2:種族紹介①・二元種族
①人間種
いわゆるヒューマン、創世記の時代に精霊世界アベントゥーラにやって来たという原始種族の一つ。創世記での呼び名は新しき人々。
古代魔法とは違う超科学文明だったとされ、世界を制御する神の御業に手を出そうとして失敗、大津波による天罰を受け、文明は滅びたとされる。
魔素による肉体への影響により、臓器老化の速度が緩やかになっているため、平均寿命は三百歳となる。平均的に何でもこなせるが、種族における特徴はない。
②半神半人
信仰の対象となった人間が神性を手に入れ、神に昇華した存在。どの種族でも半神半人に堕ちることはあり、善神と悪神の二種類に分けられる。
発生率は極めて稀。よほど深い信仰の受け皿、つまりは人柱にでもならない限り、まず半神化することはない。仮に神聖な力を使えるようになったとしても、御子や聖女と呼ばれる人間に留まることが多く、人の域を出ることは難しい。
信仰の象徴となるため、現行世界における時間の流れから排斥される。副次的に年を取らなくなる。また理の外にある真理を覗いた者は、特に強い信仰を得てしまい、風土宗教の規模を超え、あらゆる多元宇宙から影響を受けるようになる。
理の外に座する者、そう呼ばれる域に達した半神半人は、同時並行的に存在する世界に住む、知的生命体の特定感情が集結する個体となる。
不死ではなく不滅の能力を得る。死してなおも永劫的に再誕するという。たとえそれが全なる絶望という負の感情だったとしても。
③精霊種
人間種と同じく、創世記の時代より存在した二元種族の一つ。精霊世界だったアベントゥーラの原住民であり、創世記での呼称は古き人々。
王国がセル・ウマノの進軍により陥落し、一度は辺境の地に追いやられる。世界を制御しようと目論んだセル・ウマノの蛮行が大津波を呼ぶと予言した。
自分たちの神性を投げ売り、己の不死性を捨て、常命の者になってしまうほどの古代魔法を行使し、救世の方舟を作ったとされている。彼らは交友のあったセル・ウマノも救い、三日三晩に渡る大洪水を乗り越え、生命存続の救世主になった。また細かく部族分けもされている。寿命は千年から万年単位が基本。
④エルフ族
精霊種の一種、人類存亡の危機に立ち合った原始種族でもある。もとは小神人とも言われており、自然とともに生きる存在だった。
狩猟の民でもあり、普通に肉も食べるため、菜食主義ではない。ただし、命を頂くという基本理念は捨てず、食事となった生物への敬意は忘れない。
種族の平均寿命は数千から一万歳程度であり、容姿端麗な美男美女が多い。
④ハイエルフ
光のエルフ、リョースアールヴとも呼ばれる。一般的なエルフが先祖返りした存在か、もしくは古の小神人たるエルフの末裔。不老者。
プライドが高く、自らを誇り高い種族とし、人嫌いなのもハイエルフの特徴。一般的なエルフが外交的になったにも関わらず、いまだに関係を断つ部族もいる。ドワーフ族、特に上級ドワーフたるドヴェルグの部族と仲が悪いのもまた、ハイエルフに限った話である。
⑤ダークエルフ族
精霊種の一種、エルフの聖地を追放された者たちの末裔。森の民から地中の民となり、特に別称たるデックアールヴ族と呼ばれることが多々ある。
肌色は褐色ではなく黒、エルフの美しさとはかけ離れた醜悪な容姿をしており、特にコンプレックスとした女性も多い。平均寿命はエルフ族に同じ。
エルフの聖地を追い出されたこともあり、同じ地中の民たる上級ドワーフとは逆に仲が良く、エルフの追放者を保護したのもドワーフ族である。
エルフ譲りの魔素感応能力の高さもあるが、ドワーフ族と共生したことで手先も器用になり、狩猟の技術は失われたが、代わりに工芸品製作の腕は上がった。
⑤ハイダークエルフ
闇のエルフ、スヴァルトアールヴとも呼ばれる。褐色の肌であり、エルフ族に負けず劣らずの容姿端麗さが残る。不老者。ダークエルフの先祖返り、または古き追放者たるダークエルフの末裔。
古のダークエルフはエルフ同様の美貌があり、それは色あせていない。ハイエルフからは堕落の隠者とされ、嫌悪の対象になっている。逆に上級ドワーフとは親密であり、良き友の対象と認定されている。
⑥ドワーフ族
精霊種の一種、地中の民や森の守護者とされる部族も存在する。独自の工芸技術を持っており、武人気質や職人気質の堅物が多く、偏屈な老人とする見方もある。
平均寿命は五千歳だが、特に万年も生きる仙人になる者もいるとか。男性の外見は極めて早熟であり、五歳程度で年を取り始め、八歳時には髭もじゃな男性に成長するという。逆に女性は子供のように身長が低く、髭なしの童顔を維持する。
男性はずんぐりむっくり、女性は子供体系。男女ともに大酒飲みな酒豪が多い印象であり、酔った勢いに任せた酔拳を得意とする武闘家もいる。
⑥ハイドワーフ
ドヴェルグの部族ともいう。不老者。髭の成長速度が速いというが、ずんぐりむっくりな体系ではなく、筋骨隆々な体つきで身長も人間種と大差ない。
古来よりいたドワーフ。ドヴェルグの末裔とする考えもあり、ドワーフ族が先祖返りした姿ともされる。性格は気さくだが、ハイエルフ同様にプライドが高い。
度々仲が悪いとされるのは、上級ドワーフとハイエルフ一派である。大地の民たる誇りを持つ上級ドワーフは、地中の民を蔑視するハイエルフが許せないのだ。
まさに犬猿の仲、火と油な種族関係なのだった。
⑦精霊種小鬼族
名前の通り、精霊種の小鬼族。代表的なのはホブゴブリン。小鬼族には二パターンあり、人に友好的な精霊種、逆に嫌悪を露にする悪霊種がいる。
ホブゴブリン:家事を得意とする小鬼、人好きで有名。とにかく人と関わるのが好きで、偶然居合わせた旅人に親切にしたり、居候になった家の手伝いもしてくれる。
ただし単なるお人よしではなく、人を見る目も確かにあり、敵意を向けてくるものには奉仕をしない。商人としての技能も高く、料理店の店主やアベントゥーラでは特定の人間にしか扱えない車を乗りこなし、運送業をする者もいる。
平均寿命は千歳から三千歳。器用で良心的、人様に迷惑をかけないというのが、ホブゴブリンの信条である。それもあり、悪霊種小鬼族のゴブリンが死ぬほど大嫌いである。
千年前の大戦で悪霊種の小鬼が暴れたことにより、見た目がそっくりな自分たちも勘違いから迫害され、ゴブリンに対する遺恨は消えるどころか強まった。
「あの卑しい小鬼」などと呼び、態度は辛辣である。ちなみにホブゴブリンは白よりの肌色、ゴブリンは黒よりである。(原典をアレンジ)
⑧ブラウニー族
女性の姿をした者はシルキーとも呼ばれる。個体差はあるが、男性の背は小さく、逆に女性の背は人間並みという変わった種族でもある。
平均寿命は五千歳程度。家事技能や秘書能力が非常に優れていて、大企業の家政婦や執事を務める者も多く、商人向きの気質もある。
何より人に仕えることを誇りとし、献身的な種族。
⑨ニンフ族
女性しか生まれないという特殊な種族。彼女らは恋した他種族の男を蠱惑し、攫って子種を絞り取り、子作りをするという。
ニンフ族の捕まった男は、束の間のハーレムを体感できるが、ニンフの一族を守るために一定の時期を過ぎれば解放され、記憶も消されるそうだ。
ニンフ族に攫われた男は、「まるで夢のような時間だった」と記憶は曖昧なものの、しばらく満足感が残るという話。寿命は万年単位。
ニンフ族は山や川、空などと縄張りとする領域により、その見た目が変化する。有名な精霊のウンディーネやシルフ・ドライアドなどは、このニンフ族に該当する。
⑩小人族
名前の通り、精霊種の小人たち。身長が伸びたとしても子供サイズで止まり、それ以上、伸びることもない。寿命は千歳から五千歳程度。
体が小さいがゆえに、物音を立てずに移動する技能もあり、暗殺も得意とする。持ち前の身軽さと器用さを活かしたトリッキーな動きをする。
敵対者を撹乱・隙を見て一撃を入れるヒットアンドウェイの戦法が得意。また装飾品を作る技能にも優れ、多彩な工芸品を作る。
・トロル:巨人化した場合はトロールとも呼ばれる。小人状態を精霊種の小人とし、巨人化した状態を悪霊種の小人と分類する。二面性をもった種族で、寿命は二千歳前後。
トロール化したトロルは理性を失う代わりに、優れた再生能力を有し、剛腕を振るう毛むくじゃらな巨人となる。
⑩妖精族
背中に四枚の羽が生えた種族。人に好意的であり、逆に悪意的でもある。そんな二面性を持つ種族。自然とともに生きることを理念とした種族で、妖精の主としてハイエルフと仲が親密である。ただし、地中の民を否定はしておらず、そのあたりは中立的立場。
⑫ディーナ・シー族
英雄妖精とされる種族。男性は人間種と変わらぬ見た目だが、女性は全体的に背が低い。ただし恐るべき胸囲を誇り、最小サイズの女性でもEカップだという。
見た目と胸囲がアンバランスな体系、いわゆるロリ巨乳体質がほとんど。知勇双方に優れ、魔術と近接戦闘をそつなくこなす。
公平な見方をする種族で、英雄妖精と呼ばれるだけあり正義感は強く、さらに怪力だという特徴もある。好物はミルク類、ゆえに胸囲に影響したのだろうか……
⑬天使族
アベントゥーラにおける最高の魔術技能を誇る種族。不老者。一般には秘匿とされているが、古代魔法に関する知識も僅かにある。
ただし失われた魔法だけあり、天使族でも再現するのは困難。信仰心が高く博愛主義、かつて巫女や聖女と呼ばれた者の末裔であり、神の御使いともされる。
性格は温厚だが、慈悲深いと同時に合理主義でもある。合理的な損得を優先するあまり、感情論に基づく訴えをなかなか聞いてくれない。
ようは融通の利かない性格なのだ。教団の所属者が多く、悪魔族を警戒する。博愛主義がゆえに悪魔族を蔑視してはいないが、主義主張の反りが合わない。
神の御心に背いた者とし、教団本部に悪魔族の侵入を禁じた。自然信仰の熱かった精霊種とは仲が良いが、我欲に染まりやすい人間種ことは理解に苦しんでいる。
⑭竜族
精霊種と人間種の二元種族とは別に、古来より存在した超生命体。ドラゴンは自然より生まれ自然に還るとし、生命の循環における独自の価値観がある。
誇り高く自らを生態系の王者と疑わないため、人間軽視をしている者も多い。が、人に扮して交友をもったりと、個体差はある模様。
千年前の食物危機に際し争い、その数を大きく減らした。
・天竜:特に空を領域とするドラゴン。二枚の大きな翼をもつ竜と、大蛇のように手足がなく尾の長い龍の二種類がいる。
個人主義の明確な種族のため、縄張り争いをすることも多々あったが、千年前の食糧危機には共闘、天竜の一派となった。
・地竜:大地を領域としたドラゴン。天竜とは異なり、比較的統率の執れた竜族。見た目は恐竜そのもの。Tレックスのような二足歩行。
ステゴサウルスのような四足歩行のドラゴンもいる。千年前の食糧問題では他の種族の迷惑をかけまいと、同族食いもやむなしかと悩んでいた。
結託した天竜の襲撃により敵対。地竜たちは天竜に反抗し、二つの派閥が争う竜族戦争が勃発した。
⑮巨人族
これまた二元種族とは別に古来より存在した種族。独自の文化が根付いた集落に住んでおり、他種族との交友はあまりないが、嫌悪もしていない。
レーシー:森の支配者とされる巨人。自らの支配領域たる森の中であれば、迷い込んだ者に幻聴を聴かせたり、原生生物や霊獣にまで命令権を持つ。
人の姿を模すことも容易。植物操作が得意であり、老人のような姿をしていることが多い。寿命はおおよそ万歳程度であり、森の仙人として不老者に至った者もいる。
とにかく葉巻が大好きであり、葉巻に異常な執着を見せる。
※分量が多くなりましたので、種族紹介②に続きます。