表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルマの東へⅡ~ Knights of Winder Kingdom ~  作者: 月河未羽
prologue ― プロローグ ―
2/67

王の指令




 副隊長のヴルーノは、日増ひましに強くなる不安とあせりをこらえて、今朝も川辺に立った。


 いだ青い川の対岸に、い緑色の深い森。沈黙を守るかのように、その中で起こったことの何も伝えてはくれない。いよいよ、自分たちの方から行くべきか・・・。


 目の前には、そこへ行ける長い橋がのびている。その先には、一筋の小道が遠くまで続いているように見えるが、南の国境沿いに広がるそのかしの森は、ほとんど未開の地だ。


 だがその中に、一つ独特な村が存在する。


 まさにそこへ、第一部隊と荷物を運んでくれる五頭の馬を連れて、ラルティス総司令官は旅立っていった。


 王の指令によって。


「その村へは半日(五、六時間)もあればたどり着く。問題が片づくまでに数日かかるだろうが、一週間以内には戻れるだろう。」


「はい。こちらのことはお任せください。」


 たのむぞ、というような目を向けられ、うなずいた彼を見つめ返したあの時、ヴルーノは何の心配もしていなかった。


「では、行ってくる。」

「お気をつけて。」


 そんな会話を交わしたのが、もうずいぶん前のことのように思われる。


 重いため息をついて、ヴルーノはまた川の向こうを見つめる。


 その時、不意に風が吹いた。気づけば、灰色の雲が流れてきている。強い風が何度か、少し長いあいだ吹いた。森の木々がゆらゆらと揺れる。木の葉がかさかさとざわめく。


 鬱蒼うっそうとした森が、こちらの様子に気づいて両手を広げ、怪しくささやきかけながら手招いているかのようだ・・・。


 そのように森を不気味に感じ始めたのは、三日ほど前からだ。あの謎めいた森の中で、あるいはその不思議な村で、いったい何が起こっているのか。彼らは今、どういう局面に立っているのだろう。


 すると、あの日の総司令官の背中が思い出された。


 そういえば、川の向こうに広がるあの森を、閣下かっかは異様に長いあいだ見つめていた。今だから、そのことに気づいた。きっと、何か不吉を感じておられたに違いない。


 思えば〝王の指令〟は〝疑問〟だ。言い換えれば〝王からの指令〟ということ。これはおかしい。


 そう誰よりも早く気づいて、閣下はあの時、これから進むべき道を注意深く、よくよくながめていたのだろう。そうに違いない、と、今は強くはっきりと感じられる。


 なぜなら・・・。


 あれから、一週間が過ぎ、今日で十日目とおかめ


 彼らはまだ帰っては来ない・・・。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ