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幕間:死人の戦い2

裏切り者達を始末した髑髏の騎士は隠し扉を潜り抜けて秘密路を走っていた。


秘密路は堅牢に仕上げられており大きな地震が来ても問題なさそうだ。


『大した仕組みだな。これもフォン・ベルト陛下が遺した遺産か』


髑髏の騎士は秘密路に舌を巻いた。


何処の城や屋敷にも当主と一部の者しか知らない秘密路は存在するが、ヴァルエの秘密路は段違いに凄かった。


これなら先に逃げたイファグ王子達も無事と思ったが・・・・直ぐに眼を鋭くさせ背後を見やる。


『ちっ・・・・もう来やがったか』


背後から聞こえてくる足音と声は明らかに裏切り者達だった。


きっと仲間の死体を見て当たりをつけたのだろうと想像しながら髑髏の騎士は走り続ける。


対して裏切り者達の足音が大きくなり、走る速度も速まった。


髑髏の騎士の足音を聞いて追い掛けているに違いないが、よく聞けば足音の速さはピンからキリまである。


つまり統一はされておらず足の速い者の順という事なのがミソだ。


そして最初の敵が早くも追い付いたのか、掛け声を上げた。


「逃がさんぞ!悪魔の手先め!仲間の敵、晴らしてくれん!!」


「ほぉ・・・・仲間意識はあるよう・・・・だな!!」


髑髏の騎士は口端を上げて笑うと槍を掌で滑らせ石突きを繰り出した。


「!?」


背後に迫った敵が声にならない悲鳴を上げ仰け反った。


見れば石突きが喉に突き刺さっているではないか。


これで一人減ったが、まだ居る。


故に髑髏の騎士は再び走り出した。


これを裏切り者達は追い始めたが・・・・やはり足の速い順だった。


裏切り者達は気にしてないだろうが、髑髏の騎士は違う。


彼の騎士は狙っていたのだ。


これは彼の騎士が得た経験から来ている。


それを掻い摘んで説明するなら至極単純明解だ。


追う者と追われる者は単純に両方走るが、やはり足が速い者が追い付く。


その者を斬り、そして走れば次の者が追い掛けるが最初の者に比べれば少し遅い。


ここがポイントだ。


二番目に追い掛ける者の足は必然的に一番目に比べれば遅い。


そして二番目の次の者は更に遅いから効率良く相手を倒し逃げ切れる訳だ。


もっとも逃げる方は逃げ切れるだけの脚力と確実に相手を仕留める腕が・・・・絶対条件だが。


しかし髑髏の騎士は両方を持っていたから実践し早くも二番目を殺した。


すると三番目の敵が距離を縮めようとしたがやはり遅かった。


ここで髑髏の騎士は一気に距離を離し逃げ切るのか?


と思いきや・・・・足を止めた。


何処まで秘密路が続くか分からないし、敵は今の内に少しでも減らしておきたい。


そこを考えて髑髏の騎士は足を止め呼吸を整え本当に僅かだが・・・・仮眠を取り英気を養う。


もっとも本当に僅かで・・・・敵は来た。


数は足音からして5人だが、髑髏の騎士は四方に気を張り巡らせ油断せず槍を構える。


刹那・・・・敵が槍の間合いに入った。


「うりゃぁっ!!」


掛け声と共に髑髏の騎士はブラリと垂れ下げるように持った槍で・・・・神速の突きを繰り出した。


暗い秘密路の中で槍の穂先が妖しく光ったが、そこに赤い塗料が付着した。


その正体を確かめるように髑髏の騎士が双眸を光らせ前を見ると・・・・仲良く串刺しにされた敵が居た。


もちろん首をガクリと下げており事切れている。


『・・・・流石はフォン・ベルト陛下だ』


髑髏の騎士は止めとも確認とも見えるように槍を抉り敵から引き抜く。


彼の騎士が心中でフォン・ベルトを誉めたのは秘密路が・・・・狭くなり、一人ずつしか進められないようにした事だ。


騎士が立っている所からされており追っ手を効率良く倒せるようにしてる事。


これを髑髏の騎士は称賛し、見事に敵を殺した。


「・・・・しっかし大変な事態だな」


とうとう恐れていた事が現実と化したのだから無理もない。


しかし予想はしていたのが幸いだろう。


『ハガク辺境伯爵も王室から書状が送られているだろうから大丈夫だろうが・・・・・・・・


問題はレイウィス王女だ。


あの澄ました顔の裏でドス黒い欲望を抱いているユニエール侯爵は、この機会を必ず利用し自分の欲望を叶えるだろう。


それを阻止しなくてはならないが・・・・・・・・


「何処に居られるのですか?レイウィス王女」


髑髏の騎士は居場所が掴めないレイウィス王女の安否を口から出した。


しかし直ぐに秘密路を走る事で己が不甲斐なさを打ち消す。


そして秘密路の出口に差し掛かった所で足を止めて気配を探った。


『・・・・10人以上居るな』


出口から感じる気配の多さと強さに髑髏の騎士は気付いたが意を決したように出る。


ただし身を低くして飛び出して攻撃を避けようとしたが・・・・相手が味方と気付き安堵する。


「フォルグ大公・・・・・・・・」


髑髏の騎士は抜き身の大刀を手にしていた男の名を口にした。


「貴殿も無事であったか」


10人以上の兵を率いていた男---フォルグ大公は一瞬だけ安堵の息を吐いた。


それは戦友の無事を確認した息だったが直ぐに険しい表情になる。


「レイウィス王女は・・・・一緒ではない、か」


「では・・・・フォルグ大公達も」


うむとフォルグ大公は重く頷く。


「イプロシグ王とリエル后の・・・・亡骸はイガルゲが無事に取り戻し、イファグ王子とエルナー王女も侍女と侍医が護り切った」


今は他の者達とヴァエリエから離れた避難地に居るとフォルグ大公は説明するが・・・・険しい表情は消えない。


「レイウィス王女は、敵の手に落ちた。あの憎らしい聖教に!!」


「お気持ちは理解できますが、今は今後の対策を考えるのが先決です」


髑髏の騎士は当たり前の事を言うが本心は直ぐにでもレイウィス王女を救いに行きたかった。


北の地に伝わった書物にも「浅野殿浪人夜討ちも泉岳寺にて腹切らぬが落度也。又、主を討たせて敵を討つこと延延なり。若し其中に吉良殿病死の時は残念千万也」と直ぐに行動を起こさない事を批判している。


つまり考える暇があれば行動に移せと言っている訳だが、髑髏の騎士としては今件に関しては時間が必要と捉えていた。


まだレイウィス王女は生きていると考えられるのが第一理由だ。


何せイファグ王子達は聖教の手から逃げ、そればかりかイプロシグ王夫妻の亡骸もこちらの手に在るから下手には動けない。


となれば・・・・きっとレイウィス王女を餌に誘き出すに違いないのだ。


第二の理由として今ヴァエリエ一帯は敵の拠点でありレイウィス王女の居場所も分からないから下手には動けない。


もし、レイウィス王女が殺されていれば敵を道連れに叩き死ぬつもりだが、上記の理由から彼の王女は生きていると考えられる。


ここを考えると・・・・悔しいが一度、逃げるしかない。


「フォルグ大公、ここは私の考えに賛同してくれませんか?」


髑髏の騎士は火山のように沸き起こる感情を押し殺してフォルグ大公に再度、言った。


「あぁ・・・・解っている。解っているが・・・・この屈辱に満ちた気持ちは、決して忘れんぞ」


フォルグ大公は双眸をエスカータ城に向けた。


恐らく玉座には大司教の服を着た豚が座っていると想像したからだろう。


故に彼の大公は宣戦布告とも言える言葉を吐いた。


「必ず・・・・必ず今件の報いを受けさせる」


「私もです。私も借りは返す主義でして・・・・首を洗って待ってろよ」


髑髏の騎士もフォルグ大公に触発されたようにエスカータ城に向かって言葉を吐いた。


だが今は・・・・・・・・


『退こう』


2人は苦渋に満ちた声で頭で出していた結論を口にすると何処かへ消えた。


ただし2人の放った言葉は・・・・直ぐに現実と化したのは言うまでもない。


何せ後世に名が遺るほどに有名な話なのだからな。


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