表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/45

「おい、これからどうするんだ?」


「シッ、黙っててくれ」


 小さな声で窘められた。


 俺は研究機材として陣中に持ち込んだ箱の中に詰め込まれていた。

 研究者である重田は、もし俺が見つかっても、怪物の見本だ、と言い張るつもりのようだった。無理だろそれ。


 軍本体はすでに『根海』に突入している。前線では、予想以上に苦戦しているという話だった。


 彼等研究員は戦闘員ではないので、本体が制圧した地域にのみ足を踏み入れる許可を与えられる。出番はずっと後になるだろう。


「そうは言ってもよ、あんまりノンビリしてられねえよ」


「いいからだまらっしゃい」


「だまらっしゃい、はないだろ、だまらっしゃいは。俺をただの箱だと思ってナメてるな」


「ナメてない、ナメてないから、空気読んでくれ、声が大きいんだよ。箱にオオカミ入ってるってバレるじゃないか。あと、端から見たら、段ボールと話してる危ない人みたいじゃないか」


「危ないのは元からだろ、押入に可愛い人形ちゃんが入ってるの知ってるんだぞ。毎日お話してんだろ、この変態」


「ば、バカ、それは言わない約束でしょ」


「や~い、変態~」


「だから、声、声、大きいって」


 もはや、俺の存在が見つかることよりも、己の秘密が暴露されることの方が気になってきた重田であった。


 狭い箱の中に入れられて、いい加減暑苦しい、状況が状況だけに気持ちも焦ってしょうがないのだ。朝からずっとそんなやりとりを繰り返していた。


 そんな、段ボールとひそひそ話をする重田に不審をを抱いたのか、警備兵が寄ってきた。


「なにかありましたか?」


「い、いえいえいえいえいえ、まったく、全然大丈夫。何も問題ないのだ」


 不意に話しかけられたので、子供が見ても不自然に感じるほど動揺してしまった。


「その段ボールに誰か入っているんですか?」


 言われて、ビクッとする。


「そ、そそそ、そんな訳ないべろ、マジックショーじゃああるまいし、箱に入る物好きなんていないんだぁね。それに、私は人形と話したりはしないぞ」


 完全にキャラが壊れてきている。言っていることはもう、支離滅裂だ。聞かれてもないのに何か弁明をしているのが笑える。


「ちょっと、あらためさせていただいてもよろしいですか?」


 当然、ますます不審に思われた。


「い、いや。その中には大した物は入ってないんだがねえ」


「何が入っているんです?」


「あ、それは、その、『ピコちゃん人形』だよ」


 とっさに出た嘘に警備兵はどん引きしたようだ。関わり合いになってはいけないと思ったようで、「それはどうも……」などと言って、その場を辞そうとする。


「私、ピコ、一緒に遊びましょうね」


 もちろん、俺の声である。重田の嘘に話を合わせてやったのだ。


 あまりの不気味さに、仕事熱心な警備兵は、「やはり、開けさせていただきます」と、ふたに手をかける。


 しまった、裏目に出たのかっ。


 箱を内側から破って思い切り飛び出した。

 俺は素早く動き、テントの間を縫うようにその場を離れる。。


「い、いまのはいったい……」


 驚いて尻餅をついたままの警備兵が尋ねている。一瞬のことで、はっきり俺を視認できなかったようだ。


「ピコちゃんだよ」


「はあ、ピコちゃん……ですか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ