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第十章:国王の家族

イプロシグ王に招かれる形で、しゃれこうべはレイウィス王女と共にヴァエリエに入れた。


「一度ならず二度までも臣下達が無礼を働きましたね・・・・・・・・」


レイウィス王女は未だに手綱を握るしゃれこうべに謝罪したが、しゃれこうべは首を横に振った。


「あの程度は慣れていますよ」


「というとハガク辺境伯爵の土地にも?」


「えぇ、来ました」


いきなり来ては声高々に喚き散らし、聞きつけたハガク辺境伯爵を見るなり・・・・・・・・


『出たな?!悪魔の手先!!』


そう開口一番に叫んだらしい。


「まぁ言われ慣れているためか、ハガク辺境伯爵は何も言いませんでした」


その代わりに顔面に正拳を打ち込んで激しく罵倒したらしい。


曰わく・・・・・・・・


「私が悪魔の手先なら貴様は豚の手先!丸焼きにされて食われたくないなら出て行け・・・・・と」


これにレイウィス王女は不覚にも笑ってしまった。


豚の手先とは言い得て妙だが、先に拳で答え次に口で罵倒する辺りが面白い。


「ははははは・・・・・流石はハガク辺境伯爵だ。やる事が凝っているな」


レイウィス王女を追うようにイプロシグ王も馬上から笑った。


「国王陛下に誉められたと聞けばハガク辺境伯爵も喜びましょう」


しゃれこうべは透かさず相槌を打った。


「そうか。して、そなたは何故に髑髏を名乗っているのだ?」


彼の地も教育に関しては力を入れている筈だとイプロシグ王は問う。


「聡明なイプロシグ王なら知っていると思いますが髑髏は死と未熟を表しております」


「そして骨と化しても祖国の為に戦うという気概だったな?誠に良い紋章だ」


「御意に。ただ、私はまだまだ若輩者にして、未だに唯一の主人を見つけておりません」


だから髑髏---しゃれこうべと名乗っております。


そう、しゃれこうべは説明した。


「なるほど。して、そなたが思う主人とは如何なる者だ?」


「ハッ・・・・・国を愛し、民草を慈しみ共に歩むような方と思っております」


「差し詰め大地のように寛大な心を持つ女神と言った所か?」


「御意に」


しゃれこうべの探す唯一の主人を聞いてイプロシグ王は励ましの言葉を言い、後は何も言わなかった。


ただレイウィス王女は彼の探す唯一の主人をこう捉えた。


『まるで母親ね』


確かに・・・・しゃれこうべの探す唯一の主人は正に母親のようだ。


全てを生み、また全てを我が子の如く愛する寛大な心を持つ女性なのだからな。


恐らく彼の生まれた北の地方で崇められている「地母神」辺りが強く影響しているに違いない。


そう捉えたレイウィス王女の眼に暖かい光が差し込んできた。


その光はレイウィス王女を我が子の如く優しく照らし道へ誘ってくれる。


松明だった。


しかし、その松明を左右に挟む形に立つ女性は一層に輝いている。


いや、女性の傍に居て自分を見つめる可愛らしい2人の幼子も輝いていた。


「リエルお母様・・・・イファグ・・・・エルナー」


レイウィス王女は自分の家族の名を呟きながら無事に帰れたと改めて実感した。


その間に距離は縮まりイプロシグ王は先に下馬し、家族と抱擁を交わす。


「さぁ、王女・・・・・・・・」


しゃれこうべが手綱から手を離し片膝をつき下馬を促す。


だが、レイウィス王女は躊躇った。


それは彼の身体を踏んで降りるのが嫌だったからだ。


如何に臣下の治める土地の出にして、はぐれ騎士だろうと恩人に変わりはない。


そんな彼を踏み台にするなど・・・・・・・・


しかし、しゃれこうべは更に促してきた。


つまり自分を踏めと言っているのだ。


「・・・・失礼します」


しゃれこうべの気に負ける形でレイウィス王女は彼を踏み愛馬から降りるが、良い気持ちなんて全くしない。


寧ろ人として恥ずべき行為をしたと自己嫌悪すら覚えた。


「レイウィス・・・・・・・・」


母親であり国王后であるリエルに名を呼ばれ顔を向けると、リエル后が抱き締めた。


「無事に帰って来て良かった・・・・・・・・」


「・・・・ご心配を掛けました」


リエル后の抱擁に抱擁でレイウィスは応えながら背後を振り返り片膝をついたままの・・・・騎士を見せた。


「こちらに居る騎士に助けられました。名は髑髏を意味するしゃれこうべです」


「しゃれこうべ様、娘であるレイウィスを助けて下さりありがとうございます」


「いいえ。主人を持たず傭兵とも言われる、はぐれ騎士ですが・・・・襲われている婦女子を見捨てなかっただけです」


これは騎士の前に男として当然の行動だと、しゃれこうべは言った。


「それでも娘の恩人に変わりはありません。イファグ、エルナー。姉上を助けた騎士に礼を言いなさい」


リエル后に名を呼ばれ幼子2人が前に出て来る。


右が男子で、左が女子だったが2人とも可愛らしい容姿の中にも聡明さが滲み出ていた。


レイウィス王女の弟と妹であるイファグ第一王子とエルナー第二王女だ。


「レイウィス第一王女の弟のイファグです。この度は姉の命を助けて下さりありがとうございます」


「レイウィス第一王女の妹のエルナー第二王女です。騎士様、姉の命を助けて下さりありがとうございます」


2人は幼いのに極めて折り目正しく一礼し、しゃれこうべに礼を述べてきた。


「いいえ。騎士の前に一男としてやったに過ぎませんが、礼を言って下さり光栄の至りです」


将来美男・美女間違いなしの2人だから・・・・・


そう、しゃれこうべは言い2人に微笑んだ。


「・・・・・・・・」


対してレイウィス王女は顔を険しくさせた。


いや険しいではなく「面白くない」顔をした。


先ほど彼は弟と妹を・・・・妹であるエルナーを美女になると言った。


『私には言わなかったじゃない・・・・・・・・』


これでも容姿には自信がレイウィス王女にはあったし、その自信は決して自惚れではない。


実際に彼女は誠に美しく臣民を問わず魅力している。


ドレスを着れば男を・・・・男装すれば女を・・・・


それなのに会ってから一度も・・・・しゃれこうべから誉められていない。


大した事ではない筈なのに・・・・レイウィス王女の中ではモヤモヤした感じでくすぶり始めた。


「さぁ、しゃれこうべ様、中へどうぞ」


リエル后がイファグ王子とエルナー王女の手を引き、しゃれこうべを城内へ誘う。


しかし、途中でイプロシグ王に2人を預けると流れる動作でレイウィス王女の隣に並んだ。


「顔が拗ねてるわよ・・・・・」


小声でリエル后が囁いてきてレイウィス王女は驚いた顔をする。


見ていたのか・・・・・・?


「私は国王后の前に貴女達3人の母親よ?娘の機嫌くらい直ぐに判るわ」


「・・・・・・・・」


レイウィス王女はリエル后の言葉にばつの悪い顔を浮かべる。


これしきの事で知られてしまうとは・・・・・・・・


「あの騎士が気に入ったの?」


「・・・・・判りません。ただ、今まで会って来た殿方には居なかったので」


母親の楽しむような口調に戸惑いながらもレイウィス王女は答える。


「そう。でも良い方よ。初めて会うけど根は純情で優しい方と私は思うわ」


身分こそ低いが、物腰は柔らかいし刺客達を退けた実力もある。


「貴女に似合うわよ・・・・・私とイプロシグ様みたいに、ね」


この言葉を言うリエル后はイプロシグ王の妻という事に誇りを持っていた。


そうレイウィス王女は感じ取るが、2人の馴れ初めを幼い時から聞いている分・・・・・・・・


「惚気話は止めて下さい・・・・・・・・」


こう言うほかなかった。


「クスッ・・・・・でも、母親として忠告するけど思うだけでは実らないわ」


そして相手に求めるのもいけない。


「自分の思いには素直になりなさい。そして相手に打ち明けるのよ」


私と彼は、そうやって障害を乗り越え結ばれた。


「結局・・・・・惚気話じゃないですか」


リエル后の忠告にレイウィス王女は肩を落とすが、母親の忠告を胸に刻み込んだ。


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