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八尾の善狐  作者: マスカルポーネ
1章
3/35

-3-

「それで、シロちゃんってどんな子なの?」

 康太の家へと向かう途中、奏は訊ねる。

 「どんな、ねえ・・・大人しいというかやたら人なつっこい感じかな。よく膝に乗ってくつろいでるし」

 シロが自分に甘える日頃の様子を思い出して康太が楽しそうな表情をしていると、奏は若干不機嫌そうな声色で質問をした。

 「大人しいのに人なつっこいんだ?」

 「うーん・・・正確には違うのかな・・・」

 奏の指摘を受けると康太は真面目な顔になり、一度自分の言った事を否定して再度考え始める。

 「ああ、そういえば」

 康太は何か思い出したのか、顔を上げて話し始める。

 「予防注射に連れてったときは最後まで暴れなくてさ。でも痛いのに強いって言うよりは『今騒ぐとこっちが困るのを察していた』って感じでさ」

 「うーん、それなら大人しいって言うよりは『賢い』とか『察しが良い』のかなあ・・・」

 思い出すようにして話す康太に、奏は自分が考えられる中で最も的確であろうと判断した言葉を挙げた。

 「多分そっちの方が近いと思う」

 自分が言いたかったことを的確に言ってもらった康太は手を打って同意する。そのことが嬉しかったのか、奏はクラスはおろか校内の女子達と比べてもずっと豊かな胸を張って鼻を鳴らすと、まだ足りないといった様子で自分への称賛を付け加えた。

 「奏ちゃんは賢いからね!そういった機微はお茶の子さいさいだよ!」

 「本当に賢い人はそんなこと言いません!」

 「はぁい・・・あはは・・・!」

 おどけた調子でお喋りをしながら二人は時間をかけて歩き、いつもの倍以上の時間をかけてようやく康太の家の前へとたどり着く。

 「ただいま・・・っと」

 「どうしたのこうちゃん?」

 「ちょっと待ってて、鍵取ってくる」

 玄関のドアに手をかけた所で鍵がかかっていることに気付いた康太は鍵を取りに車庫へ向かう。康太が庭を横切ると、窓越しに家の中からテレビの音声が聞こえてきた。

 「防犯になるのかなあ、あれ」

 鍵を持って戻ってきた康太が零すと、奏は小首を傾げて訊ねる。

 「なにかあったの?」

 「中からテレビの音が聞こえる」

 「防犯になると思うよ。誰か居るって思うもん」

 奏の言葉に感心しながら康太は解錠してドアを開ける。下駄箱を見ると女性物の靴が一つ少なくなっており、康太の母親は確かに外出しているようであった。

 「ただいまー」

 「おじゃましまーす!」

 康太が誰もいない家内に挨拶をすると、釣られて奏も挨拶をする。

 『お帰りなさーい!』

 本来はありえない返事に康太達は顔を見合わせる。最初はテレビの音声が偶然挨拶のタイミングに噛み合っただけだとも思ったが、その後に続く音声と食い違っており、なによりテレビから出たにしてはその声は近いものであった。

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