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第3章 告白〜1〜

第3章 〜1〜


第3章スタート。

サブタイトルは「告白」。

Nick Shock ! の3人は、ラーメン食べながら会議中。

「December Live Party」を終えた、 Soundboxからの帰り道。

 深夜のラーメン屋でテーブルを挟み、3人は真剣な面持ちで話し合っていた。

 そこには「やり切った」という充実感はなく、むしろ重い雰囲気が漂っていた。



 深夜まで及んだ、南条からの大切な話―。


「お疲れ様」

「お疲れ様でした。ありがとうございました。あと、ミスってしまって…すみません。せっかく呼んでくださったのに…」


 3人は南条に対し、感謝の意と共に謝罪を混じえた挨拶をした。

 南条は笑っていた。


「何で謝るんかな? はは…ミスったのは分かってる。でも、良い対応やったやん」


 3人は顔を見合わせた。


「あ、ありがとうございます」

「あはは…ライブ中のミスなんて、日常茶飯事や。対応出来ずに一からやり直す事も多々ある。それ思たら、君らは凄いで」


 しかし、剛は大切なライブでの失敗として、今回の出来事はトラウマの如く胸を締め付けていた。

 南条のフォローもどこ吹く風。その結果を受け入れられずにいる。

 そんな剛の様子が、誰の目からも見て取れた。



「なぁ、何で即答しやへんでん?」

「タケがリーダーなんやし、タケが首を縦に振ってくれんと進まへんやん」

「すまん。ほんま重ね重ね申し訳ない」

「で、どうすんの?」

 ―あぁ。


 ライブの後、南条から3人に向けて提案があった。

 それは、Soundboxが協力する形で、自主制作盤を出さないかというものだ。


 音楽は、まず聴いてもらう事。そして、その果てにはいつまでも残したいと思われる事だ。

 インディーズであれ、また、売れなかったとしても、記録媒体に残され、いつになっても“聴くことが出来る”というのが音楽の目指す形なのだと、南条は言う。

 全くもってその通りだと、3人は南条の言葉に対し、首を縦に振った。


「悪い話じゃないやろ? 多少のお金はかかるけど、折角のオリジナル曲なんやし、挑戦してみようや」


 南条はじめ、バンドやスタッフメンバーは、口々にそう言う。

 しかしこの時、剛にはその気力が生まれなかった。

 南条の言う事を尤もだと思う反面、自分自身の能力に疑念を抱き始めていた。

 乗り越えたはずの事態も、それは紛れもなく自身の進行に関する打ち合わせの不備が招いたもの。そんな認識が、あまりにも強く心に響いていたのだ。


「あのな…」


 申し訳ないと言わんばかりの表情の剛だが、どうしても気になって仕方ない事が、その脳裏を支配してしまっていた。


「もし俺が『やる』って意気込んだとして、お前らはほんまに出来ると思うか?」


 彰人と颯希は顔を見合わせる。


「タケ、ラーメン並だけなんて珍しいやん」

「お、おぅ…」

「チャーハン、ちょっと食べる?」

「いや…ええわ」


 少し沈黙した。

 緊張を解そうと、颯希は少し話題を逸らしてみた。

 確かに、簡単に踏み出せる事ではないだろう。そんな事は分かっているが、またとないチャンスが巡って来ているのも事実だ。


「チャレンジ…してもええんちゃうんけ?」

「やりたい気持ちはあるねん。けどな、やったとして、確実に売れる思うけ? 例えば制作費考えても、売れんかったらリスク高い。売れ残った分はどう始末する?」


 3人は黙り込んでしまった。


 CDへのプレスからジャケット制作など、諸々込みで1枚1000円前後。当然、発注数は100枚単位になる。

 結構な思い切りが必要かもしれないが、南条は剛のにえきらない態度に、「意欲が足らんね。そんなんでは無理かな…」と、きつい言葉を浴びせた。


 不意に目の前に現れた、次へのステップ。

 足並みが揃わなければ、進みようがない。

 少し考える時間が欲しいと言って、3人はSoundboxを後にした。


 そして今、ラーメンを食べ終わったところで、もっとバツ悪そうに声を出したのが颯希だ。


「あの…ごめん。ほんま、ごめん。実はな…」

「ええーーー!?」


 仕事の事。太田主任から伝えられた、今後の人事。わずか1年で、颯希は職長心得という役が付くことになる。


「お前…出世頭やん」

「ありがとう。でもな…」


 ここで伝えなければならない事がひとつ。それは、颯希はもちろんバンドにとっても大切な事。

 つまりは、通常業務を回しながら、職長業務に関する教育を受けていかなければならない。即ち、教育期間中は残業を余儀なくされる事だ。


「親父と離れたから、家でのストレスはかからへんと思う。けど、教育内容によっては…」

「練習とか、きついか」

「うん、まぁ…練習もやけど、曲作るまで頭が回らんかもしれん」


 剛は目を固く閉じ、右手で覆った。

 彰人は両手で自分の頬をパンパン叩き、ぶつける所のない不満を抑え込もうとした。


「それ、先言えや」

「ごめん。言い出しにくかったねん」

「それ、その3月の人事までか?」

「職長心得になったら、定時ですぐに帰れるかどうか分からん」

 ―ああ。


 今回のライブ前の練習の光景が、脳裏に蘇る。

 心身共にボロボロになっていた、颯希の姿。疲れ果て、声も出ない状態。

 生業についてはそれぞれ別の道を行くが、バンドとしては、心はひとつだ。誰か1人でも辛くなるようではダメだ。

 剛は、別の意味で意を決し、その一言を言った。


「とりあえず、4月までは休もう」

読んでいただき、ありがとうございます。


ライブ後に、自費制作盤の話が。

音楽を演るからには、自分達の音を残したい。

きっと皆が思う事でしょう。

PCで制作出来る今、音を残す事は難しくありません。

でも、多くの人に聴いてもらうとなると、それは容易くないですね。

CD制作費は、一般的にどれぐらいかかるのか、調べました。

あくまでも一般的に言われている金額になります。

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