初めての仲間の戦い
異界化発生地点:C7区域・駅ビル交差点。
駅ビル前のロータリーが、静かに、しかし確実に沈んでいた
街灯がついているのに暗い。人の気配があるのに音がしない
まるで“世界の端っこ”みたいな感覚
その空間に、ひときわ鋭い気配が降り立った
黒いコートが風に揺れる
風が吹く前に風を知る男――蒼山貴明
そして、その後ろにいるのは…
「……はぁ、今日こそは穏やかに終わるかと思ってたのになぁ」
制服の上に薄手の上着、右腕に能力者タグをつけてる少年、荒井純
“第七異能防衛区 所属能力者:雷等級C+ 荒井純”
ため息まじりに呟くその少年は…
つい数時間前まで、学校で世界史と戦っていた“ごく普通(?)”の高校生だった
二人が立つのは、駅ビル前のロータリー
けれど、そこはもう元の世界ではなかった
見慣れたタイルの色がわずかにくすみ、空気が重く、音がない
時間だけが、“沈んで”いるような感覚
「……異界化、確定だな」
貴明の声は静かに、でも鋭く響いた
「純、お前の雷。今のうちにチャージを始めておけ」
「了解」
右腕のタグが小さく反応する。雷紋が、皮膚の下でうっすら光った
バチ……バチ……
空気がピリつく
そのとき。
“ズウゥン”という、耳鳴りのような音がした
周囲の景色がぼやける
視界の端から、“黒い影”が歩いてきた
人の形をしている。けれど、それは人ではない
「なんか怖くないですけど不気味ですね 影しかねぇ」
「“恐怖”ってのは、感情に訴えてくるもんだが……あれは違う」
隣の貴明が、風をまといながら淡々と分析する
「これは、“不在の存在”。存在してるのに、存在感がゼロ。認識を拒む“概念”そのもの……異界特有のやつだ」
「いやいや、解説が逆に怖いんですけど!」
「っ、貴明さん……!」
「来るぞ――!」
風が巻き、雷が跳ねる!
影の身体がゆっくりと“めくれる”ように反転し、裏側から何かが“にゅっ”と顔を出そうとする
「うわっ……!」
純は反射的に雷を放つ
だが――
バチィィィッ!!
直撃しても、影は消えない
ただ、動きを止めた
「司令官、こちら、聞こえますか!」
純は司令官に通信する
そして、ノイズ交じりに、あの機械めいた“知性の声”が返ってくる
『――こちら司令。受信良好。雷域ノード経由、回線確保中』
「現場、異常事態っす。目視で確認できる“影”の数は……いや、数えられないくらい湧いてきてます!しかもさっきの個体、攻撃無効化してきました!」
『想定を超える敵性存在、確認。解析班を増員。現時点での指示:交戦は回避、空間封鎖を優先』
「回避って言いますけど、今まさにこっち来てるんですけど!!」
貴明は突然、にや…と笑った
「貴明さん?」
「純の手助けが必要と思ってな? 息子の滝と、友達の智嬉くんが追い払う役割を担ってくれた 」
「…………………………」
「……ん?」
「……え、え? ちょっと待って? 今なんて?」
「滝と智嬉だ」
「いやその前!!! “息子”って言った!?」
貴明はニヤ、と笑う
「ああ、言った 私の息子さ 彼らは一般人だが多少異形の者を見えるらしいんだ それ、そろそろ鬼ごっこが始まるぞ?」
「鬼ごっ……え?」
純はバッと下を見下ろす
異界化した駅ビルの真下
そこに、滝と智嬉がいた
「鬼さんこちらー!!」
「逃げる側こっちでいいんだよね!?」
二人は、駅前広場を全力ダッシュ中
しかもその後ろには、
何か黒くてヌメッとした“影”の塊が、フラフラ追いかけてくる!
「いやいやいやいや!! なんで異界で鬼ごっこ始まってんの!?!?!?」
純は頭を抱えた
「貴明さん、止めてくださいよ!!!」
「いや、彼らが“視えてる”とは言ったが、“怖がってる”とは言ってない」
「そこ!!?」
影の一体が手を伸ばすが…
「っとと〜、あぶな!」
智嬉が軽く身をかわしす
「うわっ、速っ!? アイツそんな俊敏だった!?」
「智嬉くんはね。昔から“何かヤバそうな気配”だけは察知する能力があったそうだよ。逃げスキルだけカンストしてる」
「地味だけど最強のタイプじゃん!!」
その隣で、滝も負けていない
「どいてどいてどいてー!!」
彼は習字用の筆(なぜか持ってる)をぐるぐる振り回しながら叫ぶ
「嫌がらせの墨汁攻撃ーー!!」
「いや攻撃始めてるーー!?!?」
上空の航介が目を見開いた
「……あれ!? あいつら、戦闘スタイル確立してねぇ!?!?」
「はっはっは!やるじゃないか! 身近なものを使って戦う!見直したぞ滝くん!」
純の父親誠は滝を見て好印象
誠は、眼鏡の位置を直しながらうなずく
「それに智嬉くん。あの子の“逃げ判断力”……間合いの取り方が、実戦経験者顔負けだよ。
雷も風もないけど、“人間力”があるね。これはスカウトしてぇなぁ……!」
「ちょ、スカウトしないでください!? 普通の中学生なんで!!」
「純、お前あんな子たちと友達だったのか。いい人間関係じゃないか。誇れよ」
「……っ!」
純は顔が赤くなった




