13 第二王女の呼び出し
トラブルというのは次から次と舞い込むもので、私はろくにドルチェの世話をする事もできず(厩番が誠心誠意世話をしてくれているそうだ)、お茶会の昨日の今日で第二王女からの呼び出しを受けていた。
しかも、今日。いきなり登城しろとのお達しである。わがままに過ぎるんじゃないか、と思うが、貴族の令嬢なんて暇だと思っているのかもしれない。実際、お茶会に集まった令嬢たちは暇なようだった。趣味を聞いたら詩歌音曲や刺繍ばかりで驚いた。
お母様はよくわかっていらっしゃる。私のために毎年4着はドレスを仕立ててくれていたようだが、赤の他にも青や紫といった強い色のドレスが揃っている。私の趣味も見た目も性質も理解しているラインナップで、どれを着て行っても恥ずかしくない。
一応は控えめにしていこうかしら、と思ったけれど、『怪物姫』だなんてでたらめを言って我が家の使用人を困らせたのは第二王女なのだ(広めたのはハーティス伯爵令息だけれど)。
紫のドレスにしよう、と思った。このドレスは色が色だけにデザインが一番洗練されている。高級感もあるし、第二王女に『負ける』程度ならば国境の守りなんて務まる筈もない。
身支度を整え、今日は少し強めの化粧をして馬車を回してもらおうかと思った所に、セルゲウス様の馬車が迎えにきた。
驚いてエントランス前に停まる白塗りの馬車を見詰め、中から彼が申し訳なさそうな顔で降りてくるのを見て、こちらの胸が苦しくなった。
「聞いたよ。……どうやら、私のせいで君の悪い噂が広がったらしいね。今日まで知らなくて申し訳なかった。第二王女と話すのなら、私もついていこう」
誰から何を聞いたのかはわからないが、一応自分の優しさ故の毒舌無愛想がどんな波紋を呼ぶかは理解したセルゲウス様が迎えに来てくれたようだ。
少し、ほっとしている自分がいる。
本当は、領地を出たときから一人で心細かった。王都という場所で私は『怪物姫』という全く知らない人物に仕立てられていた。
そんな私でも待っていて、優しくしてくれて、婚約する気でいてくれたセルゲウス様が、今日もついてきてくれるという。
「し、仕事は……どうするんです」
「1日や2日私が居ないくらいで傾くような人材は集めていないよ。さぁ、行こう」
胸が詰まる。私が泣いてしまいそうだ。しかし、私に力強く微笑みかけて手を差し出してくれるセルゲウス様がいれば、私はなんだか、なんでも大丈夫だ、という気になってしまうのだ。
彼の手をとって、迎えに来てくれた馬車に乗り込む。
第二王女がどんなつもりで私を呼び出したかは知らないけれど、セルゲウス様がいるのならば、何も問題は無いように思えた。




