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第3章 告白〜11〜

第3章 〜11〜


集まった3人と莉玖は、高原の件で騒つく。

彼のターゲットである颯希は、その時…

 何もなければそれでいい。

 なのに、何かありそうな空気感が嫌だ。

 そんな感覚を、高校時代の3年間ずっと抱いていた。

 今、再びその感覚が蘇っている。


「日向…さん」


 先輩であり、上司という位置付けにある颯希に対し、高原は同級生でありながらも“さん”を付けて呼ぶ。

 社会のルールとしては、それは間違いではない。寧ろそうあるべきとされるだろう。

 同級生でありながら…というのは仕方ないとして、気に入らないのは、その言い方だ。


「日向…さん…ヒヒ…聞こえてます?」

「あ、あぁ、ごめん。品質保証部からのメール見てて」

「返品の一件…で、す、か?」

 ―普通に喋れや。

「うん、まぁね。再検査は品証の立山さん立ち会いで5ケースやるって。あとのロットはこの件では問題ないのは分かってるから、包装解いてやり直したらいいって」

「それって、誰がやります? ねぇ、リーダー…」


 ウザイ! 何ともウザイ喋り方だ。


「金山さんにお願いしよう思てる。再検査は、最初の担当者とは別にしやなあかんねん」

「俺は不要って事ですね」

「そうは言うてへんけど、ルールやし」


 まるで悪態でもつくかのような言い草だ。

 高原は、フッと鼻で笑って去って行った。




「仕事は真面目にやっとるねん。あと、パートさんからの評判もいいみたい」

「けど、サッちゃんと話するのは…」

「うん。やたらと鼻につく」


 それは高校時代からの事だ。人を小馬鹿にするような態度は、何も変わってはいない。

 そして、やたらと絡んでくる性格もそのままだ。


「ライブ、来る言うとった」

「あ!? 要らんわ!!」


 しかし、「来る」と言われて断る術も見つからない。嫌がらせのような行為もなく、普通に「観たい」と言われれば、受け入れるしかないだろう。


「まだバンドやってる事、言うたんか?」


 剛は少し怪訝そうに言う。


「訊かれて嘘は言えへんやろ」

「そうか…まぁ、そやな」


 高原にすれば、これで仕事以外でも接点が出来る。そこから先に、何を企んでいるのかは分からない。


「莉玖、自分(オレ)が守るから心配すんな」


 剛と彰人には、何の事か理解出来なかった。莉玖に何かあったのだろうか? 

 2人は顔を見合わせた。


「あたし、結構セクハラまがいの事…」


 言いかけた莉玖を、颯希は右手で制止した。


「彼奴、高2ん時に莉玖にちょっかい出そうとしよった。それから嫌がらせが酷うなったんや」

 ―もっと自分(オレ)が強かったら…。


「ちょっかい?」

「穏やかやない感じか?」

「うん…」

「ほな、颯希(おまえ)との接点作っといて、莉玖ちゃんに近付こう思とるんか!?」

「可能性はない事もない。でも、そうでなかったら、自分(オレ)を引き摺り下ろして高原(じぶん)が上に立って、やりたい放題やろう思てるか…や」


 彰人は腕を組み、右手の人差し指で顎を掻いた。


「人として終わっとるな…」


 本人が何を思うのかは知る由もない。高原の性格から察するところ、見えてくるのはそんなところだ。

 もちろん莉玖もその事に対し、恐怖心を抱かずにはいられない。


「莉玖なぁ、ライブん時は出来るだけ楽屋に入って、自分(ウチ)らが演る時はステージに近い所に居りっ。な!」

「俺らから見える範囲にな」

「ほのちゃんと一緒にな」

「分かった。ありがとう」



 帰り道、颯希はギグバッグを背負い、莉玖は自転車を押して歩く。


 日が落ちて時間が経っても冷めない空気。じっとしていても汗が流れる熱帯夜。

 颯希は、フッと(オトコ)になった。

 莉玖を守ると言った瞬間から、颯希は胸を張り、男らしい目力で前を見ていた。



 高原という男―。


 莉玖と仲の良かった颯希に対し、得体の知れない敵対心を抱いていた。何かにつけて颯希の弱点を揶揄し、勝ち誇ったかのように高笑いしていた。


 莉玖に対しては、会う度に爪先から顔まで、撫でるように目線を送る。莉玖はその時点でハラスメントを受けているに等しいと感じていた。


 そんな男が、いつまでもおとなしく颯希の部下として仕事するとは思えない。


 しかし莉玖の不安は、今、横に居る颯希の表情を見て払拭された。

 ―子供の頃の颯希に恋してる。

 穂花は莉玖に、そう言った。

 それは、心に強烈に突き刺さった。

 穂花に言った言葉―。


「離れて行きそうで怖い」


 いや、離れて行くなんて事はない。

 大人の男として、颯希は莉玖の傍に居る。

 強いかどうかなんてどうでもいい。颯希が傍に居る事に、莉玖は安心感を覚えた。

 ―守りたい。

 そう思った莉玖ではあったが、逆に守られようとしている自分が居る事に、この時そっと気付いた。


「こんな時に、もし高原が出て来たら?」

「はは…自分(オレ)は喧嘩なんて強くないから…」


 まともに対峙したって勝てる訳がない。だから―。


「大声出すわ。シャウト!」

読んでいただき、ありがとうございます。


颯希が、随分と頼もしくなりましたね。

学生時代と比べてみれば、確実に強く、そして大人になってる事がわかると思います。


今回は、この厄介な男をどうあしらうか? というお話。

何を目的とし、何を企んでいるのか?

その動向、注意しておいてくださいね。

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