⭕ うわさ② 逆走ハーレー 2
──なんて事を此の時のオレは、新婚ホヤホヤの涌乢と笑いながら話していました。
あれから数年後にあんな形で涌乢と再会を果たすなんて思いもしませんでした……。
どんな再会だったかと言うと────。
コロナ禍が明けて、涌乢の結婚式に出席した時に知り合い、付き合う事にまった彼女はバイカーでした。
オレもバイクの免許を取り、彼女のツーリングに付き合う様になりました。
彼女との結婚を控え、彼女を通じて知り合ったバイカー達と独身最後のツーリングに出掛けていた時でした。
誰が言い出したのか覚えていませんが、何故か「 度胸試しをしよう 」という事になり、例の “ ヤバいツーリングコース ” へ行く事になったのです。
そのツーリングコースを仲間達と走っていたら、職場の先輩から聞いた通り、ハーレーが逆走して来たんです。
“ うわさ ” の逆走ハーレーは物凄い速さを出していました。
速度を落とす事も無く、突っ込んで来たんですっ!!
だけど、オレ達と逆走ハーレーが衝突する事はありませんでした。
大惨事を免れたのは、逆走ハーレーがオレ達を透けて行ったからです。
衝撃的な体験でした。
逆走ハーレーを運転していたバイカーは、ヘルメットを被っていませんでした。
ノーヘル運転していたんですっ!!
オレ達を抜けて行ったバイカーは、けたたましい笑い声を発しながら逆走して行ったんです。
一体何がそんなに可笑しかったのでしょうか??
あの奇妙でけたたましい笑い声は今でも耳から離れません。
それに──、逆走ハーレーを運転していたバイカーの顔には見覚えが有りました。
あの顔は間違いなく──、オレに逆走ハーレーの “ うわさ ” を教えてくれた職場の先輩と、新婚ホヤホヤだった涌乢の顔だったのです!!
涌乢はバイクの免許を持っていませんし、バイクも持っていません。
ハーレーに乗れる筈がないんです。
バイカーの先輩が運転するなら頷けるのですが──、運転していたのは涌乢でした。
オレは独身最後のツーリングを切り上げて、涌乢に電話をかけましたが、通じませんでした。
何度も電話を掛けましたが、涌乢が出てくれる事は無く、折り返しすらありませんでした。
勿論、元職場の先輩にも電話をしました。
職場の先輩は県外の会社へ異動してしまったので会いに行く事は出来ず、諦めました。
胸騒ぎがして、オレは県内に在る涌乢の新居へバイクを走らせたのですが────。
涌乢が暮らしていた筈の新居は売りに出されていて、涌乢とは会えず終いでした。
逆走ハーレーにノーヘルで2人乗っていたバイカーは、オレの知っている先輩と涌乢だったのでしょうか……。
未だに分からないままです。
因みにオレは、現在も妻と子供達と共に家族でツーリングを楽しんでいる現役のバイカーでっす★
◎ 訂正しました。
出していまいた。─→ 出していました。
き切り上げて ─→ 切り上げて
県外 ─→ 県外
終いでした。─→ 終いでした。