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 地面には、ミヤケが寝転がっていた。


 離れた場所には、関東兵たちも同じように横たわっている。

 死んではいない、気絶させただけだ。


 ミヤケに留めを刺されそうになったあの時、ふと、気が付いた。


 まともに闘う必要があるのか?


 俺には、どうしてもやらなければいけないことがあった。どんな手を使っても進まねばならない理由があった。


 シャルリエを見つけ出す。


 それだけだ、それだけを果たせばいいのだ。これは、戦闘じゃない、戦争だ。

 目的の為には、生き抜くためには、何をしても良い。いや、むしろ、綺麗でいたい者は淘汰されるべき場所なのだ。


 そこに思い至った時、心の中で何かが吹っ切れた。


 開眼。


 目前にミヤケの豪腕が迫っている。しっかりと胸を打ち抜こうとしているそれは、まさしく必殺の気合いが込められていた。


 そうだ、こいつは、俺を殺そうとしている。それなのに俺は、彼を倒そうとしていた。あまつさえ、あわよくば逃げおおせようなどと考えていた。


 確かに、経験にも、技にも差があった。しかし、彼が打ち負かされた一番の理由はそこにこそあった。


 相手には、迷いがない、俺には邪念が多すぎた。まだまだ甘さがあったのだろう。

 地面を握り、つかみ取った砂を教官の眼をめがけて投げつける。


 反撃する余力があるとは思っていなかったミヤケの眼にうまく入ったようだ。身体をよじると、ミヤケの拳は地を打った。

 眼を潰されても、打ち切ったのはさすがだったが、それは裏目になったようだ。彼の右拳は強く打ち付けられて、砕け、血を滲ませている。


 眼を覆った隙に、横っ面を殴りつける。寝ころんでいたので、大した効果は期待できないが、そのお陰で、起きあがることに成功した。


 体制を立て直すのに腐心している教官の顔に、何度も拳を打ち付ける。


 しかし、ミヤケもやられるばかりではない、大振りのフックパンチを繰り出す。当てようとした攻撃ではなく、距離をとって体制を整える時間を稼ごうとしたのだ。

 その手には乗らない、あえて殴られた。牽制なので、さほどダメージは受けない。当たり所も計算していた。その上で、攻撃再会。


「ああああぁぁぁぁぁぁああっ」


 肩、腿、腕、四肢を狙って撲ちまくる。ミヤケの戦闘力を殺ぐのが狙いだ。簡単に倒せる相手ではない。


 膝がいかれたのか、がっくりと地面に膝をつく教官。それでも、彼の眼は死んでいなかった。倒れ込みながらも、ケンジの服を引っ張り引き寄せる。驚くべき膂力で前のめりになった俺に頭突きを慣行する。


 怯まず、自分から頭を当てに行った。


 これで勝負は決まった。


 膝立ちのミヤケ、立っている俺。互いに頭をぶつけにいけば、立ち位置が上の者、打点の高い者が強いに決まっている。


 ミヤケは白目を剥いていた。スライドするように倒れ伏す。最後までケンジの服の裾は離さなかった。


 勝った。


 殺す気で攻撃をしていたが、さすがに、こうなっては、留めを刺す必要もないだろう。

 白目で口からは粟が出ている。これが敵を欺く演技ならば、アカデミー賞ものである。


 ここで、脱力したいが、そうもいかない。敵は一人ではないのだ。

 ミヤケと密着していた為、手を出せなかった関東兵が、こちらに牙を剥く。多勢だったが、こちらは相手にはならなかった。ものの数分で蹴散らした。


 ああ、疲れた。


 休みたいが、時間がない。

 すでにボロボロの身体を鞭打ちながら、歩き始めた。


 シャルリエがいるであろうあの場所まで。

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