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この世界は、何か大切なモノを失っちゃったんだね。
私達は急いでそれを取り戻そうと躍起になったんだよ。
だって、こんなのひどいじゃない。どんどんどんどん崩れていっちゃって、なくなっていっちゃって、消えていっちゃって。
気づけばもうこれっぽっちしか残っていないんだもん。
焦る気持ちは深みに嵌って、気が付くと、もう事態は引き返すこともできない程に最悪の状況を迎えていたんだよ。
ここに生きてゆく術はなく、ここに留まることも困難だった。誰にすがっても、何を頼っても留めることも止めることもできなかったんだよ。
無力だって気づいて、微力だって思い知らされて、それでも精一杯抗って、それでもダメだったんだよ。無駄だったんだよ。
だからついには逃げだそうと決意したんだ。
出口を必死に探したよ。入り口を懸命に探して、探して。探し続けてやっと見つけたんだ。
でも……、逃げた先にも災厄は待っていたんだ。
私達は、ただ、居場所を見つけたかっただけなのにね。
そうこうしているうちに、時間は容赦なく迫ってきていた。
終わりの時間。
やっぱり私達は、全てを捨てて行かなければならない。
なりふり構わずに、大切な何もかもを捨てて。
火に追い立てられる獣のように、巣を侵された蟻のように。
例え、次の場所に光明が見えなかったとしても。希望が失われていたとしても。既に誰かのものであったとしても。
そう、新しい居場所を得るために、私達は闘わなければならない。