転生
俺は、死んだようです。
死に方は確か⋯⋯
◆
「今日もレイドイベント参加拒否されたんだが」
今はRPGゲームのレイドイベントをやっている時期で、参加したくて適当なパーティに参加申し込みしたんだけど、自分が使っているjobは魔法剣士で中途半端だからと拒否されている。
魔法剣士は魔法使いよりも魔法が弱く、剣士よりも剣の術が弱い。
しかし、ソロプレイヤー向けのjobなので使っているが、このようなレイドイベントではパーティ参加出来なくて辛い。
「喉が乾いた」
部屋から出てリビング、台所に向かって冷蔵庫からお茶を取り出す。
ゴクゴク。ザサザサ
「む?なんの音だ?」
庭の方から足音が聞こえて、気になったので庭に繋がる扉から出てみる。
「あ」
そこに居たのは隣の家のペットのわんちゃんでした。
「ワフ!」
「おお可愛いねぇえ」
よしよし、と撫でてから犬にはリードがあったのでリードを引っ張りながら隣の家まで向かう。
扉が空いていた。
「不用心だな」
「グルル、ワン!ワン!」
「おお、どうした」
気になったが付いて来てくれたのでそのまま家に入る。
「不法侵入ではありませんよ〜お邪魔しますぅ」
隣の家に入ってこのわんちゃんの主を探したら、テレビが付いているようでバライティーの音が聞こえる。
リビングの扉を開けて中の人を確認した。
「あの、そちらの犬がこちらの庭に来たので連れて来ましたよ。あの、聞いてますか!」
リビングのソファーに座っている隣の人、髪型から嫁さんの方だろう。
実はこのとお隣さんは新婚夫婦で最近引っ越して来たのだ。
近づいて肩を揺らすと、パタンとソファーに寝っ転がる。
「え、あ、わあああああああ!」
「ワン!」
ち、血が着いていた。
自分の手にも着いている。
く、首を切られて死んでいた。
「うっぷ、ぼべあ」
吐いた。気持ち悪い生臭い。
「一体何が、そ、そうだ。まずは警察、警察呼ばないと」
携帯持ってきてない!この家の電話で!
「くっそ!どうして固定電話がないんだ!」
今時そんなのはないのか!
「おい、わんちゃんよ。リードは外しておく。首輪は付けておく。とりあえず逃げろ。言葉が分かるか知らんが」
急いで自分の家に戻り、靴なんて脱いでいる暇なんて無いのでそのまま上がる。
まあ、自分の家だし問題ないだろう。
「電話電話!えっと警察の電話番号はっと、早く繋がれ!早く繋がれ!⋯⋯あれ、どうしてあの嫁さんの血は暖かったんだ。それにわんちゃんもリードがあって、こっちの庭に来たのも割と近いじ、かん」
心臓のバクバクが止まらない。
『はい、こちら交番です』
「たす⋯⋯」
『あの、どちら様ですか?』
バタ、首を切られた高校生の死体が首を切られて絶命し、倒れた。
「あ、間違えましたすみません」
『あ、そうですか。気を付けてください』
ガチャり
「ワン!ワン!ワン!」
「五月蝿い犬だな。ほんと、どうしてあいつはこんな犬を飼ったんだよ」
「ワン!ワ⋯⋯」
「フー静かになった。さっさと逃げるか、おっと、少し金目の物は頂くぜ。逃げ為の肥しにしてやるよ。あと、風呂借りるぜ、血腥いんでね」
そう言って男は風呂場に向かった。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯
「おーい帰ったぞー」
「ただいまー留守番ありがとうね」
「お兄ちゃんお土産買ってきたよ!」
父、母、娘の3人がリビングに入る。
ドサリ
荷物を落とす音が響く。
「お、おに、⋯⋯おにちゃ、お兄ちゃん?なの、いや、いやああああああああ」
「どうして、こうなって」
「そんな、私達が買い物に行っている間に何が。⋯⋯警察呼ばないと⋯⋯」
三者三様の反応を見せ、父は呆然とし、母、虚ろな目でロボットのように電話を探し、娘は泣きじゃくることしか出来なかった。
3人が見たものは首が切断された犬と、首を切り取られた体に机の上には生首が、机からポタポタ落ちる赤い液体、この現状を3人は受け入れようとはしなかった。
◆
ここはどこだよ。
いや、分かるよ。森だよね。
木々は鬱蒼として地面は土!そして、俺は柔軟性の高いポディを持っている!
「完全にスライムなんですがそれは?」
どうして俺がスライムになってるの?これは、あれか?転生したのか?
殺された自覚すら芽生えないのだが⋯⋯てか!家に帰せよ!
父と母と妹に会いたい!
家に帰りたい!
「でも、何をしたら。体が動かせるようになったのも2時間は掛かっただろうし」
時間が分からないの辛いよ。
「なろう系ラノベ定番!ステータスカモン!ステータスオープン!」
なんも起こんね!
スキル獲得しましたか〜的な音声も聞こえなかったし、どうしたものか。
「スライムとか嫌なんだけど!責めて、初めては卒業したかった。うぅ、引きこもりには無理か⋯⋯ちくせう」
さて、色々と不満を漏らした事で全くスッキリした感はないが、まずは進んでみる事にする。
「ステータスオープンでダメなら、スキルボード」
ダメか。
「ステータスボードオープン」
これもダメ。
「スキルツリー」
これまた何も起こらない。
「ああ!もう!責めてスキル持ってんなら確認させろよバカ!ゴミ!カス!運営或いは神!畜生!」
ああ、全くお先真っ暗なんだけど。
「スキル来て!スキルショップ!SP!」
どれもダメなんだけど!
「スキル可視化!」
ピロン
「き、来たァァァァァァ!」
〈スライム〉
無名
《スキル》
引き継ぎ【極】五感【極】
《派生スキル》
第六感【E】
《固有スキル》
消化【F】吸収【F】
《未開放》
「分かんね!FとかEはランクだろうけど、なんで極があるん?なんだよ極って!最高レベルまで鍛えたって事?なのに五感?しかも引き継ぎってなんだよ!派生スキルの第六感とは?五感の派生か?固有スキルはスライム限定スキル?未開放とはなんぞよ?レベル不足?でも、レベル概念あんのかな?見えないけど」
てか、名前とスキルだけなんだね。
五感が極なら相当良いって事でしょ?
なら、耳を済ませば
「あった」
念の為に水は必要だ。
なので川が近くにある事祈って耳?を済まして音を探った。
お陰で川を発見したのでその方向に向かっていく。
「川だ」
まあ、川の音を聞いて来ているので有るのは当然なんだけどね。
「いやー冷静な自分に驚くよ」
ちなみに歩くとゆうよりもズルズルと動いている。
ぽよぽよ動いた方が速そうだが、出来ない。
「水の味も分かるのかな」
水の中に入ってみる。
「おい!そこのスライム何してる?」