✒ うわさ④ 駄菓子屋 3
──*──*──*── 狭間の駄菓子屋
「 此処か──。
閉まってた駄菓子屋と外観が同じだな 」
春舂霄囹が駄菓子屋の中へ入ると聞き慣れた声が耳に入って来た。
「 一寸、こんなに買ってあげてるんだから、少しくらいまけなさいよ! 」
「 駄菓子屋で値切るのは悪質エリ。
マオ様にチクるエリ 」
「 チクるですってぇ!?
なんて恩知らずなキノコンなのかしら!!
私はねぇ、『 8円まけろ 』って言ってんのよ!
8円よ、は・ち・え・ん!
8円くらいおまけしなさいよ!
私はマオの眷属なのよ!
8円くらい融通しなさい! 」
「 悪質極まりないとんでもクレーマーエリ。
恩なんて微塵も無いエリ。
セロフィート様にもチクるエリ 」
「 きぃぃぃぃぃ~~!!
話の通じないキノコンねぇ!!
責任者を呼びなさい!
私が直々に直談判してやるわ! 」
「 責任者はセロフィート様エリ~~ 」
「 おい、何でキギナが駄菓子屋に居るんだよ? 」
「 いらっしゃいませエリ~~。
霄囹ちゃまエリ! 」
「 おい、僕を見るなり両目をキュピンさせるな!
涎も拭けぇ!!
それより、何でこんな所にキノコンが居るんだよ! 」
「 臨時の店番エリ。
《 セロッタ商会 》が経営している隠れ家風駄菓子屋エリ 」
「 セロフィートが異形の為に用意した駄菓子屋って訳かよ。
キギナ、お前の父親がセロフィートと話してたぞ。
セコい値切りで店の妨害なんかしてる場合か?
こんな恥ずかしい事をしてるなんて知られたら、お尻ペンペンでは済まないんじゃないか? 」
「 嘘でしょ……。
パパンが来てるの?!
逃げなきゃ!!
切符!
今直ぐ切符を寄越しなさい! 」
「 片道切符は駄菓子を1万円分買うエリ。
往復切符なら駄菓子を3万円分買うエリ。
どっちの切符も無くすと戻って来れないエリ 」
「 1万円も駄菓子に使えって言うの?
ハッ──、とんだボッタクリ屋じゃないのよ!
何で切符が1万円もするのよ!! 」
「 文句は全て相談役のセロフィート様を通すエリ。
買う気が無いなら店から出てくエリ。
他の御客が並んで順番を待ってるエリ 」
「 チッ………………霄囹!
私の代わりに2万円、出しなさいよ 」
「 断るに決まってるだろが!
邪魔だから早く退け。
僕は人を探してるんだ 」
春舂霄囹はキギナ・メグド・ナールをさっさと追い返したいのか、シッシッと左手を動かす。
「 お……覚えてなさいよっ!!
私を邪魔者扱いした事を後悔させてやるんだからね!! 」
キギナ・メグド・ナールは泣きべそを掻きながら駄菓子屋を出て行った。
「 やれやれ……。
やっとキンキン声の煩いヒステリック女を追い出せたな──。
さてと、キノコン。
駄菓子屋に人間の男は来てないのか? 」
「 来てるエリ。
買い物カゴを待って駄菓子を選んでるエリ 」
「 そうか。
未だ無事なんだな── 」
春舂霄囹は親切に答えてくれたキノコンに “ 何か ” を渡すと店内へ入った。
賄賂である。
「 マオ様の写真エリ~~♥
今回はマオ様の写真に免じて、大目に見るエリ 」
キノコンはマオの写真を笠の中へサッと入れると、並んで会計を待っている異形達の相手を始めるのだった。