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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カラテファイター異世界に行く

作者: 高橋誠

ドーモ、ドクシャ=サン。タカハシマコトです


ということでニンジャスレイヤーをパロッた作品です。

ただ、日本人にはあの世界観を描くのは難しいということで、オリジナルに比べてかなり落ち着いた作品となっております!


アイエエエ!カラテ!?カラテナンデ!?

 日本。

 古来より数々の武術武道が連綿と続く国。

 メジャーなところでは剣術、剣道あるいは柔術や相撲など、多くの武が存在する。

 その中でも特に最強と言われる武術――――それがカラテである!


 拳足による打撃を主とするが、それ以外にも掴みや投げ技をも得意し、一流の空手家ともなれば棒術やヌンチャクなどの多彩な武器をも扱う多様多彩、千差万別の技をもつ武術。

 古来よりカラテを習得できるのは一握りの選ばれた強者のみであり、それ以外の者たちは過酷な修行の最中、命を落とすことも珍しくはない。

 過酷な自己鍛錬と精神修行という修練を経ることで、最終的に『カラテパワー』を体得し、カラテに最適化された肉体、精神に至る。その境地に至った者たちのことをカラテファイターと呼ぶのだ。


 戦国時代や近代戦争の折にも、カラテファイターは多大な功績を残している。

 かの天下分け目の血戦、関ヶ原合戦においても、徳川軍についた一人のカラテファイターが文字通り一騎当千の活躍をした結果、見事徳川軍を勝利に導いたのである。

 また、近代戦争の中でも特に有名な第二次大戦も、カラテファイターがあと二人いれば歴史は変化していた、と語られる程の活躍を見せたのである。

 後年のアメリカ軍も、カラテファイターの恐ろしさを以下のように語っている。


 とあるアメリカ軍兵士の記録。


 「ああ、あんな恐ろしい存在は初めて見たよ!戦闘機の攻撃をものともせずに、ただひたすらにこちらを攻撃してくるんだ。戦艦にすら大打撃を与えるミサイルも彼らには通用しなかった。

 それどころか、ミサイルを素手で掴んでこちらに投げ返してくるんだ!隣にいた仲間が目の前でやられたときには死を覚悟したね!

 それにたった一人で巡洋艦や空母を撃沈していくんだ。彼ら一人のためにどれだけ多くの仲間が血を流したことか……。

 機銃の弾なんか、彼らの肉体には歯が立たなかった。日本軍の兵器で一番恐ろしかったのはヤマトでもゼロセンでもない……間違いなく彼ら、カラテファイターだ!」


 そんなカラテファイターだが、日本国が第二次大戦で敗北を喫した際に、その脅威からアメリカ軍がカラテの存在を抹消。

 それ以降、表の歴史からカラテが顔を出すことはなかった。

 しかし!!

 カラテの歴史は途絶えていなかった!

 いまここに一人、カラテファイターとしての修行を終えた男が存在する。

 

 その男の名前は、大和田智也(おおわだともや)

 長い黒髪を後ろで束ね、カラテ道着を身に纏う。その肉体は巌のように大きく頑丈であり、同時に流水の如きしなやかさを有している。

 まさにカラテファイターとして理想の肉体。

 彼は幼少期からカラテファイターとなるべく、過酷な訓練を積んできた男なのだ。

 彼こそが現代に蘇った、新たなカラテファイターなのである。

 そんな彼のもとに、一人の老人が尋ねてきた。


 「そなたがオオワダか?」


 老人が問う。

 その姿は現代日本においては風変わりな全身を白い装いで身を包んでいる。また、もう一つ目を引くのが、胸元まで伸びた真白い髭。

 まるで古来より伝わる仙人そのもの!

 彼は今精神修行の最中であり、一切身体を動かすことなく、老人を見やった。


 「名を訪ねるのであれば、まずは自分から名乗るのが礼儀だろう」

 

 カラテファイター同士の闘いは、まず挨拶から始まる。

 それを行わずの闘いは御法度であり、それを欠いた者はカラテファイターの座を剥奪される。

 それ故にカラテファイターは挨拶を何よりも大切にする。


 「ふぉふぉふぉ。そうじゃな、それは失礼した。じゃがあいにくと儂には名前がなくてのぉ……神とでも呼んでくれればよいぞ」


 「神だと?」


 「そうじゃ。それでおぬしがオオワダで間違いないのじゃな」


 「ふん、面白い老人だ。ああ、俺が大和田智也だ……それでこんな辺境の地まで何の用だ?」


 彼が修行している場所は人里から遠く離れた山地の奥底。

 常人であれば人里まで歩きで数日はかかるだろう僻地に住んでいるのだ。

 彼が生まれてから、自分の両親以外の人物に出会ったのは十数年の中でたった二回。

 そのどちらもが他のカラテファイターであり、それ以外の客人というのは初めてであった。

 

 「実はとある場所に来て欲しいのじゃよ」


 「とある場所?それは一体どこだ」


 「聞いて驚くでないぞ――――なんと異世界じゃ!」


 その言葉に、大和田は微かながら眉を動かす。


 「まあ儂にとってはどちらも同じ世界のようなものなのだが、この世界から見れば別の世界であることは間違いないじゃろうよ」

 

 老人の言葉を耳にすると、大和田は一つため息を吐いた。


 「じいさん、冷やかしなら帰ってくれ……あいにくと俺は暇じゃないんだ。こんな山奥まで来てもらって悪いが帰ってくれ」


 そう言って大和田は精神修行を再開する。

 その後も老人が何か語りかけている様子だが、精神統一中の彼の耳には届かない。

 しばらくして大和田の視界がまばゆい光に包まれる。

 目を閉じていた筈だが、それでも尚届くほどの強い光。

 

 その光に疑問を覚え、大和田はゆっくりと目を開いた。

 そして息を呑んだ。

 

 なんと華絢爛な装飾品が飾られた室内にいたのだ。

 その他にも見たことのない人間が数十人。重厚な鎧に身を包んでいる。


 「召喚は成功です」


 室内に響く女の声。

 それと同時に、大きな歓声が湧き起った。


 「ここは一体!?」


 「初めまして勇者様。ここはユーステリア王国の王宮――――私はアリア・ユーステリアと申します」


 目の前の女性が美しい動作でお辞儀をする。

 その女性は絢爛なドレスを纏い、いかにも高級そうな宝石を身に着けていた。

 

 「何が起こった?」


 「私が召喚魔法で貴方様をこの場に呼んだのです」


 「お前が俺を?あの老人がなにか言っていたが、それと関係があるのか?」


 「貴方はこの世界を救うために勇者として選ばれました。どうかこの世界をお救いください」


 大和田にとって女性の言葉は要領を得ない。

 それ故に状況把握までしばしの時間を有した。

 

 「ここは日ノ本なのか?」


 「日ノ本?いえ、ここは貴方がいた世界とは別の世界ですから、少なくとも日ノ本という場所ではございません」


 日本ではない。

 その言葉に大和田は多少なりとも驚きを隠せなかった。

 一瞬にして日本から他の国へ移動した。まさに魔法である。


 「別の世界と言ったな……ならここには日ノ本は存在しないのか?」


 「少なくとも私共の知識には日ノ本という場所はありません。この召喚魔法は同じ世界ではなく、異なる世界から特別な力をもった勇者を召喚する魔法ですので、この世界は貴方のいた世界とは別物です」


 「ふむ。ではお前たちの用件は断る。カラテファイターは日ノ本を守護する存在であり、お前たちの国を救う義理はない。

 仮にこの世界にも日ノ本が存在するというのであれば、世界を救うという話も引き受けたのだが、ないのであれば俺には関係のない話だ。悪いがもと居た場所に帰してもらおう」


 「貴様!それでも勇者か!」


 護衛と思わしき一人の男が、大和田の胸ぐらをつかみかかる。

 突如男が壁に激突!血を吐いて地面に倒れ込む。

 何が起きたのか他の人物たちはわからず困惑。

 目にも止まらぬ速さでの背負い投げ。柔術すらもカラテは取り込んでいるのだ!

 カラテファイターであれば、百キロ近い重さであっても、小石を投げるように容易!


 「おのれ!」


 他の騎士たちも皆一様に大和田に襲い掛かる。

 数の差は圧倒的に不利。

 しかし流石はカラテファイター。まるで赤子をひねるかのように騎士たちを無力化していく。

 カラテファイターは殺し合いの前には挨拶を忘れない。

 大和田が挨拶をしていないのであれば、それは殺し合いではないのだ。

 それ故、騎士たちは誰一人死んでいない。

 

 「おやめなさい!」


 アリア・ユーステリアの声が室内に響き渡る。

 その一声で騎士たちの動きが止まった。

 残っているのはたった数人。それ以外はすべて地面に倒れ込んで気絶している。


 「勇者様、残念ですがヴォーストンを倒すまでは貴方をもとの世界に帰すことは不可能なのです。それは私たちがどれだけ努力しても不可能……神とそういった契約を結んだうえで、貴方をこの世界に招いたのです」


 「神、だと?」


 あの老人は自らの事を神と呼んでいた。

 であればこの事態の元凶はあの老人ということになるだろう。

 

 「…………帰れないという言葉、嘘ではないだろうな」


 怒気のこもった声音。

 その迫力にアリアも、騎士たちも全員が腰を抜かし地面に座り込む。


 「は、はい!」

 

 その言葉に嘘はない。

 カラテを極めれば言葉の真意を見抜くことも容易い。

 彼女たちが嘘をついていないということは、明確だった。

 

 「仕方あるまい……日ノ本に帰る方法がそれしかないというのであれば、協力はしてやろう。それで、俺が帰る為には一体なにをすればよいのだ?」


 「…………ゆ、勇者様にはヴォーストンという怪物を倒してもらいたいのです。かつて魔王を討伐した英雄たちですらヴォーストンの前には無力であり、この国にヴォーストンに対抗できる人間は残っていない。

 だからこそ異世界から来た勇者様にヴォーストンを倒してもらいたいのです。そして世界を救ってください」


 「よく分からんが、そのヴォーストンとやらを倒せばいいんだな。それでそいつはどういう奴なんだ?」


 「私も直接視たわけではないので詳しいことまでは分かりませんが、どうやら魔法攻撃しか受け付けない肉体を持つようです。

 それもただの魔法ではなく、上位魔法のみしか……上級魔法を扱える人物などこの国には数えるほどしかいません。しかし、彼らが束になってもヴォーストンには掠り傷程度しか与えられなかった。

 おそらくは異世界の勇者のみが使えるという神級魔法でなければ、まともなダメージは与えられないのでしょう」


 「魔法?なんだそれは」


 カラテファイターは己の肉体で闘うことを主とする戦士。

 状況に応じて様々な武器種を使用することもあるが、魔法は使えない。

 

 「え!?勇者様は神級魔法と称される最上位魔法を使えると、王国叙事詩に記述されていたのに……」


 「悪いがカラテファイターは魔法なんてものは使わない」


 大和田の一言に王宮は騒然。

 慌てふためく兵士、絶望に打ちひしがれる者たち。


 「そ、そんな。それではヴォーストンを打ち倒すことは不可能……」


 アリアが震える声で呟く。

 刹那――――


 「クハハハハ。我を倒しうる可能性があると噂された勇者とやらがどんなものか見に来てみれば……見事なまでのポンコツではないか!

 この程度の存在が我を倒す希望だとは、さしもの我も片腹痛いわ!」


 兵士の一人が高笑い。

 次第にその姿を変え、大きな巨体のドラゴンへと変化した。

 それによって王宮の天井は崩壊。広間にいた全員は天井の瓦礫に潰されて死亡。

 否!


 「お前がヴォーストンとやらか」


 大和田は無傷!

 アリアも多少は負傷したものの、兵士たちの手助けによって命に別状はなかった。


 「クハハハ、この程度で死んでもらってはつまらぬ。まずは小手調べと行こうか」


 ヴォーストンの周囲に異形の生物現る。

 蛸のような触手を持ちながら、人間と似た肉体をもち、全身が眼球に覆われているまごうことなき怪物。

 まるでこの世のモノとは思えないようなおぞましい姿の怪物が五匹。

 それらが無数の触手をもちいてカラテファイターに襲い掛かる!


 まるで銃弾の嵐。

 音速に匹敵する速度で飛来する触手の連撃。

 大和田の着ていたカラテ道着がズタボロに破れてゆく。

 破け去った道着の下には…………


 鋼の如き肉体!

 流石はカラテファイター!まったくの無傷である!


 「ふんっ!」


 なんと怪物たちの肉体が上下真っ二つ!!

 大和田が繰り出したのは外手刀打ち。空を切った手刀打ちは真空の刃となって怪物の肉体を切断。王宮の外壁までもっを切り裂いた。


 「ほう。我が兵を一撃で屠るか……なかなかやるようだな」


 ヴォーストンの関心を他所に、大和田は手を前方に十字クロスさせ、そのまま勢いよく腰元に手を戻した。

 カラテファイターの挨拶、『押忍』である。


 「押忍!!」


 アイサツは決しておろそかにできない。

 それがカラテファイターの礼儀である。

 例えこれから殺し合いが始まるとしても、それだけは欠かすことができないのだ。

 アイサツは大事。古事記にもそう書かれている。


 「なんだそれは?」


 「知らぬのであれば、知る必要なし。なぜなら、貴様は俺が地獄に送るからだ」


 「出来損ないが舐めた口を!」


 先に動いたのはヴォーストン。

 山をも穿つ巨竜の爪が、大和田に襲い掛かる。

 轟音を響かせながら巨躯が迫る。

 巨体に似合わない猛スピード!

 しかし、大和田の身体はそこにはなかった。


 華麗なるジャンプにて攻撃を回避。

 その後流れるような動きからの回し蹴りが見事炸裂!


 「何!?」


 「ほわっちゃあああ!」


 十メートルは優に超える巨体が、たった一撃で倒れる。

 

 「な、何故だ!何故ただの蹴りで我が肉体に傷を与えられる!?」


 その問いに、大和田はゆっくりと息を吐いて答える。

 

 「カラテに不可能なし。たとえどんな相手だろうと必ず殺す。それがカラテ!最強の格闘術である」


 「くっ!なれば我が最強の一撃にて貴様を葬り去るまでだ!!」


 ヴォーストンの口に炎が灯る。

 周囲の物質を融解させる超高温の炎である!


 「な、なんて魔力量……これでは王国全てが火の海になってしまう」


 震える声で呟くアリア。

 周囲の兵士たちも絶望に武器を手放し茫然と立ち尽くしている。


 「この国ごと燃やし尽くしてやる!!」


 ヴォーストンの口から炎が吐かれる。

 しかし迂闊!

 カラテファイターに時間を与えるということは、ソレすなわち死を意味する。


 「すうぅ」


 深い呼吸。

 大和田の両手はこぶしに握られている。

 カラテ最強の奥義――――正拳突きである!!

 カラテファイターの正拳突きはあらゆるものを破壊する必滅の拳。

 ヴォーストンの炎すらもかき消して、その拳が巨躯に必中する。

 大和田の拳がヴォーストンを貫く!


 数秒。

 まるで時が止まったかのような一瞬。

 

 「ガ、ガアアアアアア」


 「押忍!」


 ヴォーストンの身体が爆発、肉片のみを残して霧散した。

 ここに邪竜ヴォーストンの脅威は去ったのだ!!



 その後、大和田は無事日ノ本に帰還し、カラテファイターとしての修行に戻ったという。

 そして邪竜ヴォーストンを退けた異世界は、カラテが新たな訓練に取り入れられ、カラテ大国として名をはぜることになるのだった。


 ――――――――完!!! 

 

 


もう少しはっちゃけた作品にしたかったのですが、自分には無理でした。

初投稿でこんな作品はどうかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました!


ちなみに、本作のカラテはニンスレ本編にカラテは登場するアレとはまた別物です。


それでは、サヨナラ!

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