幼なじみ編 中学三年生
中学三年になった滝は、気づけば169cmまで背が伸びていた
肩まで伸びた黒い髪少し大人びて見え、制服の袖も心なしか短くなっていた
智嬉も同じく成長していた
春先には175cmを超え、すっかり細身の“スポーツマン体型”
笑うと白い歯が見える、どこか兄貴分らしい雰囲気をまとい始めていた
二人は並んで歩くと、もう子どもの頃の「でこぼこコンビ」ではなかった
「おい滝、お前、また背伸びたんじゃね?」
「お前もな 智嬉……先輩風吹かせすぎて、肩こりそうだけど」
「えっ?先輩風?マジで?」
滝はウンウン頷く
「そうそう、先輩風 よく見かけるよ 後輩にやたら近くてな ビビる後輩もいるんだよ、気をつけろよ?」
智嬉は一瞬きょとんとした顔になり、
「えっ?俺、そんなに怖がられてる?」
と自分の肩をポンポンと触ってみる
滝はニヤリと笑って、
「自覚ないだろ?この間なんて、“根口先輩、目が合っただけで冷蔵庫のドア閉めるみたいにビクッてされた”って話、俺聞いたぞ」
智嬉は苦笑しながら、頭を掻く
「それはちょっとショックだな……俺、普通に話しかけてるつもりなのに」
滝が肩をすくめて
「まぁ、でかいし目力強いし、天パの筋肉あだ名もついてるしな」
「それ、あだ名じゃなくて悪口!」
と智嬉はつっこむ
滝は吹き出して笑いながら、
「いやいや、悪口じゃないって! ちゃんと愛称、“筋天”って呼ばれてるし」
「余計ひどくなってんじゃねぇか!!」
智嬉が全力で突っ込むと、
廊下に響く声に後輩たちがびくっと肩をすくめた
滝はお腹を抱えて笑いながら、
「ほら見ろ、やっぱ怖がられてるじゃん!」
後輩たちは1人寄ってきて、滝に階段の踊り場でヒソヒソ話す
「滝さん、実はですね… 」
滝は首を傾げて、しゃがみ込みながら後輩の目線に合わせる
「ん? 実は何だよ」
後輩は周りをキョロキョロと見回し、小声で囁いた
「根口先輩、昨日も体育倉庫で“緑のオーラ”出してたって噂です!」
「緑のオーラ!?」
滝は思わず声を荒らげる
「いやいや、あれはただの冷房の風だろ!」
「違うんです!温度計が“−3度”になってたって!!」
「マジかよ!?」
滝が笑いながら立ち上がる
そのとき、廊下の向こうから智嬉が現れた
「おーい滝、なにコソコソやってんだ?」
その時、後輩たちはピタァッと静止した
そして次の瞬間
「ね、根口先輩っ!お、お疲れ様ですっ!!!」
「いつも応援してます!!」
全員が一斉に直立し、まるで軍隊のように敬礼
智嬉は一瞬固まってから、
「……お、おう。頑張れよ?なんだそのノリ? 」
と、智嬉は首を傾げる
滝はもう我慢できずに吹き出し、
「ぷっはははは!!なにその扱い!!完全に“恐怖の先輩”じゃん!!」
智嬉は顔を真っ赤にして
「ち、違うわ!!俺そんな怖がらせた覚えねぇし!!」
と両手をぶんぶん振る
しかし後輩の一人が震えながら言った
「い、いえっ!昨日、部室の窓ガラスが“バキィ!”って割れまして!根口先輩の怒気が…」
「怒気!?ただ寒かっただけだ!!」
智嬉は即座に否定するが、滝は涙目で笑いながら肩を叩く
「いやぁ〜怖ぇよ智嬉! もう存在が“冷房”だもんな!」
「冷房って言うな!!」
智嬉が全力でツッコむと、後輩たちは慌てて「押忍!!」と返事する
滝は机に突っ伏して笑いが止まらず
「押忍って!もはや部活じゃなくて道場だよこれ!!」
智嬉は額を押さえて溜息をつく
「……滝、マジでお前が原因だと思うぞ。この噂 確かにな?俺は柔道部だけどよ 学校ではオーラの話題出すなっ!!」
滝は椅子ごと後ろにのけぞりながら、
「わ、悪かったって! でもさ、みんな勝手に盛ってくんだよ〜!」
と必死に弁明する
智嬉は眉間に皺を寄せ、腕を組んだままため息をつく
「“勝手に”じゃねぇ、お前が『智嬉、放課後になると冷気出してるらしいぜ!』って昼休みに言ってただろ!」
「……あっ、それは、ちょっとウケるかなって」
滝が笑いをこらえながら言うと、智嬉の拳がゴゴゴ…と鳴り響く
「滝……」
とメラメラオーラが燃えている智嬉
「は、はい?」
「今すぐその長髪、刈り上げにしてやるっ!!」
滝はまずい、と顔を顔面蒼白にした




