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夜想の響  作者: 流風
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相手の女




「菜緒の根拠のない誹謗中傷がネットに書き込まれてて…」


「結婚直前で幸せそうだったのに、最悪だな」


「そういうの、ほっといても止まらないんじゃないか?警察とかは?」


「今夜も書き込まれるようなら、もう警察に相談しようと思ってる。幸せそうにしてた菜緒がずっと泣いてるのが、可哀想で」


「守ってやれよ」


「ああ。本当は結婚してから一緒に住む予定だったけど、心配になって、今は菜緒の家に泊まり込んでる」


「それがいいよ。慰めてやれよ」



 今日も朱理は物陰に隠れ、大志と同僚との会話を盗み聞きしていた。そして、SNSへの書き込みを見て大志と菜緒の関係を悪くする作戦が失敗したことを知る。


 しかも、最悪な事に…


・大志が同棲を始めた。悪化どころか関係を深めてしまった。


・優しい大志がこの状況で菜緒を放置する可能性は低い。


・警察に行く可能性がある。


 しまった。勢いでやったけど、大志の性格を考慮するのを忘れていた。

 しかも警察に行ったらどうなる?書き込みをしたのが私だとバレるのだろうか?


 バレたらどうなる?


 優しい大志に嫌われる?


 くそっ!菜緒め…なんでなの?何故?私の方が大志の匂いも彼の下着の色も詳しいのに。写真だってこんなにたくさん持っている。なのに…なのに…。殺したい。


 朱理のコレクション。それは大志の隠し撮り写真。そこから、大志の好みを調べ上げたりしていた。


 あんな女、死ねばいいのに。


 でも、大志の守りがある中、殺しに行くのは難易度が高い。かといって、他に出来る事は…。


 心の中で数々の悪態をつきながら何気なく覗いたスマホ。その画面にチラッと見えた心霊スポット特集。


 それを見た瞬間、朱理は静かにネット通販の画面をポチポチした。


 





 午前1時。神社へと向かう細く長い階段を白いワンピースに身を包んだ朱理が登って行く。


 朱理が日中にネット通販で購入したものは、『藁人形』と『釘』と『かなづち』。まさかセットで売っているとは思わなかったし、売っているのを見つけた時は思わず笑ってしまった。それだけ需要があるという事だろうか。


 できれば白装束に身を包みたかったが、そこまで用意出来なかったので、白いワンピースを着て来た。

 深夜 午前1時~3時頃神社に向かい木に藁人形を打ち付ける。これを数日間繰り返すのが『丑の刻参り』のやり方だ。


 朱理は家から1時間かけて神社に向かい、険しい階段を登り神社の奥まで向かう。神社裏、深夜のぼんやりとした月明かりしかない中で草をかき分け一本の木を目指す。

 ネットで見つけた『丑の刻参り』のスポット。本当は岡山県にあるらしいが、近場ではこの神社裏もおすすめだと掲載されていた。




 辿り着いた木には錆びた数本の釘が刺さっていた。



「あはっ」



 なんだ。仲間がいる。みんなやってるんだ。そうよね。みんな考えるよね。どうしてって。



 どうして。


 どうして私ばかり不幸になるの?


 どうしてあんな女が幸せになるの?


 不幸に…不幸になればいい。



 鞄から藁人形と釘と金槌を出す。


(これをこの木に…)



 ガサッ



 何か動く音がして思わず振り返る。しかし、そこには夜の静寂しかない。


(気のせい…?)


 気を取り直し再び木へと視線を向ける。すると……



 ゴッ



 静かな夜。鈍い音とガサガサという草を掻き分ける音がした後は、虫の鳴き声しか聞こえなくなった。






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