バレンタイン特別編 チョコは少し苦いぐらいがちょうどいい。
バレンタイン
それは大事な人に愛を伝える日。
どこの誰が始めたか分からないイベントだがいいイベントだとは思う。
私のような引っ込み思案な女にはこんなイベントがないと気持ちを伝えられないから。
でも私は気持ちを伝える気はない。
私は人を呪って呪われる女。
あの人には相応しくない。
だからと言ってチョコを献上しない訳ではない。
気持ちを伝えないだけでしっかり作るつもりだ。
「お菓子か...」
私はお菓子を作りながら少し複雑に思う。
こんな呪いで汚れきった手で綺麗なお菓子が出来ていく。
皮肉な物だ。
「私なんかのお菓子なんて貰っても...」
あの人は喜んでくれるだろう。
あの人はそういう人だ。
だからといって納得できるほど私は明るくはない。
この手は多くの人を不幸にしてきた。
そんな手で作られたチョコは美味しいのか?
味は変わらないと分かってはいるものの心がそれを受け入れなかった。
「あなたもチョコ作り?」
私はいつの間にか隣にいた女性に話しかけられ少し動揺してヘラを落としてしまう。
「ごめんなさい急に話しかけちゃって驚かしちゃったね。」
彼女は謝りながらヘラを拾い水で洗ってくれる。
「わ、私こそごめんなさい。か、考え事してて」
「考え事?結構完成してるように見えるけど。」
私は後箱に入れるだけといった状態だった。
ラッピングしてしまえばもう後戻りは出来ない。
それが私を止める。
「わ、私みたいな女がお、送っても迷惑にならないのかなって」
私は何故か初対面のこの女性に相談をしてしまっていた。
人とあまり関わらないようにしている私が。
彼女の優しいオーラがそうさせるのか私には分からなかった。
「あなたみたいなかわいい子から貰って嬉しくない人はいないと思うけどなぁ。」
「か、かわいい?私が?」
こんな私が?
「それにね、愛が罪なんてそんなのはあの時代だけで充分。」
「でもわたしは...」
「確かにあなたはいい人とは言えないかもしれない。でもそれがなに?悪い人がチョコを送れないなんてだれが決めたの? 」
「そ、そうだけど...」
「愛に良い悪いはないの気持ちなんだから。」
「そうなの?」
「そう!」
彼女は私の手をもちながら笑顔でそういい放つ。
「あ、ありがと。あなたの名前は?」
そういえば私は名前を聞いていなかったことを思い出して聞く。
「わたしは...ヴァ...ヌス」
私は彼女を声をしっかり聞けぬまま目蓋がおちていき眠くなっていく。
私が目を覚ますとピンクのラッピングがされ、ハートのリボンもついていた。
「私がやったの?」
昨日の最後の記憶が無かった。
彼女は誰だったのか?
彼女が送ろうとしていた相手は?
そんなことを考えているとチャイムが鳴り響く。
「いそがなきゃ!」
私は鞄にチョコをいれ、教室へと走る。
愛に罪はないのだから。
彼女が渡せたのかは彼女と彼だけの話。
ここで綴るのは野暮というもの。
え?気になるですって?
そうですね。
愛は強しとだけ言っておきましょう。
ハッピーバレンタイン。
皆様に愛が届きますように。
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ハッピーバレンタイン!