第四十七章:死の谷の戦い2
ブタマンは幅広で鉈みたいな剣を豪快に振って髑髏の騎士を一刀両断にしようとしたが、それを髑髏の騎士は身を低くして避けるとブタマンの小手を狙った。
だがブタマンは身体に似合わず俊敏な動きで死体を拾うと盾にして槍を防ぐ。
そして力任せに剣を振った。
髑髏の騎士も死体を盾にしたがブタマンの力が強かったのか・・・・鎧に食い込む。
「ぐっ・・・・野郎!!」
吹き飛ばされそうになったのを堪えてブタマンの脛を槍で切る。
「ぎゃあ!?の野郎!!」
脛をやられたブタマンだが痛みを堪えて髑髏の騎士に挑む。
大柄な体格から繰り出される戦場刀槍ならぬ喧嘩刀槍は凡そ術とは認められない。
何故なら今ある術とは・・・・このような血生臭くて原始的な存在を洗練させて出来上がったからである。
だから大半は一線を引きつつ遺しているがヴァエリエでは完全に邪道扱いされているが、確かにヴァエリエの術は画期的だし教育方針も最先端を走っている。
もっとも・・・・その中で教えられた術が全てとは言えないし、また正しいとも言えない。
現にブタマンの背後でも行われている死闘だが・・・・中央貴族と聖騎士団の戦い振りは決して良くない。
彼等が剣を振うと流人は泥を投げて目潰しを行い、そこへ棒を持った者が数人がかりで袋叩きにして殺す。
別の者は上段から流人を斬ろうとしたが兜で弾かれ刃筋が乱れた所を寝技を決められて首を掻き切られた。
こう言う具合に中央貴族と聖騎士団は邪道と蔑む存在に倒されて行った。
とはいえ圧倒的に中央貴族が多かったのとは対照的に聖騎士団の方はマシな戦い振りを見せているのも事実だ。
流人に体当たり、頭突き、足払いを行い怯んだ所を叩き付けるようにして斬る。
これは流人達も防具を身に着けているから間違いではない。
その点に関しては荒れくれ者らしい戦い振りと言えるが、彼等の上を行く存在が居たが彼等は中央貴族と聖騎士団には見向きもしない。
視線の先には・・・・髑髏の騎士だけが映し出されていた。
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「でぇぇぇぇぇい!!」
髑髏の騎士はボロボロとなった素槍でブタマンの頭上を叩いた。
兜を被っていたが、その兜を押し斬る勢いだった。
「ぐぶっ!?」
兜ごと押し斬られる勢いだったためブタマンは頭から血を流したが無事な右手に持った剣で髑髏の騎士を叩き斬ろうと試みる。
この時でブタマンは瀕死だが、それでも戦おうとする様は凄い。
左籠手は皮一枚で垂れ下がり、右脚は骨が肉を突き破っていて脇腹からも血が流れ落ちている。
それでも動いているのは貴族になりたいという野望と執念に他ならないが・・・・槍は彼の胸を正確に貫いた。
「いい加減に・・・・死ね!!」
髑髏の騎士は深々と槍をブタマンの心臓に押し込みながら叫んだ。
「俺は・・・・貴族に・・・・なっ・・・・!?」
心臓を貫かれながらも剣を振り上げようとするブタマンだったが・・・・そこで彼は死んだ。
しかし髑髏の騎士も満身創痍である。
何せ3日3晩も戦ったから無理もないが・・・・血を吸った大刀を閃かせた。
「ぐはっ!?」
背後から襲おうとした荒事専門の男の一人が血飛沫を上げながら谷へ真っ逆様に落ちたが仲間は誰も見向きもしない。
それは引き受けた仕事を遂行する為に他ならない。
「甘めぇんだよ・・・・俺が疲れた所を狙うなんてな!!」
髑髏の騎士は左右から同時に襲って来た2人を同時に斬り捨てた。
左右から同時に攻撃されたから躱すのは出来ないから・・・・鎧で攻撃を受け止めて斬ったのである。
まさに肉を切らせて骨を断つ戦いで・・・・残りは一人となった。
「流石は・・・・北の地から来た男だな」
やる事が凄まじいと男は髑髏の騎士を称賛した。
「当り前だ・・・・そして、てめぇで最後だ」
覚悟しろと髑髏の騎士は言い足を進めるが男は泥を投げ、そして剣を投げる事で2重の目潰しを行ってきた。
そしてダガーで腋の下を狙うつもりだったようだが・・・・泥も剣も髑髏の騎士には通じず真っ向から切り捨てられた。
あっという間に荒事専門の男達を倒したが・・・・まだ一人居る。




