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第3章 告白〜7〜

第3章 〜7〜


久しぶりのライブ。

尊敬する先輩の言葉が、答を導き出す。

そんなNick Shock ! を見ながら、徐々に加速してゆく想い。

 ライブハウス・MUSE LABでは、GW期間中、アマチュアバンドの祭典とでも言うべきイベントが連日行われている。


 Nick Shock ! は、最終日となる5月5日へのエントリーに、滑り込みで間に合った。

 あらかじめ当日のタイムテーブルを記した書類が配られているが、3人はあらためてそれを見ると、一息ついた。


「3番目かぁ。ま、気ぃ楽やな」


 彰人は、剛を横目で見てそう言った。


 まだ燻っているのだろうか。

 出演が近付くにつれ、剛の表情は硬くなっていく。

 そんな様子を見て、颯希は剛にそっと近付き、静かに問う。


「何か思てる事あるんやろ?」


 剛は無言のまま颯希の目を見ると、今度は彰人の顔を見た。


「らしくない(・・・・・)やんけ」

 ―そう…かな?

「スッキリしてから演ろか」


 颯希と彰人の顔を交互に見る。


「あ、あのな…」

「言えや、な!」

「あ、あぁ…」


 俺を頼れなどと言い続けてきた。いつも漢(オトコ)であり続けてきた。そんな自分もやはり人間。様々な感情を持つ“人間”なのだ。


「なぁ、颯希、ゴリ…俺ら、何のためにバンドやってるんや?」


 彰人はクスッと笑い、剛の肩を軽く叩いた。


「それは、今から分かる事や」

「分からんかったら、分かりたかったら、まず演る事や」


 ミュージシャンは、まず演る事。

 尊敬する先輩であり、プロアーチストである南条の言葉は、挨拶に限った事ではない。

 何かに悩んだり、何かを求めたり、答が欲しい時は…?

 まず、演る事。それに尽きる。


「しゃあっ!!」


 彰人がいつものかけ声を上げると、3人はステージへと向かった。



「こんばんは! 2年振りに帰って来ました。Nick Shock ! です!!」


 既に彰人がリズムを刻み始めている。颯希はクランチ・サウンド(軽く歪んだギターサウンドで、音の輪郭がはっきり聴こえる)でわざと雑にコードストロークする。

 ギャンギャン鳴り響くギターを、剛が合図して止める。

 そこからベースのスラップだ。


 ―わぁーーー!!


 歓声が上がった。

 颯希は彰人を見た。2人はニヤリと笑った。


 いつもリーダーとして引っ張ってきた。

 気性の荒い彰人。

 いつも遠慮がちな颯希。

 2人の顔つきが、いつになく穏やかで自信に満ちている。

 そう感じたから、コイツらに先に行かれてはなるまいと、剛は持てるテクニックをフルに引き出す。


「リードギター、颯希ーっ!!」


 剛が叫ぶと、それぞれの楽器が交わり、“楽曲”として会場内にこだまする。

 わざとコードを外し、リズムを狂わせる。そして流れるまま元に戻すと、完成されたメロディが8小節。


 徐々にテンポを上げ、リズムが整うと、そのまま「Freewheel Burning《フリーホイールバーニング》(ジューダス・プリースト)」へ。

 激しい程の疾走感に、観衆もヒートアップしていく。


 曲が終わると一呼吸置いて、「Back in Black《バックインブラック》(AC/DC)」だ。

 超ハイトーンのシャウトを、颯希はものともせずに歌い上げる。


「3番目でここまでやられたら、堪らんわ…」


 後に控えた2組のバンドのメンバー達も、そう言いながら歓声を送る。



「アッ君! めっちゃカッコいいっ!!」


 穂花が叫んだ。

 莉玖が思わずその顔を見る。

 拍手や歓声に呑まれている場合じゃない。今思う事を、真っ直ぐ声に出して投げかけねば!


「え? 穂花…」


 目が合った。穂花は莉玖に、何やら合図しているようだ。


「ほらっ!」


 穂花は、莉玖の背中を叩いた。

 ―名前を叫べ!!

 きっとそういう事だろう。


 剛のMCから、「We Rock(DIO)」へ。

 この日のラストナンバーだ。

 激しいリフ、耳を劈くハイトーンヴォイス。

 まるで、暴れる腕や足を抑えきれないかのように、強く激しく、3人は弾きまくる。


「サッ…ちゃん…」


 言葉にならない。気が遠くなりそうだ。

 自分の声さえ聞こえない程の、豪快なサウンドが響き渡る。

 あのSoundboxでのライブ以後、確かに成長している颯希の姿。

 幼少の頃からずっと一緒だった、女の子みたいな男の子は、いつの間にか莉玖の心の奥をざわつかせる男子へと変わっていた。



 ―わぁーーーーー!!!


 拍手と歓声が、会場から溢れんばかりにヴォリュームアップする。

 3人はステージの真ん中に並び、深くお辞儀をした。


「ありがとうございましたぁーーーっ!!」



「タケ! 答、分かったけ!?」

「おうっ!!」


 足踏みしていた。

 もっと進まなければいけなかった。

 颯希が、彰人が、言わんとしていた事。

 悩むなら、迷うなら、まず演るのがミュージシャンだ。

 まだ少しだけかもしれないけど、自分を取り戻し始めた。剛はそんな気持ちになっていた。


 いい音と共に汗を流したひととき。

 楽屋に戻った3人は、顔を見合わせ、腕を組み、そして笑った。

読んでいただき、ありがとうございます。


進んでは戻り、また進む。

たとえ大舞台が背伸びだったとしても、そこで学んだ事を一歩下がって見つめ直してみる。

踏み出せない時は、戻ってみるのも良いんじゃないかなって思うのです。


そしてもう1人、踏み出せないその人…

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