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短編集

足癖の悪い英雄

作者: 川尼望衣

単発ネタ

 



 俺は以前住んでいた世界とは違う世界――異世界に召喚された英雄と呼ばれる人種だ。

 俺は異世界に転移するのに当たって、とある一つの能力を世界から付与されている。まあ、その能力が英雄たらしめている力なのだが……。

 よく分からないが、俺か過去に類見ない能力を得たらしい。


 ――その名も【足】の英雄という。


 これを聞いた時、思わず「はぁ?」と聞き返してしまったね。マジ()()()(めい)

 一緒に召喚された(やつ)()は【光のやり】とか【闇の大鎌】とか【風の細剣】とか武器の名前なだけに、【足】はいくら何でもねーよって思ったものだ。

 あ、ちなみにだが一緒に召喚されたのは30人。まあ、クラス一つ分ってところだ。

 それと、俺は学生じゃない。他は皆、中学生……といったところか。教師も一人だけ混じっている。

 たまたま現場に居合わせただけの一般人。それが俺、八頭豆蔵やつがしらまめぞう67歳だ。つまり定年を迎え、年金生活を送っているしがないじじいみたいなもんだ。

 そう、俺が巻き込まれたのは、体育の授業でランニングをする女子生徒の胸を眺めていたのが原因だった。

 ふっ。要するにエロ爺だったってだけのことよ。


 とりあえず話を戻すぞ。

 30人中、英雄の能力を持っていたのは俺を含め七人。七英雄というらしい。なんだか知らないが、格好かっこいいネーミングだ。

 他の連中は英雄を補佐するために身体強化などされているが、特別な力は無い。

 逆に言えば、英雄であれば何かしらの特別な力はあるはずなんだ。

 【光の槍】の英雄なら、光を集めて幾らでも槍を作り出すことが出来る。他のも文献に残っていて調べるだけでよかった。

 で、俺の場合なんだが――。

 召喚した偉そうな奴等があーだこーだ論争した結果、とりあえず使ってみろってことになったのさ。ま、そりゃそうだよな。ていうか、論争などせずに最初から試せって話だ。


 で、場所を移した訳なんだけど――。


「ふんっ」


 俺は回し蹴りを放つ。が、何も起きない。

 それで、力を使うにはもっと気合いを入れろと言われたんで、「ふんぬぅぅぅうう!」とやってみたわけさ。そしたら足の起動に沿ってものすごい風が巻き起こった!

 その風は地表をで、あらゆる障害をぎ払う。

 そう、スカートというパンツを覆い隠すという障害を!

 俺の視界に映るは色とりどりの花が満開! 時に動物さんが現れたりもするが……まあ、中学生だし、ありといえばありだ! ぶっちゃけイイッ!

 ゴホンッ。それはさておき、どうやら俺は【足】の力はそれなりに強力のようだ。

 ――といっても他の英雄の力に比べればショボいといえばショボい。こんな老体にこの程度の能力など正直欲しくもなかった。

 さきほどのエッチな風を巻き起こしたことによる批難の目と相まって俺はストレスを感じてしまう。

 で、ビンボーゆすりをしてしまった俺は悪くないと思う。少しみっともないといえばみっともないが……癖にしている人は何人もいるはずだ。

 ――立ちながら出来る人はそうそういないだろうが。


 だが俺は、立ちながらビンボーゆすりをしてしまう()()な人間だった。

 そんなときだった。強い地震に襲われたのは。


「うぉっ」


 ドドドドドドドドドドドド


 まるで世界その物が揺れているような激しい振動。しかし俺の足は止まらない。これも【足】の英雄の力によるもので、バランス感覚に優れたのだろうか?


 ドドドドドドドドドドドドド


 さらに揺れが強くなる。もはや俺以外立っていられる者が誰一人といない。

 周囲をみると、山々が崩れたり、地割れが起きたりしている。

 ……というか、コレ。俺のビンボーゆすりが原因じゃね?

 俺は足を止めようと意識する――も、何故だが知らないが……俺の足は止まらなかった!

 視界に映る至る所で地割れからマグマが吹き上がるのが見える。それに巻き込まれるように俺以外の人間は消えていってしまう。


 そして――。

 世界は終わりを告げる。






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