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「なんだ、お前、単独行動は危険だぞ」
息を切らして駆けつけたレイジに浴びせられたのはそんな一言だった。
「そうだよ~、ゴウ君の言う通りだよ。あっぶないよ~。早く戻った方がいいよ。マールたちは、これから、三人であの『樹』に向かうんだからね」
「き、君たちこそ、どこに行こうというんだね。中隊長殿は、そんな命令していなかったぞ、実際」
追いかけてきたのは、レイジだけだった。今回参加した唯一のレイジ隊の正規隊員は中隊に残ったようだ。賢明な判断だ。
「僕等は仲間を捜しに行くよ、ミヤケ隊長にはそう伝えておいてくれるかい」
「リコ君……、君は……、いや、許さない。勝手な行動はダメだ。実際。捜しに行くのなら、中隊と一緒の方が……」
なんとか、彼等を引き留めたいレイジは彼には不似合いな程必死に説得を試みる。それがダメでもせめてリコだけでも連れて戻りたい、と思っていた。
「僕が見る限り、今回の作戦は失敗に終わると思う」
「え……」
「外縁部の戦況は一進一退、このまま膠着が続くと、一旦全軍撤退することになるだろう。もちろん敗因は戦略のずさんさと、相手を侮っていたこと。突入前に斥候隊をくりだす事すらしなかったんだ、普通の集団戦闘なら考えられない油断だ」
怪物は確かに、ほぼ全軍を外縁部に配置していただろう。彼等とて、無限に兵力をもっているとは考えられない。それは、自分達が遭遇した部隊の構成員の少なさからも分かる。
圧倒的な物量で迫る敵を防ぐには、奇襲しかない。
その後は持久戦に持ち込む。早い段階で躓けば、首脳部は人命の消耗を懸念するだろう。焦れた人間側は撤退せざるを得ない。ここまでのシナリオを書いていたとすると、怪物共もなかなかの策略家だと言えるだろう。
「今しかない。ケンジとシャルリエを捜すのは」
そう言われては返す言葉が見つからない。ここでレイジは、一つの事に気が付く。
ミヤケは分かっていたのだ。これが負け戦になるということを。その上で、彼等が進むことを黙認したのだ。
「わかったら、隊に戻れ」
ゴウがここにいるのは、仲間を捜したいという気持ちだけだろう。状況など一番解ってなさそうな奴に言われてしまった。
レイジ隊の隊員は自分を追っては来なかった。それなのに、彼等は仲間のために危険を顧みず先へ進むという。
落ちこぼれだ、とレイジがバカにしていた彼等が、だ。果てしない敗北感と虚しさが心の中で渦巻いていた。
「僕も、僕も行く」
彼に背を向けて歩き出していた一堂が、驚きに振り返る。
「僕はレイジ隊長だぞ、部下がいなくちゃ、隊長になれないじゃないか、実際。それに、君たちに死なれちゃさすがに寝覚めが悪い。思う存分頼りにしてくれたまえ、実際」
彼が、気づくと、リコ達はさらに遠くを歩いていた。
「コラ、人の話を聞かないか、君たち、待ちたまえ、独りにしちゃいかん」




