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第十二章:髑髏と獅子

逸れ騎士しゃれこうべの滞在が決まると9家筆頭であるフォルグ大公が前に出た。


「初めまして、しゃれこうべ殿。私は9家の1家を預かるフォルグ大公だ。貴殿の出身地の事は先祖から聞いているよ」


髑髏と成り果てようと戦い、手足の一、二本が無くなっても戦う勇ましさ・・・・・・・・


「そして感心するほどのふてぶてしさは、同じ武人として見習う面がある」


「ハッ。私も9家の事は聞いております」


西の地より来た者達を曰わく・・・・・・・・


『精強な兵士なり。されど眼を引くは長の前後左右を守護する9人なり。いや、彼の9人は人の形こそしていれど人に非ず』


その理由は如何に?


『彼の者達、凡そ人の芸等ではないに他ならぬ』


前衛を務める者達は・・・・・・・・


『獅子の爪にして、鳥の眼なり。左右を護る者は熊の爪なりて恐ろしい。後部を護る者も人を誑かし、眼を欺く。正に人の形をした悪鬼羅刹!!』


最後は些か酷い例えに聞こえるが・・・・・・・・


『されど彼等の長から見れば、かくも精強にして忠実な者は得難き存在だろう。さしずめ守護鬼なり』


「はははははは!!これは光栄だ!我々を悪鬼羅刹と称しながらも王の目線では守護鬼と称するのだからな!!」


フォルグ大公は高々に笑ったが、残る8家の当主も誇らし気だった。


「フォルグ大公、あっきらせつと、しゅごきとは何?」


ここでイファグ第一王子が問いを投げ掛ける。


「悪鬼とは悪い事をする怪物で、羅刹とは足が速い怪物の事です」


ガレオス侯爵がイファグ第一王子の問いに直ぐ答える辺りは日常で使用する小刀らしい。


「じゃあ、しゅごきは王を護るという意味?」


「はい。ハガク・フォー・ナベグズ辺境伯爵の先祖は我々の先祖を手強い敵と称しながらも王の目線では頼もしいと称したのです」


「そうなんだぁ・・・・じゃあフォルグ大公達はハガク・フォー・ナベグズ辺境伯爵をどう称したの?」


イファグ第一王子はガレオス侯爵の言葉に納得すると今度は9家の評価を聞いた。


「私共の先祖は・・・・このように評しましたので御聞き下さいませ」


フォルグ大公はイファグ第一王子に身体を向け目礼すると息を吸った。


そして威厳ある口調で語り出す。


『北の地に住まう者達・・・・彼等は誠に太くて強靭な骨なり!!』


最初の言葉が賞賛な辺り9家の評価もハガク辺境伯爵と同じように高いのだろう。


そうレイウィス王女は思いながらフォルグ大公の語りに耳を傾ける。


『北の地に住まう者達、彼等は一騎当千の働きを皆がして誠に精強なり!!

 我々が攻めれば死を恐れぬように前へ前へ来ては長剣を振るう。

 更に弓矢も太くて強力にして短筒から炎を出す武具を装備している。

 また敵御大将も鉈を引き伸ばしたような実に長大な剣を振り、一振りで100人を斬り伏せる!!

 されど彼等は御大将を恐れ、軍規も無く、また統制が取れない。

 これをフォン・ベルト陛下は見て嘆かれた。

 誠に惜しい・・・・そして大将を恐れる気持ちが強すぎる。 

 それさえ無ければ彼の兵達を召し抱えたいのに』


フォルグ大公の語りは力強く、それでいて聞く者を幻想の世界に誘い、そして戦いの様を教えてくれる。


しかし、ハガク・フォー・ナベグズ辺境伯爵の先祖の義兄には割と辛口だ。


とはいえ・・・・将兵が大将を慕うより恐がる辺りが敗北の原因と指摘していた。


『敵御大将、兵達から恐れられ、ついには孤立してしまった。 

 されど最後まで戦う様は見事なり!! 

 そして御大将の亡骸を故意に罵倒し、我々に噛み付きハガク辺境伯爵は誠に骨太なり。

 彼の態度にフォン・ベルト陛下は感心し、所領安堵の末に様々な贈り物をされた。

 またハガク辺境伯爵も様々な贈り物で応え王国に忠誠を誓った』


しかし・・・・・・・・


『他の臣下とは違う役目も仰せつかり、それにより言われ無き罵詈雑言を浴びせられるは哀れかな?

 否!! 

 断じて否!!

 断じて!断じて!断じて否である!!

 彼の男を見込んだからこそフォン・ベルト陛下は命じられた』


そしてハガク辺境伯爵も受け入れたのだ。


『真の臣下とは主人に傅くだけではない。

 時には命懸けで讒言しなければならない事もあり、命を落とす事もあろう。

 ・・・・されど!!

 それをしてこそ真の忠臣なり!!

 ハガク辺境伯爵はその命を受けた真の忠臣!!』


ここでフォルグ大公の語りは終わった。


それが終わると拍手が巻き起こるも・・・・レイウィス王女は疑問を覚えた。


王室からフォーまで与えられ何かにつけて口辛い言動を行うハガク辺境伯爵が真の忠臣・・・・・・・・


しかもフォン・ベルトから直々に命じられた任?


『どういう事かしら?』


レイウィス王女は思考したが答えは見つからず更に謎が浮かび上がった。


ハガク辺境伯爵の養う兵達は長剣と、太くて強力な弓矢を装備しているらしいが・・・・・・・・


『短い筒から炎を出す武具?』


少なくともレイウィス王女の経験上そのような武具があるとは知らなかった。


どんな物か?


元から好奇心は強いが答えは自分で見つける主義のレイウィス王女だが、今回は答えが早く知りたかった。


いや・・・・しゃれこうべと話がしたかった。


「あの、しゃれこうべ様・・・・・・・・」


「以上が我々の先祖から聞いた話ですが生憎と私は経験しておりません」


レイウィス王女より大きな声でフォルグ大公はしゃれこうべに告げる。


「それは私もです。どうでしょうか?フォルグ大公」


こうして出会ったのも何かの縁・・・・・・・・


「一つ私と手合わせしてもらえませんか?」


「こちらこそ望む所です。では早速・・・・・・・・」


「ま、待ちなさいっ」


何時の間にか手合わせの話になり、直ぐにでも始めそうなのでレイウィス王女は待ったを掛ける。


「フォルグ、いきなり手合わせなんて失礼です。何より私の恩人なのですよっ」


「お言葉、至極尤もです。しかし、武人として戦ってみたいのです」


フォルグ大公はレイウィス王女の言葉に頷きながらも譲らなかった。


また、しゃれこうべもやる気満々だった事から止めるのは逆に失礼にも思えた。


しかし、レイウィス王女はフォルグ大公の前に立った。


「フォルグ大公。私の恩人と手合わせなど・・・・・・・・」


「良いではないか、レイウィス」


ここでイプロシグ王がレイウィス王女に話しかけるが、あろうことか手合わせを許可する発言だったから堪らない。


「お父様!?」


何時もなら止めてくれるのに何でとレイウィス王女はイプロシグ王を見る。


「私も彼の実力を拝見したい。フォルグ大公、しゃれこうべ殿と立ち会え」


対してイプロシグ王はレイウィス王女から視線を外す・・・・逃げるようにフォルグ大公を見て命じた。


「御意のままに・・・・・・・・!?」


フォルグ大公はイプロシグ王に一礼し、レイウィス王女を改めて見るがギョッとした。


何故ならレイウィス王女が今までにない位の眼力が籠もった眼差しで睨んできたからである。


「・・・・・・・・」


「あ、あのレイウィス王女・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


無言で自分を睨み据えるレイウィス王女にフォルグ大公は困惑したが、それはしゃれこうべも同じだった。


何故なら彼もレイウィス王女の視線に入っており睨まれているからに他ならない。


「・・・・手合わせするなら早くして下さい。そして私も見ます。良いですね?」


「え、あの・・・・・・・・」


睨んだままレイウィス王女はフォルグ大公に言うが、フォルグ大公は何と言えば良いか分からず困惑した。


「良いですね?2人共」


『はい・・・・・・・・』


しかし、有無を言わせない力を込めた言葉に2人は押される形で同意するしか術を持たなかった。


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