滝の厳しめ指導
純は一瞬ぽかんと口を開けたまま固まり
次の瞬間、勢いよく頭を下げた
「……すまん俺、今まで
“雷が出る=ヤバい”くらいで考えてた」
滝は即座に指を突きつける
「甘い!!それは“家でコンセント焦がした”レベルの話!!兄ちゃんのは
“教育委員会が動く”レベルだから!!」
「スケールでかすぎだろ!!」
滝はぐいっと純の袖を掴み
低い声で真剣に言った
「いいか兄ちゃん 先生たちはな
コピー機とプリンターが命なんだ
あれ失ったら
授業も評価も連絡も全部止まる」
純は左足をつい後ろに踏ん張る
「……つまり俺は今
学校という社会インフラを
雷で破壊してるってことか」
「そう!!
“自然災害(人為)”だよ!!」
「……なあ滝」
「なに」
「俺さ
悪いことしてる自覚はあったけどよ」
一拍置いて純は真顔で言った
「ここまで“公共性の高い悪さ”だとは思ってなかった」
「そこ気づくの遅すぎだから!!」
滝は即座に畳みかける
「ヤンキーの喧嘩はせいぜい個人トラブルだけどさ!!
兄ちゃんの雷は
“授業進行・予算・職員会議”に直撃してんの!!」
純は全力で慌てる
「ってことは、間もなく俺、教頭に呼び出される!?」
滝は一拍も置かずに頷いた
「うん、時間の問題」
「即答すんなぁぁぁ!!」
純は両手で頭を抱え、その場をぐるぐる回り始める
「待て待て待て!!
教頭ってアレだろ!?
怒ると声低くなって、
“これは教育上〜”って前置きが長ぇタイプだろ!?」
「そうそう
あと“前例がない”って三回は言う」
「最悪じゃねぇか!!!」
純は青ざめて滝に詰め寄る
「なあ滝!!
今ならまだ間に合うよな!?
“停電は老朽化です”ってことにできねぇ!?」
「無理だよ!!
コピー機、焦げてるもん!!」
「証拠が生々しすぎる!!」
滝は指を折りながら冷静に続ける
「しかも
・停電ログあり
・雷鳴と同時刻
・兄ちゃん転校初日
役満だね」
「麻雀で言うな!!!」
純はその場に膝をつく
「俺の人生……
“雷で学校壊した転校生”で終わるのか……」
「終わらせないために特訓すんだろ!!」
滝は純の肩をがっちり掴む
「いいか!ごめんなさいしたら、まず能力者んとこ行って、雷レベル一般人と暮らせるように上司に頼んでみろよ!」
純は、ああ!と納得して拳をぽん、と叩く
「それなら出来るかもしれねえわ! そしたら、晴れて高校再開じゃん!」
滝は一歩も引かず、真顔で続ける
「そうだよ!!
“学校壊しました”で終わらせるんじゃなくて、
“対策取りに行きます”まで言えたら評価ちょっと上がるからな!!」
純は目を見開いて、だんだん本気の顔になる
「なるほどな……
ただの反省じゃなくて、再発防止策までセットか」
「そう!!
そこまで行ってやっと“ギリ更生中”だ!!」
「ギリなのかよ!!」
純は顎に手を当て、うんうん唸る
「でもよ、それなら筋通ってるな 能力者の上司(司令官)に
“一般社会で暮らすために雷レベル落としたいです”って言えば……」
純は一瞬笑いそうになって、すぐ真顔に戻る
「……滝、あのな?
司令官、絶対こう言うぞ」
純は低い声を真似して言った
「『ほう……雷を抑えたい、だと?
それは“覚悟”があるということだな』って」
「俺は分かんねえけどさ、司令官が、どういう能力者かって とにかくすごいお人なのは、なんとなく分かる」
滝は頭を悩ませながら、純はニヤ、と笑う
「まあな、すげぇ人なのは違いねえ」
「でだ 司令官に、ちょっと、ちょっとでいいから、俺の雷レベル下げてもらえない? 学校行きたいからって頼めないか?」
と純に聞く
滝は腕を組んで、真剣な顔で続ける
「なあ兄ちゃん
ほんとに“ちょっと”でいいんだよ
雷ドーン!じゃなくて
静電気パチッ、くらいでさ」
純は肩を揺らして笑った
「例えがショボくなってきてるぞ」
「ショボくていいんだよ!!
コピー機が生き残れるレベルが目標だから!!」
純は少しだけ黙り込み
それから、空を見上げるように視線を上げた
「……司令官な
確かに、すげぇ人だ
俺が暴れてた時も、必ず探して見つけ出してくれた」
「そんな人なら、お願い出来るんじゃない?」
滝に背中を押され、純はやれやれ、と立ち上がった
「とりあえず、今日は1日体験入学だからよ、これが終わったら司令官に言ってくるわ」
「……なあ滝」
「ん?」
「もし今日、俺がちゃんと雷抑えられたらさ、司令官に “学校行けてます”って胸張って言えるよな」
滝は一瞬だけ黙ってから、はっきり言った
「言えるよ、きっと それが一番の説得材料だ」
純はニヤ、と笑い
「じゃあ、やるしかねぇな
高校生・荒井純
社会復帰チャレンジ、初日だ」
すると、純は反対方向へ行こうとして滝に指摘されていた……
「純ー!!高校校舎は反対!」




