クリスマス番外編 奇跡も魔法もある
夢があった。
こんな場所から這い上がって成り上がってやるって。
でも成長していくとそんなものは無理だと悟った。
上の人達は皆力や地位を持っていた。
それに比べて私はどうだ?
貧民生まれの夢想女。
それが私だ。
力も無く地位もない。
それで這い上がれるほどこの世界は甘くなかった。
努力して努力してやっとの事で学園に入ったけれどここも変わらず過酷だった。
大半の人達は私を人と扱わなかった。
貧民はそれだけで差別されるそれがこの世界。
そんな世界で生き残るには二つしかなかった。
誰かの下につくか同じ貧民のコミニティに入るか。
私は前者の方を選んだ。
この学園に友達は居ない訳じゃない。
親友の雪汝や宗麟もいる。
でも私は彼女たちと学園生活を送るよりも成り上がりの夢がある方を選んでしまった。
それが間違いだと気づかなかった自分の馬鹿さ加減が嫌になる。
私はセルビアさんという上昇志向の塊の人のまわりに居れば成り上がれるんじゃないかという淡い期待を持ってしまった。
確かにセルビアさんは上昇志向の塊だ。
王子様に勝とうと言うのだからでも彼女も貴族だ。
私の扱いは変わらなかった。
メイド同然いやもっと酷い暮らしを強いられた。
でもこれを選んだのは自分だ。
親友たちと過ごす道もあったのにこっちを選んだ。
これは私の罪だ。
思い上がりだ。
そう自分に言い聞かせながら耐えて過ごした。
そんな地獄の日々が一年経とうとした時、
彼が現れた。
王子様を殴り、王子と親友になった貧民。
そんな夢物語の主人公のような登場に私は心を引かれたがどうしようもなかった。
彼は反逆を選んだのに私が選んだのは服従。
真逆だ。
だから二つの意味で彼とはあうことはないだろうと思っていた。
でも彼は現れた。
彼はセルビアさんに会った刹那。
彼女には会長の才能がないと言い放った。
王族ではないとはいえ彼女も上級貴族だ。
そんな彼女に面と向かって啖呵を切った彼に驚きながらも憧れてしまっている自分もいた。
私には一生無理なのに。
そう考えて少し心は曇る。
そんな私のもとに彼はやってきた。
彼は私を会長にすると言い放った。
訳が分からなかった。
私が会長?
服従を選んだ私を?
何の取り柄もない貧民の私?
私は当然否定した私には無理だと。
でも彼は私の瞳に火を見たと言った。
火なんてもうとっくに消え去ってしまった燃えカスの私に?
ありえない。
「いや、君の炎はまだ消えていない。確かに弱まってはしまっているかもしれないけど、炎は簡単には消えない。」
そう言い彼は小さな炎を出して見せた。
その炎はどこか弱く儚げではあったが確かな意思の力というか暖かさを感じた。
彼曰くこれが私だと。
こんな暖かさがまだ私の中にあるというの?
全てを捨てて凍えてしまいそうな私に?
彼の言葉はありえない。
でも私は信じたくなってしまった。
彼の言葉の凄みが理由なのか私の心の炎がそう言っているのか分からないが
何故か彼と一緒ならやれる気がした。
彼に恋していたと気づくのはまだ先のお話。
『ネロの日記より抜粋』