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過去

砧公園って広いなぁ…


マリに教えてもらった砧公園は梅に桜、薔薇に紫陽花と四季折々の花々が見事に咲き乱れ訪れる者を迎えてくれる


ソメイヨシノが開花したので一緒にお花見の約束をしたももはバスを降りて公園の入り口で待っていた


えへへ…ちょっと早く来すぎちゃった


待ち合わせ時刻より30分以上早めに着いてしまった


まだ時間あるし…マリが来るまでちょっとだけ桜を眺めようかな


入口を潜り抜けると…


ようこそいらっしゃい…と来訪者を歓迎してくれるかのように840本もの桜が春を告げながら咲き乱れていた


「うわぁ…綺麗…」


まるで夢のような美しい光景に思わずため息が零れる


「青空と桜って どうしてこんなに合うのかしら…」


歩を進めていくと 一等大きな枝垂桜が目に留まる


ももは吸い寄せられるように近づくと桜の下に座った


こんなにたくさんの桜を眺めるの…小さい頃に家族で新宿御苑にお花見に行って以来かな


いや あの時はまだ幼くてどれくらい咲いていたのかも記憶の彼方だ


ももは大きくのびをすると空を見あげた


「気持ちいい…桜天井が見事だわ…桜に酔ってしまいそう」



「桜酔いとは ロマンティストだな…」


え?



耳心地のよいノーブルな声に振り向くと


茶色がかった瞳の白とグレーの美しいハスキー犬が桜の下に座っている


え…


声が聞こえたあたりを見回しても誰もいないし…


「俺だよ あなたに話しかけたのは わん♪」


「うわあぁぁぁぁー!!!」


「なんだよ、びっくりするじゃないか」


「ハ、ハ、ハスキーが喋った…私、寝ぼけてる? 寝不足じゃないし…それとも…夢…?」


ハスキーはニコッと笑うとゆっくりとももに近づいてきて唇をペロリと舐めた


「夢、じゃないだろ? もっと舐めようか?」


ペロペロと唇を舐められ数秒ほど放心していたももは次の瞬間


はっと我に返りハスキー犬の肩を押しやる




「ちょっと! 私のファーストキス…!! やめてよっ」


誰とも…キスしてないのに…初めてのキスがハスキーって…


ふにゅーん…


ハスキーはももを寂しそうに見上げる


可愛い…


「そ、そんな顔しても…いきなり唇奪うのは反則だからね…」


「ごめん…可愛かったから…」


えっ…何故か頬が熱くなる


「ねぇ、ところであなた名前は? どうして喋れるの?」


「俺の名はルフ 今日からきみの恋人だよ もも」


「こ、恋人?」


「わん♪」


ルフは前足をももにかけて尻尾をぶんぶん


あ、また そんな可愛いことして…


「ねえ! ちょっと待って…どうして私の名前知ってるの?」


「運命だから…」


茶色い瞳でじっと見つめられると何だか不思議と逆らえなくなる


どうしてだろう…


「俺のこと嫌いじゃないだろう?」


「あ、う…どちらかと言うと好きだけど」


「おぉーん 素直じゃないな ハスキー犬が好きなくせに」


「なんでそんな事まで知ってるのよ…」



「あー、いたいた! もうっ待ち合わせ場所に30分たっても現れないから迷子になったかと思ったわよっ」


マリが大きなバスケットを抱えて走って来た


「え~私、30分前に着いたんだよ マリがまだ来ないと思って1人で桜見てたけど…」


「あんたは方向音痴だから迷子になって泣いてると思って気が気じゃなかったわ


おばさまに電話したらとっくに家を出たって言うし…心配したんだからっ」


「ママに電話したの? そうか…心配かけてごめんね」


私に抱き着いて号泣するマリの背中を撫でていると…


わん わんわん♪


きちんとお座りしてマリに挨拶しているルフに気付き焦った


「あら、イケメンなハスキーくんね ももいつの間に飼ったの?」


わん くぅーん…ふゅぅ…ううおーん


こいつ…喋れるクセに普通の犬のふりしてる…


「可愛い♪なんか喋ってるみたい」


ルフのお陰でマリのご機嫌はすっかり直っていた


「ちょうどよかったわ お弁当いっぱい作ったからあなたにもお裾分け♪」


おん♪わんわん♪


マリにハムとおにぎりをもらい笑顔ではくついているルフ


「なかなか…きみの親友は料理上手だな」


再びルフに話しかけられギクリとしながらマリを見るが彼女は無反応でお弁当を食べている


「なに? ひとの顔じっと見て…おねーちゃん自慢のチキンナゲット、食べてみて 美味しいんだから」


聞こえ…ないのか…ルフの声…


「あ、あはは、ほんと美味しいね~」


不自然に笑いながらナゲットを頬張る私をマリは首をかしげながら不思議そうに見つめている


ルフは私の戸惑いもお構いなしにナゲットとおにぎりにがっついていた


「美味い…もも、安心しろ 俺の声はきみにしか聞こえないから…」


「え、本当? 本当に聞こえないの?」


「何が?」


マリが心配そうに私の顔を覗き込む


「あ、ああ~なんか、ルフが美味しいって喜んでる気がして…あはは…」


「うん、そっか そりゃよかったよ たくさん食べてねルフくん」


変わり者の私に慣れているマリはそれ以上何も言わずにお弁当を食べながら桜を楽しんでいる




正直 私はショックで味もよくわからなかった


本来なら見事な桜を愛でながら桜の伝説や怪談なんかをマリと語り合っていたはずが…


今も隣に当たり前の顔をしている喋るハスキー犬のせいで訳が分からず頭は混乱状態だ


「それにしても…リードなしによく暴走しないね すごいなぁ」


「えっ、な、何でっ」


「やだ、ハスキー好きなら知ってるでしょ ハスキー犬って走るの大好きだからリードしないと好き勝手に走り回って帰ってこなそうじゃない」


「砧公園は特に広いから迷子になっちゃいそうだし…すごい信頼関係ね きっともっちぃよりお利口さんなんだ」


「…どうせ方向音痴ですよ」


「すぐいじけるんだからっ(笑)


でもこの子がいれば迷子にならなくてすみそうだね」


そういえば…ルフは今日から彼氏だ、みたいに言ってたけど…うちはハスキー用のベッドも餌も当然ないから買わないとな…


考え込んでる私の肩にルフはポンと前足をかけると口を開けずに脳内に話しかけてきた


「心配しないで 俺は特殊でノミもアレルギーも持ってないからももと一緒に寝られる


餌もももと同じモノで問題ないけどもものパパとママが変に思うだろうから


一応、形だけ犬用のベットと餌とおもちゃは用意しておいた


今頃、家に届いてるはず」



な…それって あなたが注文したってこと?


「代金は払ってあるから問題ない


ホストじゃないから恋人に貢がせたりしないよ」



あ、頭が…ついていけない


犬なのにどうやってルフは買い物して私の家を調べて宅配まで手筈したんだろう…


「ああ、言い忘れてた


俺は見た目がハスキー犬そっくりだが魔性犬なんだ


きみが生まれる何百年も昔に俺ときみは愛し合い婚約していたが戦で城を落とされきみは敵側に辱めを受けたくなくて川に身を投げ儚くなった


きみを諦めきれずに俺は悪魔と契約してこの姿になりきみが生まれ変わってくるのを待っていたんだ


だから人間に変身して日本でマンションを借りてきみを探していたんだけどやっと出逢えたから今日から新居に引越すよ


よろしくな もも」



はぁ? ま、魔性犬って…


なにそれ…ケルベロスとかとおんなじ?


「あれは黄泉の国の番犬だろう


俺は魔界からきみを守りに来た恋人だよ


ま、いきなり言われて納得できないならハスキー騎士(ナイト)とでも思ってよ」


ハスキー騎士か…


えっと…待って


生まれ変わりってことは…ノスフェラトゥ? あなたVampireなのね!


「いや、残念ながらきみの好きな吸血鬼じゃないんだけど…


まあ似たようなものだからな そう思ってていいよ


血は吸わないから安心してな」



なんだか少女漫画みたいな話だけれど…耽美主義者な私にはあっているかもしれない


わかったわ ルフ


それがあなたの名前なのね


「ああ 正式にはルフィだ」


ルフィ…いい響きだな…


私はそっとルフを抱きしめる


ふさふさな毛並みからは高貴な香りがして心地いい…


「あ~もふってる いいないいな♪」


マリの声でふと我に返る


「う、うん この子もふもふで気持ちいいから」


「あはは でも…よかったね もっちぃ 理想の彼氏ができて」


とても優しい表情でマリが私の頭を撫でてくれる


「や、やだぁ マリ 彼氏じゃないってば(笑)」


「こんなこと言うとあんた怒るかもしれないけど…妙にお似合いなのよね


私はね 恋愛音痴のあなたが恋をするなら犬でも鳩でもどんな相手だって全力で応援するよ」


けっして冗談やからかいでないことがわかる慈愛溢れる聖母のような微笑みを浮かべ優しい言葉をかけてくれた親友に涙が零れる


「どうした?ごめんごめん、なんか傷付けちゃった?」


焦っているマリに私は応えた


「ううんうん そうじゃない


私、嬉しいの


マリの優しさが本当に私のこと理解して心配してくれているのがよくわかったから…」


「気付くの遅いぞ 何はともあれ…ももをよろしくねルフくん」


わん♪


「彼女、本当に喜んでくれている


いい友達をもってよかったな もも…」


そうだね…


「じゃあ桜をもう少し愛でたら帰りますか


今夜は煮込みハンバーグだってママからライン来てた」


「わぉ♪ おば様お得意の煮込みハンバーグ♪ ごちになりま~す」


「泊っていくでそ」


「もちろん♪ お泊りセット持って来たのだ」


「さっすが~♪桜の伝説とか聞かせてよ」



1時間後…多少混乱気味の現実と向き合いつつ私はルフと共に愛すべき親友と家路に向かった

















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