必殺の"墨汁攻撃"
「な、なに言ってんだよ父さん……!」
純は目をそらして、父親誠に、ぼそっと言う。
「別に普通の友達だし……」
下では滝が叫んでいる
「智嬉!次こっち来るぞ!」
「左に二歩!今!」
「よしっ!墨、もう一発いくぞー!!」
それを見下ろしながら、誠はにやりと笑った
「ほら見ろ。あんなに必死に走り回ってるのは
お前のためでもあるんだぞ」
「だっだれがっ!! 第1俺は、まだ仲間にできる立場じゃ…!!」
誠は肩をすくめた
「仲間ってのはな、“勧誘してなるもの”じゃない」
軽く純の肩を叩く
「気づいたら、横にいるものだ」
「父さん…」
「ほれ、下を見てみい」
純が視線を落とすと
駅ビルの前の広場
そこではまだ、滝と智嬉の鬼ごっこ戦闘(?)が続いていた
「来た来た来た!影こっち来た!」
「右に回れ!距離取って!」
「よしっ……!」
滝が筆を振り上げる
「嫌がらせの墨汁攻撃ーー!!パート2ー!!」
ビシャッ!!
墨が飛び、影がジュッと音を立てて崩れる
「おおっ、効いてる効いてる!」
だがその横で、智嬉は冷静だった
「いや、喜んでる場合じゃない。後ろ、三体来てる。」
「えっ」
滝が振り向く すると――
広場の奥から、ゆらゆらと揺れる黒い影が三つ、静かに近づいてきていた
「きゃー!! なんかきもーい!!」
滝と智嬉、同時に鳥肌
「なにあれなにあれなにあれ!!」
滝が全力で首をブンブン横に振る
「見た目が完全に“触っちゃいけないやつ”なんだけど!!」
智嬉も腕をさすりながら叫ぶ
「うわぁ……ゾワッとした……!
なんかこう、見てるだけで背中がむずむずするタイプの気持ち悪さ!」
影が一歩、近づく
距離、あと十メートル
「だめだ……」
滝が筆を構える
それは…まるで、後に見る…棍棒の構えのよう
空中にいる貴明はそれを見てニコッと笑った
「怖いはずなのに、逃げるだけじゃない。
ちゃんと“構える”か」
そして、滝は
「怖いけど……これ以上近づかせたらまずい!」
墨の入ったペットボトルをぎゅっと握る
「いっけぇ!!」筆を振り抜く
「嫌がらせの墨汁攻撃ーー!!パート3ーー!!」
ビシャッ!!
影の体に命中する
その瞬間。
上空から、声が降ってきた
「よくやった、滝!」
「あっ、あれは!! 青髪兄ちゃん!!」
滝が叫ぶと智嬉が首を傾げる
「……兄ちゃん??」
「ほら!あの人だよ!」
「どの人」
「前に助けてくれたじゃん!雷バチバチの人!」
智嬉はあー!と納得する
「あ、あれか!! おれ帰りの唐揚げバーゲンにしか頭になかったわ!!」
純が思わずツッコむ
「おい!?人が命がけで雷落としてる横で唐揚げ優先かよ!?」
「おれのーりょくしゃじゃないもーん」
純の口が半開きになる
「……いや それ理由になるか!?」
智嬉は首をかしげる
「なるでしょ 能力者じゃない人の優先順位は」
指を折りながら数えて、
「①ごはん
②帰宅
③宿題
④命の危険」
滝が思わずつっこむ
「おいおい!」
「じょーだんだよ 助けてくれてありがとな、兄ちゃん」
滝も続ける
「マジで助かったよ、兄ちゃん」
筆をポーチに閉まって、にっと笑った
「オレらだけじゃ、あれどうにもなんなかったし」
純はやれやれ、と肩をすくめる
「しかし、よくもまあ、怖がらないで…一般人がけがしたら、俺たち後から上司(司令官)にこっぴどく叱られんだぞ? …無事で、良かった」
滝はきょとんとした顔をした
「え?……もしかしてさ、俺らのこと、守ろうとしてた?」
純は腕を後頭部に回しながら
「そりゃあな ダチだからな …ついでに、その茶髪の天パも」
智嬉は自分の髪を触る
確かに茶色で、くるくるしている
「…ついでって何」
純はさらっと言う
「言葉通りだ」
「むう でも、ありがと」
そして、誠たちはテレポートで地上に降りてきた
「このことは、私たちの司令官に報告する 良く頑張ったぞ、滝くん、智嬉くん」
誠は2人の前で挨拶した
「い、いえ…!!」
誠は息子の肩を叩き、
「純、いい子たちだよ、きっと私は将来仲間になる気しかしないよ」
「はあ!?こいつらが…っ!?」
滝はんー、と考え
「僕たち、まだ中三なんです まだまだ考え中です ね?智嬉」
智嬉はうんうん、と頷く
「はい、僕たち、能力者より、友達とバスケやったほうが楽しいです」
「帰ろ、智嬉っ!」
2人は仲良く帰宅した
純は苦笑い
「ははっ… どこまでも正直だぜ」
純は大人たちと本拠地へ向かった




