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第八章:九つの尾を持つ獅子達

豚を一喝し黙らせた者はイプロシグ王より年上で既に還暦を迎えていた。


しかし、身体から放たれる気は他を圧倒し、イプロシグ王を護るように立つ事で威厳もある。


この初老の男こそ9家の筆頭であるフォルグ大公である。


大公とは王を表したりもするが、サルバーナ王国の爵位は大きく分けると5つしかない。


上から順に「公爵」、「侯爵」、「伯爵」、「子爵」、「男爵」という爵位で五爵位とされる階級だが時が経つに連れ五爵位だけでは足りなくなった。


それだけ領土が拡大した証拠であり、新たに「辺境」の名が付いた五爵位が付け足された事により計10爵位になったが、その中でも9家だけは特別扱いだった。


というのも9家は初代国王フォン・ベルトの時から傍にいた側近中の側近なのだ。


歴代国王も9家に助けられた事は多々あり、9家を無得には扱わないよう心掛けている。


こういう経緯もあり9家は階級こそ五爵位の中にあるが、呼び名も権限も違っていた。


先ず筆頭家であるフォルグ家はフォン・ベルトから直々に剣を一振り与えられ、その上で国旗にも使われている獅子を使う事と「大公」の名も与えられた。


この大公は様々な形で在るが、サルバーナ王国では王の片腕---即ち副王とされている。


もっとも流石に副とは言え王の名は畏れ多い為か、通常の公爵より格上という形にフォルグ家が願い出た結果・・・・・通常の公爵より格上だが、王の足下に跪く形となっている。


では、残る8家はどうなっているのか話から大きく逸れてしまうが触れるとしよう。


先ず筆頭家であるフォルグ大公家が頂上にあり、その次に「ガレオス侯爵家」がある。


ガレオス侯爵家は小刀を紋章としており、これはフォン・ベルトが常に何かと用を命じた事から来ており、同時に様々な事柄に明るい賢い者---即ち参謀役であったとも言われているのが由来だ。


爵位も公爵の次に上の侯爵でもある事からフォルグ家と共に9家の双璧と称される家柄である。


その次に「ウレネム家」と「ムルウス家」が続く。


上記の2家の紋章はウレネム家が鴉で、ムルウス家が犬だ。


ウレネム家の紋章が鴉なのはヴァイガーを最初に発見した事から来ており、ムルウス家は忠誠心に厚い事から来ている。


そして戦の折りは斥候・偵察・走駆などの任務に従事したと言われている事も由来とされていた。


この2家の爵位は子爵であるが、その次に来る2家も同じ子爵なのが興味深い。


次に紹介するのは「ラウサア家」と「ハレグス家」だ。


ラウサア家の紋章は羆で、9家の中でも巨体と知られており戦の時はフォン・ベルトを護る近衛兵に抜擢されていたとされている。


だが、その体格の割には細かい作業も出来る事からヴァイガーに築かれたリブリーブス城を手掛けとも言われており、ここから羆の紋章になったらしい。


逆にハレグス家は馬が紋章で、ラウサア家に比べれば細身で長身の者が多く、また馬の産地としても名前が知られている。


やはり他の家同様に戦場での働き・・・・即ち馬の如く戦場を走り、偵察・奇襲・急襲等に長けていた事が由来とされていた。


ただし、残る3家は些か他の6家とは事情が異なる。


先ず9家では最下位の爵位を持つ「ウドレス家」について説明しよう。


この家の爵位は五爵位の最下位である男爵だが、紋章は小獅子が鞘を口に銜えているのが大きな特徴だ。


何せ獅子はサルバーナ王国の紋章であり、おいそれと使用して良い物ではないのだからな。


それを男爵家が使用できるのは、フォルグ家の「分家」に当たるからに他ならない。


故に最下位の男爵家でありながら獅子を紋章に使う事が許されているのだが、分家という立ち場を明確にさせる為か、大人の獅子ではなく子供の獅子である。


同時に決して本家より出しゃばらないように歴代当主が心掛けている点も・・・・・周囲から認められているのだろうとは容易に想像できる。


そして残る2家についてだが、こちらはウドレス家以上に・・・・・・・9家では浮いた存在であり、警戒されている。


「ザウレグ家」と「イガルゲ家」だ。


こちらの爵位はウレネム家、ムルウス家、ラウサア家、ハレグス家、そしてウドレス家より上の「伯爵」

であるのが先ず注目すべき点の一つに挙げられた。


では、この2家の紋章について説明しよう。


ザウレグ家の紋章は鴉と蛇で、イガルゲ家の紋章は九つの尾を持つ白狐だ。


鴉はウレネム家が使用しているから然して問題ではないが、蛇も紋章に入っているのが違う。


蛇は毒を持つ個体も居り、四肢が無く腹で這うように動く事から良い見た目ではないが脱皮もすれば長時間、飲食をしなくても生きていけるだけの生命力もある。


この事から「死と再生」と見る面もあり、一方的に見る事は不可能だ。


一方的に見る事は不可能だが・・・・・・ザウレグ家の場合は寧ろ「狡猾で残忍」という意味合いで見られている。


何せザウレグ家の初代当主はフォン・ベルトを退け自らが国王になろうと画策したと言われており、それをフォン・ベルトは見抜き紋章に鴉の他に蛇を付け加えたと・・・・されているのだからな。


お陰でザウレグの意味は「意地悪い」として知られてしまったが、嘘か誠かは今もって不明である。


これは対を成すイガルゲ家も同じ事だ。


イガルゲ家の紋章は狐で、蛇同様に神話では極端に善悪に分けられる傾向があるも、やはり人とは切っても切れない関係になっているし神として祀られている面もある。


ただし「九つの尾」を持った狐と言うのがイガルゲ家の特徴であった。


何せ九尾は即ち9家を連想させるからだが、歴代当主の名にも「サル」が使用されているのも注目すべき点だ。


サルとは言うまでもなくサルバーナ王国のサルから来ており、九尾も9家から来ているとされている。


その理由はイガルゲ家の初代当主が・・・・・・フォン・ベルトの寵愛を受け、子も儲けたと言われているからに他ならない。


別に寵姫の一人や二人くらい居ても然して問題ではない。


寧ろ一人に愛を貫いて子も儲けられぬ方が酷い話だが王としては問題であるのだからな。


話を戻すとフォン・ベルトの妻---つまり国王后および側室が何人居たのかは分かっていない。


ただ、イガルゲ家の初代当主が寵姫の一人だったという事は・・・・・イガルゲ家の史書にも書かれているから確かだ。


もっともイガルゲ家の初代当主もザウレグ家の初代当主同様に余り良くは見られていなかったようだ。


こちらの場合は出生である。


イガルゲ家の史書によれば初代当主は岩屋(洞窟)根城に然る山一帯の支配していた山賊の頭だったらしく、夫婦の契り(盟約)を結んでいた兄弟2人と巷を荒らし回っていたらしい。


容姿は絶世の美女と称されていたらしく、男に困った事はなく文武にも長けていたというから正に一女として非常に出来た人物だったようだ。


そこへフォン・ベルトが現れ、彼の勇敢さと精悍な出で立ちに一目惚れし味方になり、かつての仲間や兄弟2人を打ち倒したと言われている。


それこそ自分に恋心を抱く男達を利用したと言っても良いだろう。


これが8家を始めとした者達からは「場に酔い易い性格」にして「男を虜にし捨てた悪女」と見えるのか、蔑視されている。


おまけに女の身でありながら九つの尾を持つ狐を紋章としているのだから・・・・・・獅子を紋章に持つフォルグ家とウドレス家に対しての当て付けにも見られたのは想像に難くない。


とは言え男性視点から見ればそうだが、イガルゲ家の史書と王室の史書によれば「非常に情愛に厚い女であり一途である」と書かれている。


だが、現実は何処までも厳しくイガルゲ家はザウレグ家同様に悪い意味で9家の双璧と称されていた。


以上が九つの尾を持つ獅子こと9家の説明であるが、かなり話が逸れたので改めて場面に戻るとしよう。


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