12 番外編:下賜が決まった後の二人
サンドラ目線の番外編です。
私がラッセルからルーファスに下賜されることが内々に決まってから1ヶ月。
下賜されることを公にするには議会の承認が必要なのでもう少し時間がかかるとのことだ。
つまり、私とルーファスの関係を知っているのは、家族とごく一部の官僚達だけ。
そんな中、王宮の侍女控室では、侍女たちによってこんな会話が繰り広げられていた。
「第一王子殿下のこと、お見かけした? もの凄く格好良くない!?」
「分かる! すらっと背が高くて、笑顔が可愛いのよね」
「凄く素直に御礼を言ってくれるのよね。今までの王族の方々とは、全然違う……」
「癒しよ、癒し! 私、ルーファス殿下の部屋の掃除に行ってくるわ」
「ちょっと、順番よ!」
どうやらルーファスは、侍女達の人気を集めているようだ。それはきっと、良いことなのだろう。
問題は、買い物に行く途中の、光花ちゃんの透明化魔法をかけられた私が、それをばっちり聞いていたということだ。
(もしかして、ルーは大変モテる……!?)
ルーファスは成人して執務デビューしたばかり。
実は先日、似たような会話が女性執務官達の間でも繰り広げられているのを私は聞いてしまっている。
素直で笑顔が可愛い私の子は、どうやら王宮勤めの女性陣の間で、たいそう人気者らしい。
(ルーはあんなに綺麗で可愛いのよ。よく考えたら当然だわ……)
自分の好きな人がモテる。
初めての展開に、私は自分で思った以上どころか、ぐらっぐらに動揺していた。
なんだろう、この体の奥から揺さぶられるような不安感は。
私はぶんぶんと頭を振って思考を飛ばした。
私は今、森花ちゃんと光花ちゃんと一緒に、ルーファスの執務室に昼ご飯の出前に向かっているところだ。
変なことを考えるよりもまず、このお昼を運んでしまおう。
廊下の角を曲がったところで、ルーファスの執務室から、官僚達がわらわらと出てくるのが見えた。
男性三人と、女性が一人だ。男性の一人が上司で、残り三人がその部下と言った様子である。
私はなんの気無しにその四人を見ていて、ふと、女性が凄く若くてとても可愛らしいことに気がついた。
……別に、執務官に若くて可愛い女性がいても、何の問題もないのに。
だめだ、ルーファスの周りにいる女性を変に意識してしまっている。
私はつい、しょんぼりと肩を落とす。
「側妃殿下」
ぼんやりしていたら、四人に気がつかれてしまった。
彼らは、私を認めると、さっと頭を下げる。
気まずい。
今の私はただの宅配できるお弁当屋さんなのだ。ラッセルに支給された貴族っぽい高そうなワンピースドレスを着ているけれども、ルーファスのお昼をお盆に乗せて、手で運んでいる状態だ。傍から見て、王宮で政治の最先端にいる人たちに頭を下げられるような人物ではない。
今日は光花ちゃんの透明化を解除するのが早すぎたようだ。本当にしまった。
「……ご、ご機嫌よう、皆さま」
「殿下におかれましても、ご機嫌麗しく。ルーファス殿下に御用でしょうか」
「ええ。こちらにいるかしら?」
「はい。ちょうど午前中の執務が終了いたしましたので、室内にはお一人でいらっしゃいます」
「ありがとう……」
先日黒ドレスで啖呵を切ってしまった私は、こんな格好なのになんとなく砕けた雰囲気で返すことができなくて、ホホホとお上品な言葉遣いで対応した。苦しい。顔が熱い。私の言葉遣いは果たして合っているのか。
四人に生温かい目で見られながら、扉の前の侍従に前振りの声がけをお願いし、室内に入る。
私の可愛い子が、いつもどおり満面の笑みで迎えてくれた。
「サンディ」
「ルー」
私の顔を見たルーファスは、目を見開くと、すぐにこちらに駆け寄ってきた。
私から流れるようにお盆を奪って机に置くと、すぐに私の額に手を当てる。
「どうしたの、サンディ」
「どうって?」
「顔が赤いし、目もうるうるしてるんだけど。何かあった?」
「えぐらないで」
恥ずかしかっただけだから、放っておいてほしい。
不思議そうな顔をしたルーファスは、私をぎゅっと抱きしめた。
「ルー、先にお昼を食べないと」
「サンディが教えてくれないから、拗ねてるんだ」
「大人が拗ねてるって自己申告するの?」
「うん。小さい頃からずっと傍にいた、素直で甘え上手な女の人に学んだんだ」
素直で、甘え上手……!?
だ、誰のことだ。そんな人が、小さい頃からルーファスの近くに。
「サンディのことだよ?」
私だった。
「……私、全然甘え上手じゃないわ」
「そう? 最近なんて、毎日僕のことを会うたびに好き好き言って、背中から抱きついてきて……」
「わあーっ!? ちょっとやめて!!」
「そういえば、今日は違うね」
ルーファスが私の顔を覗き込んでくる。
「何か落ち込んでる?」
鋭い。うちの子、鋭い……。
私は、私の顔を覗き込んでいるルーファスの唇を奪った。
「え、サン、何……」
「続きは昼ご飯を食べてからね。ご飯が冷めちゃう」
勢いで乗り切ることにした私は、そう言って昼ご飯を食べるよう促す。
ルーファスは神妙な顔をして昼ご飯に取り掛かった。
妙に食べ切るのが早かった。
そして、昼ご飯が終わったと思った途端に、笑顔で続きを要求された。
私は、話を逸らすことには成功した。しかし、犠牲は大きかったように思う。
昼の出前を終え、買い物から帰り、ラッセルとアリエルちゃんの15時のティータイムを片づけた私は、夕飯の準備をしながら、思考に耽ってうんうん唸っていた。
今更だけれども、ルーファスは何故私のことが好きなんだろう。
私なんてご飯が作れるくらいで、能力的に政治の役には全く立たないし、権力的にもルーファスの後ろ盾になることはできない。そもそもエルフだから、基本的には政治に関わらないようにとラッセルに言い渡されている。
もしかして、私に危ないところを助けてもらった上、他の女性と関わる機会が少なかったから、視野が狭くなっているんじゃないだろうか。
今までは、跡目争いでいつ殺されるとも分からなかった王子王女達に近づく者はほとんどいなかった。
けれども、先だっての私の毒は許さない宣言に加えて、ルーファスという成人した王太子でない王子が現れたことで、周りの目が変わってきている。このままうまく第二王子のレイモンドか第三王子のロドニーが王太子になれば、ルーファス達王子王女の周りには、さらに人が増えてくるだろう。
…………。
これは私……。
「振られるかもしれない」
「誰に?」
「ぎゃあ」
気がついたら、未成年組が、私の後ろにわらわらと沸いて出ていた。百面相をしている私を見ているのが面白かったらしい。
「ドラねーちゃん、ぎゃあってなんだよ、ぎゃあって」
「色気がない! 色気が!」
「サンディが振られるって誰に? まさかルーファス?」
「まっさかー、そんなこと天地がひっくり返っても……」
珍しく何も言い返さず、しょんぼりしている私を見て、その場の全員が固まった。
「え? ドラちゃん、まさか本気で疑ってる?」
「ルーファス何かしたの」
「いや、こういう時はむしろ何もしなかったんじゃ」
「――お姉様!!!」
背後から響いたあまりの大声に、全員がギョッとして声の方を振り返る。
ラッセルの後宮の厨房の入り口に、フリーダちゃんが真っ青な顔で仁王立ちしていた。
「フリーダちゃん?」
「お姉様、まさか、うちの不肖の息子がお姉様に失礼を!? お詫びに息子共々毒杯を」
「違う違う! もー、勘違いよ! 何でもないの!」
毒杯は冗談にならないからやめてほしい。
ようやく口を開いた私に、未成年組もフリーダちゃんも、息を呑んで続きを待っている。
「……あのね、ちょっと悩んでるだけなの」
ごくり、と唾を呑んだ音がした。皆、緊迫し過ぎじゃない?
「最近ルーが、王宮でモテてるみたいでね。だから、そのうち私、振られちゃうんじゃないかなって……」
……。
一瞬、間が開いたあと、私以外の全員が息を吐いた。
「何だぁ〜」
「そんなの絶対あり得ないのに。ドラねーちゃん、心配性だなぁ」
「サンディ、本当にルーファスのことが好きになっちゃったんだね……」
「恋! 恋!」
皆の言葉に、私はトマトみたいに真っ赤な顔になってしまう。
「そんな。わ、私は客観的事実に悩んで……!」
「ルーファスがドラちゃんを手放すはずないから大丈夫だよ」
「あいつ、昔からガード堅くて怖かったもんな」
「本当、ねちこい」
「え?」
ルーファスがねちこい?
意外な評価だ。そういえば、本人も自分で言ってたような。確かに、笑顔で私を離してくれない時は、意外と意思が固いなってときめいたりはするけど。
「ルーファスは素直で可愛いでしょう?」
皆なぜ、青い顔で目を逸らすのだ。
「ドラねーちゃん。ねーちゃんが俺達を庭で拾ってここに連れてきた時、あいつ事前にめちゃくちゃ黒い顔で俺達のこと煽ってたんだぜ」
「あいつが裏で自慢してきてムカついたから、僕たち偵察がてら、親に言わずにドラちゃんに拾われてきたんだもんな」
「フリーダ様が平民じゃなかったら、あいつが国王でよかったと思う」
「ねー。あと、サンディへの独占欲も凄いし、結構面倒くさい」
「嫉妬! 嫉妬!」
「我が子ながらどうかと思いますが、お姉様を手に入れるための根回しはノリノリでやっていたみたいで……」
どうしたの。皆本当に、私の知ってるルーファスの話してる?
「……皆から見たらお兄さんだから、違って見えるのかしら?」
「サンディの純粋無垢な顔が辛い!」
「ドラちゃん、何かあったら皆に相談するんだぞ」
「そうね〜。レイモンド、サンディの力になってあげて。国王の力で」
「いや、国王はロドニーでいいだろ」
「俺はやだ。レイモンドお兄様を差し置いてだなんてとんでもない」
「急に変な呼び方すんな」
こうしてどんどん話が逸れていってしまったので、私の悩みはそのまま保留になってしまった。
皆の目から見たルーファスはねちこいのか。意外な側面だ。
私目線だといつもふわふわして素直で可愛いルーファスなので半信半疑だけれども、そういう側面があるならそれはそれで安心だ。あれだけボロボロで死にそうだった子が、人間らしい強い生命力を育めたようで、とても微笑ましい。
それはさておき、ルーファスがモテるという問題をどうしたらいいのか。
うん、色々考えたけれども、やっぱりこういうのは本人に聞くのが一番だ。
けれども、直球で聞くのではない。
ルーファスの好みを探って、他の女なんか見えないように、私に夢中にさせてやるのだ。
不安になって少ししょんぼりしてしまったけれども、私は悩み続けるのはあまり得意ではない。
それよりも、好きな人には、やっぱり毎日好きだと囁いてまとわりついていたい。だって、そうやって素直でいた方が、絶対に楽しい。
それに、私はルーファスよりもずっとずっとお姉さんなのだ。やはり、ここは年の功を見せるべきところであろう。
一生夢中にさせるのは、恋愛初心者の私には難しいかもしれないけれども、たった50年程度なら、なんとかやりきってみせる。多分。
そんな野望を胸に朝ご飯の出前に来た私は、チラチラと、一緒に朝食を食べているルーファスを見ていた。
「……」
「……」
「サンディ、何?」
尋ねられてしまった。
そわそわしている気配があからさますぎたらしい。
「ルー、あのね」
「うん」
「ルーは何をしている時が一番楽しいの?」
「サンディと一緒にいる時」
…………。参考にならない!
「そういうのはいいから。本当は、どうなの?」
「本当だよ。サンディといると安らぐし、いつも楽しい」
「……私そんなに、楽しい思いなんてさせてないわ」
沈む私に、ルーファスはうーんと思案する。
「サンディは、僕といると楽しい?」
「うん!」
「僕もそんな感じ」
…………。
結局、煙に巻かれてしまった。
なんて小狡い技を使うのだ。政治家っぽい。執務の先輩達に習ったの? 一つ知識を得た。私の好きな人は、とてもずるい。
昼の出前に来た私は、やはりチラチラと、一緒に昼食を食べているルーファスを見ていた。
「……」
「……」
「サンディ、何?」
また尋ねられてしまった。
またしても、そわそわしている気配があからさますぎたらしい。
「ルー、あのね」
「うん」
「ルーはどんな女の人が好みなの?」
「サンディだよ」
好……み………?
「そうじゃなくてね、好みのタイプを知りたいの」
「好みのタイプはサンディだよ」
「そ、そうじゃなくて」
ルーファスは私の髪の毛をサラリと掬い取って口づけを落とす。
「太陽みたいな金色の、サラサラの髪で」
そっと私の頬に手を当てて、近くで目を見つめてくる。
「大きな深い紫の目で」
私の頬に口付けた後、ルーファスは耳元で囁く。
「白くて透けるような肌で、背丈162センチで、いつも元気で楽しそうに笑う、サンドラっていう名前の女の人が好みのタイプなんだ」
私が真っ赤な顔でぷるぷる震えているのを、ルーファスは心の底から楽しそうな顔で見下ろしている。
「昨日から一体どうしたの」
「お姉さん大作戦なのよ」
「可愛い作戦名だね」
結局、可愛い作戦名の大計画は失敗し、私は心の内を吐露することになってしまった。
「ふうん。僕、王宮の人気者なんだ」
「うん。だからね、私なんかを選ばなくても、ルーには沢山選択肢があるの」
しょんぼりしながら言葉を落とす私の手を、ルーファスは優しく握った。
上目遣いで見てくる彼に、私は目を瞬く。
「……それでサンディは安心して、僕を捨てて国の外に出ちゃうの?」
「違う! そんなこと絶対にしないわ! 私、ルーのこと大好きだもの」
「よかった。じゃあ問題ないね」
笑顔でふわりと抱きしめられて、私は頭の中もふわふわしてしまう……。
「……待った! そうじゃないのよ」
「だめだったか」
「すぐ煙に巻こうとする!」
「うん。煙に巻かれるサンディは可愛いからね」
恥ずかしくて、心臓がバクバクしてしょうがない。
このまま煙に巻かれて、窒息死してしまいそうだ。
けれども、私はお姉さんなのだ。誰がなんと言おうとも! ちゃんと話をしないといけない。
「ルー。ちゃんと聞いて」
「はい」
「私はね、ルーのことが好き。実家で80年くらい過ごして、その後40年くらいふらふら旅をしていて、いろんな人に会ってきた上で、ルーが初恋なの」
「サンディ、キスしたい」
「我慢して。……私、ルーが好きよ。だけどね、ルーは、私以外の女の人とほとんど関わったことがないでしょう。それなのに、こんなに若くして私を選んでしまっていいのかなって」
眉をハの字にした私を、ルーファスがもどかしそうな顔で見る。
「……それで?」
「うん。私、きっと私の村の人たちと一緒で、自分で思ってるより情熱的だと思うの。結婚したら、きっとずっとルーのこと手放さないわ。ルーに危害を加える人がいたら狂戦士化するし、浮気なんてする暇も与えないと思う。ルーの短い人生を独り占めよ。だから、ルーに覚悟を決めて欲しくて」
「覚悟? 僕がするの?」
目をぱちくりさせるルーファスに、私は頷く。
「そう。一生ずっと私に愛される覚悟」
そう言って、私はルーファスに抱きつく。
「その覚悟を決めるために必要なものは何かなと思って。私にできることがあるならしてあげたいの。何かしてほしいこと、ある? 私はお姉さんだから、大人の余裕でなんでもしてあげる」
「キスしたい」
「それは後で」
ルーファスが苦悶の表情を浮かべた。己との戦いに苦しんでいるらしい。
私は抱きついたまま、静かにルーファスの反応を待っている。近くに寄り添っていると、大好きなルーファスの匂いがする。なんとなく嬉しくなって、好き好き言いながら意外と硬い胸板にすりすり頬擦りをした。幸せ。
「僕に我慢させる気ある?」
「え?」
「いや、いい。……僕はそのままのサンディが好きだから、サンディは何もしなくて大丈夫だよ」
「えー……」
不満そうな私に、ルーファスは苦笑する。
「僕はね、小さい頃からオムライスが大好きなんだ」
「? うん……」
急にオムライス?
「サンディが作ってくれたトマトソースのオムライス。ふわふわで美味しいよね。いつもハートマークが描いてある」
「そうね、いつも描いてる」
「でもね」
ルーファスの顔が近づいてくる。
そして、唇が触れるか触れないかのところで止まった。
「実は、大人の味のデミグラスソースのオムライスも食べてみたいと思っていて」
オ、オムライスの話よね?
しかし、これはどういう体勢なのだ。
「ルー近いわ。ルーが好きすぎて話が入ってこない」
「頑張って。……サンディがデミグラスソースを作れるようになって、ようやく念願のオムライスを食べられることになったんだ。ソースの味見もして、食べたら絶対に美味しいと分かってるオムライスが、お皿に乗って僕を待ってる」
ルーファスがゆっくりと、そしてたっぷりと私の唇を奪った。唇が離れた後、彼は「味見」と呟く。……オムライスの、話……?
「そうやって、ずっと楽しみにしていたオムライスが後少しで食べられるという時に、知らない料理を、これも美味しいんだよって横に出されても興味が湧かないだろう?」
「……そう、かも」
「ね。僕は念願のオムライスが食べたいんだ。ずっとそれだけで、それしか知らなくていい」
優しく抱きすくめられて、ぼうっとなってしまった私に、ルーファスは優しく尋ねる。
「それで、サンディは僕が死ぬまで、僕のことを好きでいてくれるの?」
「もちろんよ。そんな短い間で心変わりしたりしないわ」
「そっか……」
私の言葉を噛み締めるようにした後、ルーファスは私に微笑みかける。
「じゃあ僕は一生幸せだ」
その言葉を聞いて、私は、そうかと思った。
お姉さん大作戦といいながら、私は自分が安心したかっただけなのだ。若いルーファスが、私を選んだことをいつか後悔するんじゃないかと、不安だった。何でもしてあげることで、この不安を解消したかった。
そして、ルーファスの言葉を聞いて、心底安心して満足してしまった。私はとんでもなくずるいお姉さんだった。
「ルーは私が欲しい以上のものをくれるから、私はダメなエルフになりそう」
「そう? じゃあ今度は僕の欲しいものをくれるかな」
「え?」
「サンディの話は終わったから、今度は僕の番だ。もう我慢しなくていいよね?」
そう言うとルーファスは、王宮で人気を博しているその爽やかな顔で、にっこりと微笑んだ。
それに対して、私はいつかの如く「え?」「え?」と壊れた人形みたいに目を瞬くことしかできない。
果たして私は、昼休みが終わるまで、ルーファスに離してもらえなかった。
ようやく、家族の皆の言っていたことが、少しだけ分かった。
ルーファスは確かに、ちょっとだけねちこい。





