20 親愛なる友人
「バーバレラ、貴女のお陰で私は痩せられたし、考える事もできるようになった。誰か……シュレイクだけれど、のために何かしようと思う心は、ずっと忘れずにいるわ。そして、罵倒されているのか、厳しい優しさなのか、それをちゃんと見極めるようにする。……貴女にお返しがしたいの」
フレデリカ王女の今後の食事に関して(あれはダイエットメニューなので、通常の食事に戻していく過程が必要だ)の話をするために王城にあがり、今なら運動を好んでいるのでお茶にお茶菓子という形でもてなされて、私は御礼と言われて首を傾げた。
きちんと国からお給金は出ていたちゃんとした役職だったし、私はそれを全うしたにすぎない。頑張ったのはフレデリカ王女だし、私も毎日付きっ切りだったわけでもない。それでもやり遂げたのだから、今後はもう大丈夫だろうと思っている。
お礼をされるような事ではないし、どうしようかと思っていると、フレデリカ王女は少し気恥ずかしそうに続けた。
「実はね、私、社交界デビューがまだだったの。それで、その……お礼とは言ったのだけれど、バーバレラ。私と一緒に社交界デビューしない?」
「社交界デビュー……ですか。そういえば、そうですね。私もまだ社交界デビューしていませんわ」
「そのドレスや宝飾品を私に用意させてちょうだい。私に当てられた予算、今年は全然使っていないの。体型がどんどん変わるし、もう毎日のようにお茶会をしているわけじゃないから。社交としてお茶会や夜会に出る事があっても、これ以上太る気はないから、やっとちゃんとドレスを仕立てようと思って……貴女に、お金じゃない御礼がしたいのよ」
そういうことなら、と思って私はほろ苦く笑った。フレデリカ王女との出会いは最悪だったけれど、性質は素直だし、噂を流すには周りに操られ過ぎていた。その彼女が自分の意思でこうしたい、と言葉で伝えて来る。金貨を投げて寄越してこれで当たり前だわ、という人間ではない事を表明したいと言っている。
これを受けないのは、随分と親しくなった家臣としては申し訳無いだろう。
「わかりました。フレデリカ王女、期待してお待ちしています」
「もちろん、エスコートはユージーン公爵なのでしょう? 私はお兄様にお願いするの。公爵とはうまくいっていて?」
「な、何を言うんですかフレデリカ王女! う、うまくは、いっていますけれど……」
「彼は、とってもいい人よ。今なら分かるもの。本当に憑き物が落ちたような心地よ」
彼は最初から、フレデリカ王女にとって益になる事しか言わなかった。それは真実だが、あの言い様は酷い。未だに他の女性や貴族に対する愛想の無さには驚きが隠せない時もある。
でも、私には優しい。その二面性が怖くて、でも、私に向けている顔も真実だというのは伝わって来る。
「……社交界デビューをしたら、遅くなりましたが、婚約を進めようと思います」
「! そう! 結婚式もお祝いさせてちょうだい。……私の親愛なる友人、と言ってもいいかしら?」
そういえば、私にも同年代の女友達なんていなかった。
今更他の女性とここまで親しくなれる気もしない。それに、私はなんだかんだちゃんと頑張ったフレデリカ王女が好きだ。
「喜んで。親愛なる友人、フレデリカ王女」
「ありがとう、バーバレラ」




