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八尾の善狐  作者: マスカルポーネ
1章
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-2-

康太が狐を拾って数日後の放課後。教科書を鞄に詰めて帰ろうとしていた康太にクラスメートが話しかける。

 「こうちゃん、狐飼ってるって本当?」

 そう訊ねる少女、居木奏いるき かなでに康太は楽しそうに答えた。

 「ああ、そうだけど」

 「なんか尻尾が沢山あるんだって?」

 「そこまで知られてるか」

 康太は驚いた様子で言う。

 「ちゃんとお散歩してるんでしょ?なら目立つよ」

 呆れた様子の奏の言葉に康太は小さく呻く。

 「そんなに目立つ外見なの?」

 実際に見たことのない奏は先程よりも興味が湧いたのか身を乗り出して康太に訊ねる。

 「う、うん・・・それと、奏・・・近すぎ・・・」

 息のかかる距離に顔を寄せる彼女の無防備さに、照れた康太が目を泳がせて言うと、奏は彼が照れていることに気付き少しだけ下がり謝った。それでもどちらかが手を伸ばせば相手を引き寄せて抱きしめることが可能な距離ではあった。

 「よ・・・っと、えへへ、ごめんねこうちゃん」

 「いや、大丈夫・・・で、シロの尻尾の数の話だっけ?」

 「“シロ”って言うんだ?狐なのに?」

 「狐につける名前思いつかなかったから外見でね」

 「ってことは白いんだ?」

 「うん、それで尻尾は八本」

 「八本?!」

 奏は大声を出すと再び詰め寄る。

 「こうちゃん、それって妖怪なんじゃないの?」

 「そんな訳ないだろ?第一妖怪なんているのか」

 先ほどとは違い、照れた様子を見せずに康太は距離を取って質問を返す。

 「分かんないよ。だって私霊感ないもの」

 「巫女なのに?」

 「父さんは養子で霊感がなかったからね」

 少しふてくされた表情で奏は答える。神社の跡取り娘である自分に霊感がないことは、おそらく彼女にとってコンプレックスの一つであったのであろう。視線を逸らしてそう言う彼女の様子に、自分の失言に気付いた康太は奏の機嫌を取ろうと話題を変えた。

 「なるほどね。それじゃあ家に見に行く?」

 康太の提案に奏は視線を戻して嬉しそうに笑う。

 「いいの!?」

 「いいよ。というか友達の家に行くのにいちいち理由なんていらないだろ」

 康太の言葉に奏は少しだけ考えるような仕草をすると、深く頷いた。

 「そっか、それもそうだね!」

 うしろに纏めた長いポニーテールを揺らして踵を返し、奏は早歩きで教室を出て行った。

 「こうちゃん!早く早く!荷物まとめて!」

 「まとめようとしたらお前が話しかけてきたんだろうが」

 楽しそうな奏に康太は呆れ気味に言うと、手早く教科書を鞄に詰め終えて後を追った。彼女の機嫌の戻りようは康太の想像以上であったらしく、その後昇降口で奏と合流した彼は彼女から差し入れのジュースをもらった。

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