表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/151

第4章 疑惑〜11〜

第4章 〜11〜


気付いてないフリ…

自分はもう、どっちでもいい。

そしてまた、自分の行動を疑ってしまう。

「へぇ〜! 莉玖、やるやん!!」


 穂花は、莉玖が起こした行動に嬉しさを感じた。

 恋に迷っていたあの日の莉玖とは違い、随分積極的になったものだ。


「で、日向君はどう言うてたん?」

「それがね、気付かへんのかなぁ」

「でも、化粧品置いとくなんて、イコールお泊まりやん。それぐらいは…」

「思うやん? でも気付いてへんの」

 ―気付いてないフリしてるだけ。


 そういえば、莉玖は颯希の事を「好き」と言った。しかし、颯希からの答は聞いていない。

 あのライブのエンディングで、自分を受け止めて微笑んだ颯希は、全身優しさに溢れていた。何故かその時、「来てくれたんやな」と聞こえた気がした。

 間違いなく颯希は、自分の事を大切だと思ってくれている…はずだ。


 それは、思い過ごしなのか?



 金曜日の夕方、颯希はギターを背負い、四条大橋へと向かった。

 道路利用申請はその都度済ませてあるが、挨拶のため、まずは八坂署に立ち寄る。


「こんにちは」

「あらぁ、颯希ちゃん。今日は一段と女の子やねぇ」


 窓口に居たのは、西田だ。もう颯希の事を女性と信じてしまっているかのような口振りだ。そして颯希自身も、もう言い返す気も起こらない。というよりは、完全に受け入れてしまっている。


 ―一段と? まぁ、そやな。


 髪の左サイドを耳に掛け、後毛を垂らしている。莉玖が言ったように、男子がやってはいけない訳ではない。とはいえ、さながら女子の容姿である。

 少し肌寒さを感じる夕暮れ時。羽織ったいつものオーバーサイズのパーカーが、服装までも女子っぽく見せてしまう。


 颯希自身それは自覚していたし、ましてや西田にかかれば、もはや男子扱いなどしてもらえる訳もないだろう。


 そして、歌い始めたその楽曲は―。


『365日の紙飛行機』(AKB48)


 子供の頃に憧れたアイドルグループ。

 その歌を、自分もメンバーになった気分で弾き語る。

 丸みのあるハイトーンヴォイスは、優しいメロディをより優しく歌い上げる。


「次は、弾き語りを始めるきっかけになった曲です。『壊れかけのRadio』聴いてください」


 何人かの通行人が、足を止めた。

 彼らは皆、中年と見られる人達。

 この歌を聴いて、青春を過ごした世代なのだろう。

 一旦自宅に帰り、自分時間として颯希を手伝いに来た西田も同世代だ。青春の思い出を噛み締めるかのように聴き入っている。


「あの女の子、上手いな」

「徳永英明の高い声やったら、女の子でも歌いやすいんやな」


 そんな声が聞こえてくる。完全に女子と思われている。

 元々女子と間違われる事も多かった颯希だけに、この日の髪型なら当然だろう。

 このひと時―。

 何故か心地良かった。

 いつもなら、女子と間違われても「男子だ」と言い返す。しかし颯希は、そこに気付かない間にストレスを感じていたのかもしれない。


 ―女子と思うなら思ってくれ。自分(じぶん)はもう、どっちでもいい。



 美化運動は、徐々に効果をもたらし始めていた。四条大橋周辺から、ポイ捨てされたゴミが見当たらなくなっていた。道路使用許可を出した西田の鼻も高い。

 もちろん、颯希もこの結果に満足し、清々しい気持ちで、帰りの地下鉄に乗り込んだ。

 ところが―。


 ―何やってんねや、自分(オレ)


 コンコースから地上へ上がる階段の途中、突然自らの行動を疑ってしまう。

 さっきまでの気持ちはどこへ? 

 清々しさは、どこへ消えたのだろう?

 女装している訳ではない。髪を耳に掛けているだけだ。それなのに、あたかも女装しているかのように映る。


 自己嫌悪?

 言葉にならない思いを持ち帰り、自宅のドアを開けた。

 ギターを背から下ろし、声を張ってカラカラになった喉をうがいで潤す。尚も鏡に映る自分に違和感を感じる。


 何をどうすれば、この気持ちが癒やされるのだろう。

 ふと棚に目が行く。

 それまで存在していなかった物が、目に入る。

 颯希は、そっと手を触れた。


「莉玖の…化粧品…か」

読んでいただき、ありがとうございます。


『365日の紙飛行機』って、あれ聴くと話す事が出来ないんです。

話していると涙声になってしまうんです。

好きだな〜、あの歌。


『壊れかけのRadio』、良いですよね!

徳永英明さんの声、本当に沁みますよね。


さて、颯希君。

なんか女子化してますね。

高原にはいろいろ言われてるんだけど…大丈夫なんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ