⭕ うわさ① トイレの神様
──*──*──*── 某テレビ局
──*──*──*── スタジオ内
此処では今、オカルト番組の収録をしている。
夏の間に放送される期間限定のオカルト番組の収録である。
今年のテーマは【 うわさ 】で、この “ うわさ ” を題材としたオカルト話を再現したVTR映像を見て、ゲスト達で討論し、多数決により “ 都市伝説に認定する ” かを決めて行く番組だ。
投稿者の体験を元にした再現VTRを見た後、ゲスト達が討論に入った。
オカルト好きなゲスト達がノリノリで楽しそうに討論する中、1人だけが機嫌の悪そうなゲストが居た。
盛り上がっているゲスト達の討論を聞きながら、如何にも詰まらなそうな顔でムスッとしているのは少年陰陽師として有名な春舂霄囹だった。
陰陽師として定番の狩衣を着て、烏帽子を被り、扇子をヒラヒラと動かし、自分を扇いでいる。
討論している内容が気に食わない訳では無く、収録中にも関わらずとある女性ゲストが春舂霄囹に熱烈な視線を向けているのが原因で嫌気が差していたのだ。
司会者が陰陽師の春舂霄囹に話を振って来ると、春舂霄囹は重たい口を開いて話し出した。
「 ──トイレの神様ねぇ?
あれだろ、トイレで悪さをした奴の部屋に現れては、室内を排泄物まみれにして、寝ている口の中に排泄物を詰め込んで窒息死させるってヤツな。
素晴らしく良い神様じゃないかよ。
僕は断然、トイレの神様の “ うわさ ” を支持するね! 」
「 …………何か嫌な神様ですよね……。
部屋中を排泄物まみれにされるなんて──、考えただけでもゾッとしますよ 」
「 ゾッとする暇も無いだろ。
排泄物まみれの室内を目の当たりにするのは発見者だぞ。
当事者は睡眠中に窒息死してる訳だからな 」
「 …………口の中に排泄物を詰め込まれるなんて嫌ですぅ~~ 」
「 多分、他人の排泄物ですよね?
自分のですら嫌だってのに──、悪夢だぁ~~~~ 」
「 嫌ならトイレを綺麗に使えば良いだけの事だろ。
公衆トイレ,施設のトイレ,自宅のトイレも自分だけが使う場所じゃない。
他にも必要と使う利用者が居るんだ。
清掃員が掃除してくれるから『 駄々草に使っても構わない 』なんて考えは改めた方が良いだろう。
次の利用者が気持ち良くトイレを使える様に考えて使うだけだ。
何も難しい事じゃないだろ?
“ 使わせて頂いている ” という感謝の気持ちと謙虚さを持って使わせてもらえば良いんだ。
心掛けが変われば、行動も自然に変わり、丁寧に使う様に意識も芽生えるだろうよ 」
「 霄囹さんは偶に良い事を言われますよね 」
「 偶にだって?
僕は何時でも良い事を言ってるぞ!
大体最近の現代人はトイレを利用する立場のマナーが全くなってないな。
便器に唾を吐いたり、痰を吐き捨てたり、煙草の吸い殻を流したり、大量のトイレットペーパーを詰まらせたまま放置したり、排泄物を態と流さず放置したり、産まれた赤子を便器に流したり、トイレットペーパーを持ち出し盗んだり──。
これじゃあ、トイレの神様から排泄物をプレゼントフォー・ユーされても文句は言えないだろ。
排泄物を口に詰め込まれて窒息死しても同情は出来ないな。
悪いのは何時の時代も人間だ。
利用者の自業自得としか言えない 」
「 ………………………………そうですね……。
返す言葉もありません…… 」
「 僕は “ トイレの神様 ” を新たな都市伝説として認定しても良いと思うぞ。
悪事には厳しく果敢に立ち向かう “ トイレの神様 ” とやらは大歓迎だぞ 」
「 ……………………ん~~でも……部屋を排泄物まみれにするのは勘弁してほしいかもですね…… 」
「 そ、そうですよね……。
臭いが取れないし、掃除も大変ですし………… 」
「( ククク……。
“ トイレの神様 ” か──。
こいつぁ、使えるねぇ。
この番組で都市伝説認定がされなくても、僕なら都市伝説にする事は簡単だ。
都市伝説を利用してガッポリ──、良いねぇ~~ )」
「 霄囹さん、急に上機嫌になられましたね?
やっぱり、オカルト話は楽しいですよねぇ(////)」
「 そうだな。
都市伝説認定されなくても興味深い “ うわさ ” が聞けるのは楽しいぞ。
浪漫を感じるねぇ 」
「 浪漫って大事ですよね!
じゃあ、次の “ うわさ ” に移りましょう。
次の “ うわさ ” は──── 」
「 いや~~、再現VTRが楽しみですね! 」
◎ 訂正しました。
機嫌が悪そうな ─→ 機嫌の悪そうな
文句はいえないだろ ─→ 文句は言えないだろ
臭いが取れないし ─→ 臭いが取れないし