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第四十九章:髑髏との約束

ここから私視点でしたが、三つ目視点となります。

サルバーナ王国歴1032年12月15日・・・・流刑地の中をレイウィス王女は一人、進んでいた。


とはいっても流刑地の中である事からレイウィス王女は生きた心地なんて一度もしなかったのではないだろうか?


唯一の味方だった髑髏の騎士は既に橋の手前で死んでしまい最早・・・・流刑地においては味方が誰も居ないのだ。


本来なら・・・・そこで絶望して自害する事で終わるが真の創造主はレイウィス王女に救いの手を差し伸べた。


それは流刑地だったが現在は然る辺境子爵が治めている事が何よりも如実に証明していると言えるだろう。


かつては流刑地だったが現在は養蚕業ようさんぎょう、賭け事、そして共和国との貿易で成り立っており流刑地だった過去を偲ばせるのは土饅頭だけだ。


この地を治める辺境子爵とは会った事もあるが、外見が強面で不覚にも泣きそうになったのは記憶に新しい。


しかし著者の継父である第32代目エヌ・ブラウザ辺境伯爵とは旧知の仲で著者と実母の後継人にもなって下さるなど心優しい方だ。


そして著者には犬を一匹プレゼントしてくれるなど人心を掴む手腕も大したもので、仁義にも厚い方である。


こういう所は如何にも先祖譲りと調べた際には思ったものだが、彼の先祖は死の谷の戦いで死んだブタマンからは「恰好付けたがり屋」と揶揄されていた。


ブタマン以外にレイウィス王女を捕えんとした流人長達も同じような評価を下しているが、それは裏を返せばブタマンを始めとした者達が捨てた物を・・・・捨てずに持っていたと取れる。


つまりブタマン達は表では皮肉を言いつつ内心では嫉妬し羨ましかったのかもしれない。


だからこそ・・・・あれだけ貴族になりたがっていたブタマン達は死に果て、代わりに一人の娘を護る為に戦った者が・・・・辺境子爵となり今も命脈が続いている。


では・・・・その子孫を先ずは紹介させてもらう。


レイウィス王女を護った人物の子孫は「ブロウベ・ヴァルディシュ辺境子爵」という人物である。


そして先祖の名は辺境子爵の爵位と共に「新興」を意味するツーの称号を一代限りだが授与された「ゲッツ・ツー・ヴァルディッシュ」である。


彼が今も続いているヴァルディッシュ辺境子爵家の中興の祖にして著者と実母の後継人を務めるブロウベ様の先祖だが、如何にしてレイウィス王女と出会ったのか?


その内容をこれから書いていくとする。

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サルバーナ王国歴1032年12月15日。


この日は雪の代わりに再び雷雨だった。


その雨は冬という事もあり肌に突き刺さるように寒くて冷たい。


こんな雨と泥では私の着ている雨具はおろかレイウィス王女の雨具も大して役に立たない。


現に私は雨具を着ているのに・・・・服がビショビショだ。


それにしても・・・・しつこい連中だ。


私の耳に流人達の走る音が聞こえてきた。


これで何度目だ?


橋は髑髏の騎士が破壊したので渡って来れないと思っていたが・・・・谷に下りて追い掛けて来たのだろう。


「・・・・しつこい男は女に嫌われるのよ」


独り言を呟きながら私は足を止めた。


そして懐から糸を取り出す。


糸はギリギリまで薄くしてあるが強度は問題ない。


おまけに・・・・勢いよく糸に接触すれば切断も可能だ。


糸の正体は蜘蛛の魔物が吐き出す糸で、私が工夫を凝らして仕上げた代物である。


その糸を伸ばし木の下などに結び付けてから必死に走るレイウィス王女に追い付いた。


「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!来ないで!!」


私の姿を見て逃げ切れないと悟ったレイウィス王女は短剣を抜いたが雨で手から滑り落ちた。


だが直ぐに拾うと戦う意思を見せつけた。


とはいえ・・・・子犬みたいに幼くて弱々しい。


『・・・・このような方を泣かせるのだから北の男は最低ね』


改めて私は髑髏の騎士に怒りを覚えたが・・・・今はレイウィス王女の誤解を解かないといけない。


「王女、私はエヌ・ブラウザ辺境伯爵様が遣わした三つ目です」


証拠としてエヌ家の紋章を彫り込んだダガーを見せるが、こんな物で自分の身分を証明できるとは思っていない。


現にレイウィス王女は私を睨んだままだ。


しかし、間もなく敵は来るから急がなくてはならない。


「このダガーだけでは信用できないでしょうが・・・・今は私を信じてくれませんか?」


三つ目なんて仕事をしていると実に陳腐な言葉だと思いたくなる。


その上・・・・私は親が居らず騙し合いや裏切りが当たり前の日常を長らく送ってきたから余計だ。


だから・・・・信頼なんて要らないとすら思った事もあるが、それをエヌ・ブラウザ辺境伯爵様は与えてくれた。


その恩返しに私は三つ目となったが性根は変わらない。


それでも今は・・・・・・・・


「王女、どうか私を信じて下さい。お願いです」


必死にレイウィス王女に伝えると・・・・レイウィス王女は短剣を鞘に納めた。


「わかり・・・・ました。貴女を信じます」


「ありがとうございます。では、こちらへ・・・・・・・・」


私はレイウィス王女の手を取ると急ぎ離れようとしたが・・・・背後から流人達の声が聞こえてきた。


「居たぞ!!」


「逃がすな!!」


「今度こそ捕まえろ!!」


流人達は一斉に駆け足で来たが・・・・その先には私が仕掛けた糸がある。


何も知らない流人達は糸に足を躓かせ・・・・たのではなく切断されて転がる。


ぎゃああああああああああ!?


流人達は脛から下が無い自分の足を抑えて転げ回ったが、私はレイウィス王女の手を引いて既に走り出していた。


「あの仕掛けは貴女が?」


「はい・・・・詳しい話は後でします。さぁ、こちらへ」


レイウィス王女の手を取りながら私は無駄な会話を中断させて走るが・・・・私自身どこへ行けば良いか判らなかった。


何せ・・・・この地に足を踏み入れるのは初めてだ。


右も左も判らない。


つまり迷子みたいな状況に陥っているのだが・・・・初見の私を信用してくれたレイウィス王女を・・・・髑髏の騎士と約束した以上・・・・護らないといけない。


あんな最低な男でもレイウィス王女にとっては・・・・・・・・


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