能力テスト開始
ふたりの掛け合いに、ひゅう……と風が吹き込む
異能者本拠地の廊下で“風”が吹いたら、それはもう自然現象じゃない
現れたのは、蒼山貴明
「なら、残りの三割を、俺が引き受ける」
「いや貴明さん!? 足し算しないで!? 航介さん七割、貴明さん三割、それ合計で本気100%じゃないですか!?」
「違う。俺の三割は“自然災害級”の三割だ」
「もっとダメじゃん!!!」
軽く手を振るだけで、実際に室温が3度下がるレベル。何かが始まると、空気そのものがピリつく
そしてなぜか、本人は超・冷静
「訓練は大事だ。全力を出さずに死ぬやつが、現場で何ができる?」
「名言っぽいけど、今の流れで言われると説得力ゼロだから!!」
「体で学べ」
「暴力教師かよ!!」
そんなやり取りに、司令官の機械声がまたしても割り込む
『出力測定の前に“雷耐性テスト”を実施。対象:荒井純』
「雷耐性テスト!? 何その一発アウト系のテスト!?」
司令官はニヤ、と笑い
『大丈夫、これはあくまでテストだ、なあに、死にやしない』
「ほんとですか!?ほんとですね!?」
純は両手で頭を抱えつつも、足はもう訓練室へと向かっていた
(……やっぱり“最強のチーム”って、色んな意味でぶっ飛んでるわ……)
それでも、彼の心に迷いはない。
「能力者じゃない息子で実験しないで!?!?」
純の抗議もむなしく――
気づけば、彼は能力診断室の椅子に座らされていた
<挿絵>
というか、"座らされたというより、強制的に“座らせられた”のだ
「ちょ、ちょっと待っ――!?」
ゴゴゴッと重厚な音とともに、椅子が自動で固定モードに入り、両腕のアームが“ピタッ”と肘を拘束。
背後から、司令官の声が響く
『では、雷能力者・荒井純、能力干渉波動パターン解析、開始する』
「オレまだ同意してないんだけど!!」
『“有無を言わさず”とはこの状況を指す。by辞典』
「わざわざ辞書引かないで!?!?」
診断室の天井から、透明な球体が浮かび、ぷかりと純の頭上を回り始める
『観測開始。第一段階、静電干渉反応――正常』
『第二段階、対エネルギー共鳴率――110%』
「ちょっと待って!? なんか数値、普通にオーバーしてない!?」
『110%は“普通”ではない。想定外だ。喜べ』
「どっちなの!?」
そのとき、球体の中の雷光が、ビリリとひときわ強く光った
『第三段階:臨界スパーク反応……接触レベルに達しました。制御不能のため、物理遮断処理を実施します』
バチィン!!
突如、天井のアームが稲妻を中和するように降下。診断球がジュゥゥゥ……と煙を吐いて冷却される
「えっ、今の完全にオーバーヒートじゃん!!」
『結論:荒井純、雷能力者として“想定外に危険”。今後の取り扱いに注意』
「それ、ペット扱いか何かですか!?」
司令官はニヤ、と笑い、
『純、お前はな、能力者認定だ こんなオーバーヒートまで出せるような…若い能力者はそうそうういない、いや、元気過ぎるな』
語尾がニヤリと笑ってる
……いや、表情見えないけど確実に笑ってる!!(感じる!)
「今の絶対“子犬を見守る飼い主”のテンションでしたよね!? 司令官のくせにっ!」
『“元気なやつは壊れやすい”。扱いには注意が必要だ』
「だからその言い方が完全にペットなんですよ!!」
そのやりとりを廊下から聞いていた航介が、ちょっと吹き出す
「おいおい、司令官にそう噛みつくやつ、なかなかいないぜ?」
「え? むしろ皆さん、あれに黙って従ってたんすか?」
「いや従うしかない。あいつの“透明化+全知能干渉”が本気出したら、五感まとめて封じられるし」
「怖っっっ!!!」
航介さんは機械を後ろから外してくれた
「お疲れさん、明日も学校だろ? ゆっくり帰って休め」
航介は慣れた手つきで機器の配線をまとめながら、ふっと肩をすくめる
「ま、こんくらいでヘバってたら、滝に笑われるぞ?」
「うっ……それはちょっとキツい……」
思わず苦笑い
滝の顔が脳裏によぎる。あの、誰よりもまっすぐで、誰よりも“普通”な少年の顔




