何も、君が想像してる通りだよ。

 君は体がダイヤになる。だったら()()()()()()()()奴が居ても可笑しくないだろう?」


 灰を落として、目の前で格好つけてる同居人の代わりに喋ってやる。


「さて、戯れもこれで終い。

 次はワシの番じゃな?金剛石を斬るのは初めて故に!」


 同居人はそう言うと地を這っているのかと言わんばかりの低さで床を駆けていく。その速さは目にも止まらない。

 彼我の距離は30メートル程。まるで空間が圧縮されたかの如く。所謂縮地と呼ばれるその走法だ。


「消えた!?」

「いんや?」


 ギャッと音がしたと思うと、同居人の刀は既に鞘に収まっていた。ダイヤの男は胴体と首が離れ離れになっており、血がピュウピュウ出ていた。

 ダイヤは表面だけだったのかな?


「詰まらんな」


 同居人は刀を抜いて刃毀れを確かめるが、無事だった様だ。


「じゃあ、僕帰るね。

 ちゃんと皆殺してくるんだよ?」

「ワシはお主と違って甘ちゃんではない」


 フハハと笑う同居人を見送り、ダイヤ男が持っていたM60を手に取る。非常に重い。機関銃の重さだな。

 一回、エマの所に持って行って丸洗いしてもらおう。そして、部屋に飾ろう。純正のM60とかなんでこんなビカビカ野郎が持っていたんだろう?

 ダイヤ男を見ればダイヤは解けていた。このままダイヤで死んでいたらかなりの額で売れたのではなかろうか?いや、ダイヤ化可能なESPの肉体をダイヤとして売って果たして購入者が出てくるのかも不明だよな。うん。僕なら絶対買わない。

 M60を担いでエマの店に行くと、見知った人を見付けた。


「あ、クルミ子さん!」

「おん?おぉ!アキか!」


 クルミ子さん。雷のESPで、僕の片思い中の人だ。


「元気してたか?」

「はい。クルミ子さんも相変わらずお綺麗ですよ」

「ハハッ!お世辞でも嬉しいよ」


 快活に笑うクルミ子さんに毎回ドキリとさせられる。


「この前、シュークリームありがとう御座いました」

「この前のシュークリーム?」

「ええ、この前僕がいない時にシュークリームを持って来てくれましたよね?」


 そこまで言うと、んー?と首を傾げられた。とても可愛い。


「確かにウチはアキん所に持って行ったが、中身はシュークリームじゃなくてケーキだった筈だぜ?チョコレートの」

「……ちょっとウチのバカ野郎を撃ってきますね」


 今回収してきたばかりのM60を構える。


「待て待て!

 つーか、その馬鹿でかいのどうしたんだ?お前のじゃないだろ?」


 クルミ子さんが慌てて僕の前に回り込み、M60を指差した。


「あ、これですか?

 さっきうちの家で馬鹿やった奴等に落とし前つけてきた所なんですよ。その時に戦った奴が持ってましてね。純正のM60らしいですよ」

「んー?どっかで見た事ある様な銃だな」

「もしかしたら、知り合いかも知れません。

 全身ダイアに出来るESPの人です」


 言うと、あー……っと何やら少しマズったという顔をしていた。


「もしかしてお知り合いでしたか?」

「いや、んーとな、多分、今、ウチと君とは商売敵なんだわ」


 その一言で思わず眉間に手を置いてしまう。


「すいません。今、クルミ子さんの上司以下全員をウチの撫で斬りが狩ってます」

「あー……分かった。

 まぁ、ウチとしてもお前等と戦うのは勘弁したいところだし、良いよ。でも、一応、向こう戻るわ。悪いけど着いてきてくれない?」

「大丈夫ですよ。

 コイツ、エマに預けても?」

「良いよ。そんぐらいなら待てるから」


 エマの店に入ると、エマがショットガンを分解していた。


「あら、アキじゃない」

「やぁ、こんにちわ」

「今さっきまで此処にクー子居たのよ?」


 クー子とはクルミ子さんのあだ名である。


「うん。表で会ってね。

 此れからちょっと一緒に出かけるんだ」

「そう。良かったわね。

 それで、私はその子豚さんを整備すれば良いのかしら?」

「子豚さん?」


 尋ねるとエマは解説してくれた。

 何でもこの英雄が使う銃は遥か昔の戦争ではピックガンと呼ばれていたそうだ。エマとのお話も楽しいが、今はクルミ子さんを待たせているのでまた今度にしてもらいたい。


「成程、そういう事なのか。

 エマの話は大変興味深いし教養にもなるんだが、如何せん今は人を待たせててね。

 また今度ゆっくり落ち着ける状況で聞きたいんだけれど、良いかな?」

「そうだったわね。

 じゃ、クー子とのデート頑張ってね」


 エマがからかう様に笑う。


「デートならどれ程良かった事か」


 肩を竦めて後にする。外に出るとクルミ子さんが暇そうに背を壁に預けて佇んでいた。


「お待たせしてすいません」

「大丈夫だ。

 んじゃ、行こうぜ」


 クルミ子さんは僕の肩より少し低いぐらいしかない身長だ。八重歯が特徴的で、耳にはピアス、お世辞にもナイスバディーとは言えないロリ体系であるが、それでも言動からは背伸びした子供という感じは一切感じられない。

 とても良い。言葉遣いは確かに良くないが、それでも相手を相応に思いやれる素晴らしい人だ。ちなみに、髪は金髪であるが染めているだけらしく、眉毛は黒い。


「最近どうよ?」

「順調ですね。

 お師匠の弟子という事で仕事も定期的に入ってきてますし。もっとも、お師匠の名前ばかりが売れて自分の名前が売れていない現状をもっと深刻に受け止めないと何時か足元を掬われてしまうっていうのもありますが」


 いつまでもお師匠におんぶにだっこしているわけにはいかない。シェリフとかガンスリンガーとかもう西部のそれを欲しいままに名付けられているお師匠のせいで未だに僕は保安官見習い(deputy)とかガンスリンガーの弟子とか呼ばれているが、僕的にもガンマンとかトゥーハンドとかそういうかっこいい仇名を付けられたいのだ。


「いや、そうじゃねぇよ。

 アリスとの仲だよ」

「アリスですか?

 アリスとは仲良くできているとは思いますよ。お互い、ライバルという間柄ですが決して敵対したいとも思っていませんし。僕的にはもっと友好的な関係を築いていけたら、と思っているのですがなにぶん相手は女性ですし、下手に関わってお互いに変な勘違いしてしまうのも良くはないですし、男女の仲は難しいですね」


 思わずアリスの辛く当たってくる所を思い出すしてしまった。全くもって関わりたくない。別のコミュニティーに行ければどれだけ楽なのだろうか?でも、それをするには些かの障害がある。お師匠と公社と金の問題だ。

 特に金の問題はデカい。お師匠に関しては放っておいても多分誰も困らないし、お師匠自身も気にしないだろう。

 公社に関しても向こうとしては放り出したと思ったら実は逸材でしたと来て個人的には相手の鼻を明かしてやったぜと言う気持ちで良いのだが、あいつ等利益のためなら何でもやるから恐ろしい。

 そして、金。もう、これが無ければお話になりません。地獄の沙汰もと言うほどに何時になっても金という存在は我々人間が人間たらしめる存在であると認識させてくれる。

 具体的に言えば、金が足らないからほかのコミュニティーには行けない、という所だ。

 ほかにもクルミ子先輩とかエマとか新しく弟子になったマリーの事だろう。ん?待てよ、今の僕の人間関係ってもしかして女の人が多いんじゃないか?男友達を考えてみると、公社から放り出されて以来何かと世話をしてくれるセブさん以外居ないんじゃなかろうか?

 あれ?僕は友達が少ない?


「成程なぁ~

 お前は恋人作らねぇの?」


 おっと?それは意中の相手から聞かれて一番誤解しやすいワードですよクルミ子さん。こんな訳の分からない状況でその告白的雰囲気に持って行ってしまうのですか?僕的には何等問題ありませんよ。寧ろ、大歓迎です。


「そうですね。個人的には大変興味があるんですが、いかんせん未熟者故に。

 お師匠ほどとは行きませんが、一人前になってからでも遅くはないのかと考えています」

「ふぅん。

 どういうのがタイプなんだ?」


 おっと?おっと?これは?もしかして?そういう流れですか?僕の期待値を上げていくスタイルですか?


「そうですね……

 髪は金髪で、背は僕より低い方が良いですね」

「成程。胸はボインか?」

「女性は胸ではありませんよ。

 ですが、強いて言うならフラットですね。それに笑うと愛らしい八重歯が覗き、耳にピアスを付けてて、髪型はツインテールにしていると尚良しですね」

「あん?

 それって私じゃねーか!」


 クルミ子さんはそこで快活に笑って僕の肩を軽く殴った。


「ハハハ。ええ、そうですね。

 女性は外見ではありません。どんな方でも一度話し合ってお互いの心を分かっていくべきですね」

「成程なぁ。良く出来た奴だよお前は。流石、シェリフの弟子だ」

「女性は大切にしろ。何せ、この世で唯一男以外の生物なんだから。そうお師匠に教わったので」

「ケッ!彼奴らしい言葉だぜ、全く。

 おっと、着いたな」


 先ほど出て来たばかりのビルに再度やって来る。中は大分静かだった。


「では、行きますか」

「おう!」

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