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第五十一章:最大の贖罪を

最初が三つ目視点で、次が私視点となります。

12月28日・・・・その日は濃霧で何時もより冷えたが周りは戦準備に勤しんでいた。


それは敵が1万という大規模で押し寄せて来たからに他ならないがゲッツは怯えた様子を微塵も見せていない。


1万の敵に対しゲッツは700~800で勝ち目なんて無い。


如何に烏合の衆でも純粋に数では圧倒的に勝っているのは事実・・・・・・・・


そして霧が薄くなってきた頃に敵の大将が遠くまで音が届く魔石を使い降伏するように言ってきた。


向こうの望みはレイウィス王女一人だけ。


そう敵は言い、レイウィス王女は出ようとした。


自分が投降すればと考えたようだけどゲッツは止めた。


『女が身を挺するのは男にとって屈辱だ』


同時に・・・・・・・・


『客人を厄介事から護るのは当主の役目』


これを聞いて私とレイウィス王女は「恰好付けたがり屋」と言われるゲッツの異名に改めて納得した。


この男は面倒臭い程に・・・・筋金入りの恰好付けたがり屋だ。


でも・・・・だからこそ私達は助かり、そして正体が知られても逃がそうとゲッツはしている。


ただレイウィス王女は髑髏の騎士の事もあり複雑そうだった。


それでも王族としての義務を果たそうと決めたのか・・・・ゲッツに背を向けて自室に向かった。


その後ろ姿は既に王女から・・・・女王になろうとしており私は一抹の悲しさを抱いた。


このような仕打ちを何故にレイウィス様が!!


私の怒りを認めたのかゲッツは静かに言葉を投げてきた。


『お前さんも用意しろ。それからエルフィ、シャノア。お前等2人もだ』


ゲッツは私の隣に居た14~15歳の娘にも旅支度を命じたけど、2人は少し戸惑っていた。


『お前等はレイウィス王女様の傍に行け。こっちの御嬢さんは今も身体を自由に動かせない。つまり・・・・お前等もレイウィス王女様の護衛をしろ』


ここは俺達が引き受けるからとゲッツは2人に言い、私にはこう言った。


『あの方は王国に必要だから・・・・護ってやれよ?』


言われるまでもないわ・・・・・・・・


そう私が言うとゲッツは更に何か言おうとしたけど・・・・私は平手打ちをくれて黙らせた。


『どうせ顔に似合わない臭い台詞を言うつもりだったでしょうけど・・・・そんな暇があるなら動きなさい!敵は待ってくれないのよ!この恰好付けたがり屋!!』


ここまで感情を露わにした事はないけど目の前の男には去る前に言ってやりたかったから後悔はしていない。


ゲッツは暫し茫然としていたけど次の瞬間には笑い出して部下達に檄を飛ばしたので私はエルフィとシャノアを連れて用意に取り掛かろうと背を向ける。


ところがゲッツが・・・・また声を掛けてきた。


『レイウィス王女を頼むと言ったが・・・・お前も気を付けろよ?』


言われるまでもないわ。


あんたとは別の意味で恰好付けたがり屋な上に面倒臭い男である髑髏の騎士からも頼まれたのよ。


死に逝く者の願いを聞くのは生者の義務。


そして願いを代わりに適えるのは責任・・・・・・・・


でも・・・・この手の願いを引き受けるのは何時だって女・・・・何時だって男は女に押し付ける。


挙句の果てに自己満足して死んで逃げる!!


それでも・・・・女はやる。


男より現実を見るけど・・・・こういう愚かしい面倒な所は変わらない。


ただ・・・・男より女の執念は強い。


それを教えて上げるわ・・・・・・・・

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ここまでがゲッツ・ヴァルディッシュ辺境子爵の奥方になった三つ目の遺した書物である。


最初に読んだ時には驚いた。


何せ夫であるゲッツをここまで辛辣に評するのだから・・・・・・・・


しかし、そこをマルーン辺境伯爵夫人などに尋ねると「それが女というものです」と言われた。


また夫に当たるヘルザン様からは「君が幼い。これから女という生き物を学べば解るものだよ」と言われた。


ただ、それでも納得できなかったので食い下がると・・・・御二方の恋愛を聞かされた。


聞いた時は驚いたが、新たな史書を書くには良い材料になるとも考えてしまったから私の読書と妄想も程々にしなければならないだろう。


話が逸れたので戻そう。


ゲッツ・ヴァルディッシュ辺境子爵の奥方になった三つ目の書いた手記だが、まだ続いているので本来ならそちらを載せておくべきだが・・・・・・・・


続きは虫に食われるなどして解読は不可能だったので、ここまでしか載せられない。


だが、ゲッツの腹心が遺した書物があるのでこちらを今度は載せるとしよう。


その書物によればレイウィス王女を逃がしたゲッツは自身の配下を集めると以下の演説を行ったらしい。


『俺は、この地に流された者の子孫---つまり流人の血を引いているから御天道様の下は歩き難い』


しかし眩しいからこそ憧れてしまう。


この言葉に返す言葉があるとすれば「太陽に焦がれた鳥」であろう。


太陽に憧れた鳥はひたすら太陽に向かい飛び続けたが、近付けば近付くほど身体が熱くなり・・・・ついには両翼を燃やされて海へ落ちて死んだという話だ。


著者の読んだ本では「何事も憧れるのは良いが、火傷しない程度に心得よ」と書かれていたのが記憶に残っている。


つまりゲッツの先祖は太陽の下を歩く事に憧れを抱いていたが、火傷したくないから敢えて避けて通ったのだろう。


『先祖は残念ながら御天道様の下を堂々とは歩けず死んだ。だが死ぬまで憧れていた。俺もそうだ。何時か御天道様の下を堂々と歩いて、日が沈んだ時に仕事を終えて寝たい』


だからこそ先祖は・・・・死ぬまで太陽の下を堂々とは歩けなかったが、それでも流刑地でも良いから根を下ろして土を耕して生きて行こうと試みた。


兎や鼠に食われても・・・・土地目当てに攻めて来た流人達を追い払い続けたのも・・・・・・・・


『全ては、この母なる大地の為だ。この地は俺達の先祖を迎え入れた土地---慈母の如く心優しい』


そして・・・・他人を厚く迎えるのも贖罪の為である。


『罪を犯した俺達が赦されるとすれば死んだ後で行われる審判の日だろう。それまでに先祖は少しでも罪を軽くしようと如何なる者だろうと客は手厚く迎えた』


何の見返りを求めなかったのもそうだ。


だから・・・・・・・・


『レイウィス王女を迎え入れた。彼の御方は我々みたいな卑しい者に対しても何の偏見も持たずに接してくれた!!』


そればかりか・・・・・・・・


『我々の為に食事を作り、寝床を清掃して下さった。それは泊めた我々に対する恩を返す為!!』


あの御方こそ王国を治めるべき者!!


『それを奴等は私利私欲の為に捕えんとしている!!』


自分達は罪を犯し刑に服しているのに新たな罪を犯すとは何事か?!


『生憎と俺は御免だ!奴等の気持ちも理解できるが、それをやれば俺等は先祖以上の大罪人となる!そればかりか先祖たちの贖罪を無駄にする!!』


これほど愚かな罪は無い!!


『だから俺はレイウィス王女の為に戦う!仮に死んでも我が先祖は褒めてくれるだろう!!』


それは最大の贖罪をしたから・・・・・・・・


『何より・・・・あのような乙女を大勢の男が数で捕えるなど恥知らずも良い所だ!男なら自力で女を物にしろ!何のために俺等の股間には剣があるんだ?!』


女を愛する為だ!!


『てめぇ等にもナニがあるならおっ立てろ!!』


出来ないなら屑のオカマ野郎だ!!


『真の男ならおっ立てたナニを猛々しくオカマ共のケツ穴に突っ込め!!』


ヒィヒィ言わせて突き殺せ!!


『この地は王が滞在された場所!奴等を入れるな!!』


一歩たりとも・・・・・・・・!!


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