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これから忙しくなるので更新できません…。
本日二度目の土下座中。今回の地面はぴかぴかの床です。謝っている相手は、扉をくぐってきた人間では無く、私の上司や、この会社のお偉いさん方。
あのフードの人が逃げ去った後、このことを上司に伝えるべきかどうか、私は相当悩んでしまった。扉が開いたという事が知られる前に国外逃亡すれば、罪を背負うことは無いのでは、と。
しかし逃げたところで背負う罪は変わらないだろうし、扉を管理する仕事をしている人間として、けじめをつけるべきだという結論に至った。
ちなみに上司に連絡を入れるまでに、そこからまた時間が掛かったわけだけれど。
苛立ちから出てくるピリピリとした空気が私の肌に突き刺さる。
魔物があの扉をくぐれば、また数百年前と同じことが起こるのだし、当たり前だ。
「即刻、管理課から三人ほど優秀な人間を向かわせろ。扉から来るもの全てを追っ払え」
命令を受けた誰かは急ぎ足で部屋を出て行った。最後に何か言っていたが、多分私への中傷だろう。背中に載っている罪が重くなった気がした。
はぁ、と溜息が周りから聞こえる。それと同時に、頭を上げろと別方向から声がかかった。
罵倒してくることはないだろう。この人たちは、そんな品が無いことはしないだろうし。恐らく冷静で冷徹に、私の処分を決めるに違いない。
おそるおそる顔を上げると、この会社のトップ、村元社長が口元をゆるませていた。想像とは違った表情を浮かべている社長。余計に私は血の気が引いたけれど、言われた言葉はまたもや想像とは違っていた。
「よくやってくれた」
瞠目した。これは「(今まで)よくやってくれた」という意味か? という疑問が出たけれど、周りの様子からそれはどうやら違う様子。
社長がそう言った瞬間、ぴりぴりした空気はどこへやら。周りの重い空気はさっぱり消え去り各々が「やっとだ」とか「この日が遂に」と喜び始めた。
どういうことだこれは?
「あの、一体何が……」
「勿論説明する。まず、お前は恐らく世界の救世主となり英雄として名が残るだろうな」
「はぁ?」
私の馬鹿にしたような「はぁ?」は誰からも注意されることは無かった。本人たちは酔ったように万歳気分である。社長は片手を上げて周りを静かにさせると、咳払いを一つした。
「俺たちはずっと探していたんだ。今回扉をくぐってきたあの人間を」
そこから社長の話は長く続いた。喋りベタだという話は事実だったらしく、情報が頭に残ってくれない。何とか部分部分でつなぎ合わせると、要するにこう言うことだった。
専門家が、ついにこの世界に帰ってきたのだと。