番外編 罪な男は気づかない
世の中は不公平で成り立っている。
誰が言った言葉だったかは覚えていないが心に留まっている。
異世界でもそれは変わらない。
良いことなのか分からないが第二の生というのか、俺には前世の記憶があった。
多くの人間はそれ記憶を使い成功しようとか上手く生きようとかそう言ったことを考えるだろう。
だが俺はそう言ったことを考えなかった。
嫌、そんな事を考える余裕はない最下層の人間だった。
俺達は毎日を生きるのが精一杯だ。
貧乏な俺達は尚更だ。
そんな人間が成り上がりを考えても無駄だ。
夢で腹は膨れない。
それが俺が行き着いた結論だ。
ドライとか思われるかもしれないが精神年齢は40代だそういう考えもする。
周囲の子供達は大人になったら何がしたいとかそういった夢をよく話し合っているが俺は安定を求めた。
ただそれだけの話だ。
俺は平穏を求めたそれが一番幸せだと分かっているから。
私には気になる人がいる。
恋とかそう言った浮わついた物ではない。
なんと言うか彼は私を惹き付ける魅力というか魔力というかそういったものがあった。
多くの人は彼を全てを諦めた人間として見ている。
確かにここにはそういった人が多くいるのも確かだ。
だが彼は違うと私は感じている。
彼、公明は遠くを見ているがそれは諦めといったネガティブなものではなく未来を見ている。
私はそう考えた。
この二つは大きく異なる、方や希望と方や絶望。
公明からは絶望といった物を感じ取れなかった。
ここに絶望している人間は残念ながら多い、だから私は目というかオーラで分かるようになっていた。
彼からは絶望の負のオーラとは真逆の何かを感じた。
こういったものを感じたのは初めてだった。
だから私は彼が何を見ているのか、彼は何を考えているのか知りたくなった。
それをしれば負のオーラに包まれている私も変われるはずだ。
そう思い今日も私は彼を見る。
最近視線を感じる。
その視線からは妬みや恨みといった物は感じないが気にならないといえば嘘になる。
俺はそれを確かめる為に周りに人があまりいない川へと向かい釣りをしている。
「あいつか...」
俺は後ろから隠れて見ている少女を見つけた。
確か繚乱とかいったここでは少し有名な少女だった。
その目は人の心を見透かすとか言われている少女だ。
そんな彼女がなぜ俺を見ているのか?
何かしたとかそういったことは思い浮かばなかった。
分からないことを考えても仕方ない俺は釣りを続けた。
良い景色で釣りをしていると心が洗われるというがそれは本当なのだとここに来てからよく分かった。
最初は釣れないことに苛立っていたが最近はそういった苛立ちすら無くなった。
流れる葉っぱやゆれる水面を見ていると自然を実感できるから俺は好きだ。
その自然を感じていると竿が揺れる。
俺は焦らず少しずつ竿に力をいれる。
これは現代の釣竿と違い力を入れすぎると壊れてしまう。
だから俺は自然と同化するようにゆっくり、かといってあまりに遅すぎると食べきられてしまう。
そのバランスを会得するまで何匹の餌を取られたことか俺が第二の生に来てから得たものは釣りの技術だけかと笑いながら魚を釣り上げる。
小さくもなく大きくもなく、いい塩梅の魚だ。
俺は魚を取り、餌をつけてまた川へと入れる。
夕食のために。
私は少し意外だった。
彼が魚を釣り上げこうも笑顔になるとは。
彼が分からなすぎて仙人とかそういった類いのものかと思っていたがそんな事はなく彼も人間なのだと少し驚いた。
そんな風に思っていると彼は火をくべはじめる。
空を見ると太陽は沈み始め夕暮れが川へと反射していた。
もうそんな時間かと思い、帰る準備をしようと思い始めた矢先私のお腹が焚き火の音より大きくくぅーと鳴った。
私は焦り森へと隠れるが、彼は声をあげた。
「一緒に食うか?ここの魚は旨いぞ。」
彼は私の存在にとっくに気づいていた。
今思えば魚も二つ焼いていた。
私は森から出て川岸へと向かった。
「いつから私のこと...」
私が聞こうとした時腹がなる。
その腹の音を聞いた彼は魚を私に渡す。
しぬほど恥ずかしかったが空腹には勝てず魚を口にする。
その魚は空腹ということもあってかすごく美味しかった。
「ゆっくり食えよ骨が刺さるぞ 」
その様子は親のようで少し苛ついた。
だがその時私の喉へと激痛が走る。
「だから言ったんだ。」
彼は私に水筒を渡す。
私はそれを受け取りホネを取るため急いで飲む。
「この水美味しい...」
私はこんな水飲んだことが無かった。
なんとも優しい水だった。
「だろ? 」
彼は笑顔でそう返した。
その顔はさっきまで感じていた達観している人間と同じ人間なのかと思ってしまうほどだ。
私と彼は魚を食べ終わりゆっくりしていると、
「いつから気づいてたかだったか?」
そうだすっかり忘れていた。
「うん。」
「最初からだよ。そんな綺麗な目をしたレディを見逃すほど俺も耄碌してねぇよ。」
耄碌?
同じ10代なのに難しい言葉をてか、十代は老人ではないと思うのだが
それより最初から!?
「二ヶ月前から!?」
今日からだと思ってたら二ヶ月前からだった件について。
ストーカーかよ...
「気づいてたのになんで何も言わなかったの!?」
だって今日が初めてだと思ってたもん。
二ヶ月前からなんてしらねぇよ!
今までのキャラを投げ捨てておれは急いで言い訳を考える。
「か、可愛い女の子からの視線は悪い気がしなかったから...」
すげぇ痛い言い訳だよ!!
それ許されるのはイケメンだけだから!!
それが普通のやつが言ったら変態だから!
「か、かわ!わたしが...?」
彼女は顔を赤くした。
成功しちゃったよ!!
駄目元だったのに!!
そんな顔しないでこっちも恥ずかしくなっちゃうから!!
「そ、空が暗くなってきたな。俺はここでおさらばする!それではまた!!」
俺は急いでそこを後にする。
こんな所に居られるか!!
俺は帰るぜ!!
私は呆気に取られていた。
私がかわいい?
こんな目をしている私が?
自分でいうのもなんだが私は嫌われ者だ。
この二つの色をした目を嫌う人間もいる。
全てを見透かしているようなその感じが気に入らないと何度も言われてきた。
そんな私が可憐?
そんなこと言われたのは初めてだった。
...自分でもどうかと思うが私は彼をもっと気になるようになってしまった。
興味ではなく恋として...
「レディとか言っておいて置いていくのはどうなのよ...」
私は火を消しその場を後にする。
この顔をもっと赤くしたくないから




