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赤松天翔物語①  作者: 姫笠
第二章 西国の覇者

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第四話 竹田城の幽霊⑥

桜の喉がかすかに鳴った。

背中を冷たい汗がつっと流れる。

「はっ、どうせガキのいたずらだろ!」

又兵衛が虚勢を張るように吐き捨て、白装束の女の方へ大股で近づいていった。

「ま、待て、又兵衛! 子供などでは――」

善助が制止の声をあげるが、又兵衛の耳には届かない。

だが数歩進んだところで、彼は異変に気づいた。

月明かりに照らされたその女の影は、瓦礫に遮られ脚までは見えない。

だが、上半身を見るだけでも背丈が二メートルをゆうに超えていることは明白だった。

不自然に長い首がゆらゆらと揺れ、周囲の空気を歪ませる。

まるで空間そのものが異質な何かに支配されているようだった。

「な……なんだ、これは……」

又兵衛の顔色から血の気が引いていく。次の瞬間、彼は腰を抜かし、尻もちをついた。

「う……うわあっ!」

背中から石畳に倒れ込み、四肢を必死に動かそうとするも、恐怖に縛られた身体はまるで言うことをきかなかった。

白装束の女が、かすかに口を開く。

「オ……オォ……オ……」

それは女性の声ではなかった。

低く重い唸りは地の底から響きあがるようで、どろりとした音の塊が又兵衛の腹にのしかかる。胸が押し潰されるような圧迫感が一行を包み込んだ。


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