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第五十六章:髑髏の首狩り騎士

レイウィス女王がゲッツ・ヴァルディッシュの地に足を運んだのは政教分離を確立させた1ヶ月後の事であった。


当初は使者を赴かせてゲッツを招集する手筈だったがレイウィス女王はエヌ・ブラウザ辺境伯爵の三つ目を先に彼の地へ赴かせていた。


それはレイウィス女王の中では自身が行くと決めていた事であり・・・・何やら血生臭い噂を聞いたと言われている。


三つ目はレイウィス女王の命に従い直ぐにゲッツの地へ走り現地調査を行った。


如何なる植物が合うかどうか調べ、兎の対策も兼ねてあったらしく調べ終えるのには3週間ほど要したが・・・・その時間で噂も確かめる事が出来た。


そしてヴァエリエに戻りレイウィス女王に報告すると彼の女王は「出立の準備をせよ」と臣下に命じた。


臣下達は些かレイウィス女王の動きに安全面で反対を口にしたが9家の1家であるイガルゲ侯爵だけは「そこまで反対するなら殿方は来なくて結構です」と言った。


『殿方としては女王陛下の安全を考えての事でしょうが、女王陛下は行くと言ったら行くのです。ならば私共は安全に行けるようにすべきでしょうに・・・・これだから殿方は肝心な所で役に立たないんですよ』


痛烈な皮肉をイガルゲ侯爵は言うが、それは自身に対しても言った皮肉であったらしく・・・・上記の言葉を言った時の顔は憐れなほど自嘲していたらしい。


しかし、レイウィス女王は「ならば貴女だけ同行して下さい。後は要りません」と言いイガルゲ侯爵を慰めたと言われている。


そんな経緯で・・・・彼の女侯爵だけが付き添う形になった。


こうなると残る8家も同行すると言い出したがレイウィス女王は改めて「不要」とだけ言い、臣下の中ではイガルゲ侯爵だけを供とした。


それ以外は三つ者、エルフィ、シャノアだけで・・・・死の騎士団は近衛兵騎士団として最初から付いて行く。


行く人数を決めると出立するだけとなったが、噂を聞き付けた地方貴族は直ぐにレイウィス女王の為に道を用意した。


そして留守を命じられた臣下達はヴァエリエから地方の入り口までを警護する事で・・・・付いて行けない悲しみを埋めた。


こうしてレイウィス女王はゲッツ・ヴァルディッシュの地へと出発した。


時にサルバーナ王国歴1033年4月5日の事である。


ゲッツ・ヴァルディッシュの住む流刑地まで行くのに凡そ2週間ほど掛かったが、その間は何事もなく進めた。


そして4月19日・・・・レイウィス女王は九死に一生を得たゲッツ・ヴァルディッシュの住む流刑地に到着した。


彼の女王が流刑地に入ると死の騎士団は周囲を警戒しながらゲッツ・ヴァルディッシュの地へ赴いたが、その途中で・・・・無惨な死体を幾つも見たとされている。


その死体は首を天高く晒され、胴体を串刺しにされた状態で見つかったが・・・・そんな死体がゴロゴロしていた。


これを見てレイウィス女王は三つ目に「あれが?」と問い、三つ目は「その通りです」と答えた。


そう・・・・ゲッツ・ヴァルディッシュの地へ先に行った三つ目は血生臭い噂を確認したのだが、それが上記に述べた死体である。


死体となった者達は・・・・レイウィス女王を捕えんとした流人達であり、ゲッツによって敗れた者達ばかりだ。


ただし、三つ目の報告によれば「ゲッツは敵を追い払いこそしたが、このような真似はしていない」との事らしい。


つまり・・・・誰かが意図的にやっているという訳だが・・・・果たして誰だろうか?


もっともレイウィス女王には察しがついたのかゲッツの住む地へ急ぐように軍を進めたと言われている。


そして4月22日に・・・・ゲッツ・ヴァルディッシュの地に到着した。

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ゲッツ・ヴァルディッシュの地にレイウィス女王が再び現れると入り口前でゲッツは皆で出迎えたらしい。


それこそ女から子供に至るまで土下座しており、その様は罰を言い渡されるのを待つ罪人のようだったらしいが、それを見てレイウィス女王は微苦笑しゲッツ達を立たせた。


立たされたゲッツはレイウィス女王に「この度は女王陛下に御会いでき、誠に恐悦至極にして光栄に思います」と言った。


しかしレイウィス女王は「顔が似合っていません」と言いながらもゲッツに厚い礼を述べた上で・・・・3本の剣を差し出した。


3本の内1本は大太刀で、2本目は片手打ち、そして3本目は中脇差だった。


『大太刀は9家の筆頭であるフォルグ大公から、片手打ちと中脇差はイガルゲ侯爵と三つ目からです』


私からは・・・・これですとレイウィス女王は一匹の犬を前に出した。


その犬は細身で流線型の身体---首、胴、脚、尾が長くて折れた耳が特徴だったが、バランスの取れた身体が実に美しい。


『この犬は9家の1家であるムルウス子爵が用意してくれた犬で兎などを狩る事に慣れた猟犬です』


名は狗奴と言い、とても賢いし脚も速いとレイウィス女王は説明しながら・・・・紙を2枚ほど取り出した。


『ゲッツ・ヴァルディッシュ。貴方に辺境子爵の爵位とツーの称号を与えると同時に賭け事を許します』


これを聞いたゲッツは眼を見張った。


何せ自分は流人の子孫であり・・・・とてもじゃないが貴族になんてなれない。


そればかりか賭け事も許すなんて・・・・・・・・


『これは私からの恩返しと受け取って下さい。嫌だと言うなら国王の名の下に命じます』


今日よりゲッツ・ツー・ヴァルディッシュ辺境子爵と名乗り・・・・この流刑地を治めろ。


『良いですね?』


こう言われたゲッツは驚き、そして・・・・子供みたいに泣き出した。


それは先祖の罪を目の前の女王は赦したばかりか・・・・貴族に召し抱えたのだから無理もない。


その様子に領民となった者達も泣いたがレイウィス女王だけは温和な笑みを浮かべて見下ろしている。


サルバーナ王国歴1033年4月22日にゲッツ・ツー・ヴァルディッシュ辺境子爵は誕生した。


これでレイウィス女王は恩を返したが、まだやる事があると言ってゲッツに泊まらせてくれと願った。


ゲッツは直ぐに快諾したが・・・・その理由を尋ねた。


もっともゲッツ自身も例の死体を見た事から多少は察していたらしいので確認の意味が強い。


レイウィス女王は「・・・・会いたいのです」とだけ答え、短い時間だが住んだ自身の部屋へ向かい・・・・夜まで一人で過ごしたと言われている。


しかしイガルゲ侯爵だけは何も知らないのでゲッツに死体の事を問うた。


それにゲッツは死体の話をしたが、それによるとレイウィス女王を捕えんとした流人達は皆・・・・髑髏の騎士に狩られたとの事だ。


姿を見た者も居り、その者こそレイウィス女王を護り続けて死んだ髑髏の騎士が地獄から蘇り復讐をしているのだと・・・・・・・・


こうゲッツに説明されたイガルゲ侯爵は「そうですか」とだけ言い後は何も言わずに夜まで過ごした。


そして夜になると・・・・レイウィス女王は死の谷へと向かった。


まるで会いたいと切に願い続けた愛しき男と再会せんが為に・・・・・・・・


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