五寸釘は案外重い
最近視線を感じる。
30万円のカメラをぶっ壊す男の視線を感じる男ほどではないが俺はそういったものには敏感だ。
「もしかしてお前ストーカーしてる?」
「スト?なんだそれは?」
何故か俺によく絡んでくる王子様(笑)に聞く。
だってこいつ殴られたのに絡んでくるドMだしストーカーでも驚かない。
「ストーカーって言葉無いのか?あーあれだ俺をつけてるか?」
「そんなわけないだろ!俺とお前は友達なんだからな!」
もっと視線が強くなるのを感じる。
原因は十中八九これだろう。
何故かこいつは俺を友達認定してくる。
やっぱりドMじゃねぇか。
ドMで王子様とか誰得だよ。
まぁそれはさておき、こいつはこんな奴だがファンは多い。
そのファンが庶民の俺と王子様が仲良くしてるのが気に入らないのだろう。
それに気づいている俺は距離をとろうとするがこいつが距離をつめてくる。
いたちごっこだ。
このままでは平穏な暮らしなど夢のまた夢だ。
どうするか...
「それでな妹が、聞いてるのか公明?」
「はいはい。それで妹が相手の足を掴んで崖から落としてからどうしたんだ?」
「そんな妹はマッチョではないわ!!全くちゃんと聞け!」
私は恋をしている。
でもそれは結ばれぬ恋。
彼と私では差がありすぎる。
私は小さな星で彼は太陽。
近づけば消えてしまう。
だから私は遠くから見守ることにした。
そういった愛もあると知り合いの白い髪の病気のおじさんもいっていた。
それでよかった。
あの男が現れるまでは。
あの男は癌だ、彼を汚すゴミだ。
周りの女達はてぇてぇだの、萌えるなど言っているが正気かと疑う。
ゴミと太陽だぞ?
許されない許されない許されない許されない許されない許されない許されない許されない許されない許されない許されない。
そこで私は五寸釘を買って準備をする。
あの糞王子を呪う準備を。
最近視線は感じなくなったが王子がお腹を痛めている。
休めばいいのに毎日のように青い顔で来るもんだから可哀想にもなる。
「すまないが、胃薬を貰ってきてくれないか?」
「しょうがねぇなぁ分かったよ。」
「すまぬこの恩は忘れぬ。」
「恩なんていいって。」
俺は保健室に向かっていく。
どうやらこの世界の保健室は薬も置いているらしい。
やはり異世界なんだなぁと考えながら歩いていると一人の少女にぶつかってしまう。
「大丈夫か?悪い考え事してて。」
俺は倒れた彼女に手をのばす。
ゲームなんかではこれがイベントだったりするのだろうがそんなことはないだろう。
ここでスルーしたら悪い噂流れそうだしな。
「だ、大丈夫です。」
黒髪の小さな女の子が緊張しながらそう呟きながら自力で立ち上がろうとする。
だが足を怪我しているのか立ち上がれずにいた。
それなら俺が100%悪いので彼女を背負う。
女の子を背負うのはマナー違反かもしれないが仕方がないこのままにはしておけない。
「な、なにを!?」
彼女は突然の行動に驚く。
そりゃあそうだ。
見知らぬ男におぶられたんだから。
「悪い、嫌かもしれないが俺のせいだからこのまま保健室まで連れていく。」
「そ、そんな保健室なんて!!」
彼女は申し訳なさそうな声で驚いているが、俺は気にせず保健室に連れていく。
このままにしておいて悪化したら目も当てられない。
「痛いだろうが我慢しろよ。」
「あなたなら...」
俺は保健室について誰もいなかったのでとりあえず足の消毒をする。
そして椅子に座らせ痛みを紛らすために俺は彼女に話しかける。
「突然つれてきてすまん怪我してるみたいだったから俺は公明。」
「し!しってます!」
「それもそうか有名人だもんな。」
転校初日に人気の生徒に右ストレートをくらわしたんだ当然しっているだろう。
「痛み大丈夫?」
「は、はい!おかげさまで!」
「大袈裟だよ俺はただ消毒しただけだし。」
俺は大きく感謝を述べる彼女に謙遜して何を話していいか分からず少し無言が続くと先生が来る。
「患者かい?」
「はい足を怪我したみたいなんでお願いします!」
彼女の怪我を告げると俺は急いで部屋を出る。
あまり話しすぎるとまた好感度が上がりすぎて厄介になりそうだからだ。
何か忘れているような...
まぁ、忘れるってことは大事なことではないのだろう。
「速く帰ってきてくれ公明~腹が~」
私は今まで勘違いしていた。
彼と私はすむ世界が違うと、釣り合わないと。
だが彼と見つめあって心が通じた気がした。
あんなゴミを邪魔だと思っていたのが馬鹿馬鹿しい。
彼と私は運命の赤い糸で結ばれているのだから。
私は彼に愛して貰った足を撫でながらそう思う。
「でもわたしとダーリンの仲を引き裂く奴は許しませんよ。」
後に彼女は最強の呪術士ナウラと呼ばれるのはまた別の話。
蛇足だが、
次の日にもまた王子に向かって五寸釘で呪っていたナウラであった。
五寸釘は意外と重いようだ。
「勿論私と公明くんとの恋応援してくれますよね?五寸釘って案外打ち込むのって大変なんですよ?増やさないでくださいね?」
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