設定を広げすぎちゃう
森に放置されるよりはマシと、僕は兵士達についていった。
兵士達は殆ど迷いなく進み続け、あっという間に森を抜けることが出来た。
森を抜けたそこは広大な草原で、少し遠くに城壁のようなものが在った。
兵士は歩きながら石を取り出し口元に寄せた。
その動作は真剣で、演技には到底見えない。
「見えたか? あれが我らが『カラフィート王国』の王都だ」
成程、いわゆる城塞都市というやつか。
しかし、話を聞けば聞くほど謎が増える。
カラフィート王国、これまた聞いたことの無い国名だ。
僕が世間知らずなだけだろうか。
一応尋ねてみよう。
「あの、ここはどの辺りでしょうか」
「ん、ここはカラフィート王国の領土だが……」
「あ、いえ、そうではなく」
訊き方を変えよう。
「ここは地球のどの地域に当たりますか?」
「チキュー? どういう意味かな? 急いでるので手短に願いたい」
はて。
どういう意味とは、どういう意味だ?
「どういう意味かと言われても……、今居るこの惑星のことじゃないですか」
至極当然だ。
これ以外の説明は要らないだろう。
「ああ、もしかして君の居た世界の居住惑星の名前かい?」
君の居た世界? ホームプラネット?
相変わらず奇妙な事を言っているのだが、ここまでの経験からまた、朧気ながら意味がわかってしまい、胸騒ぎがする。
「えっと……、『僕の居た世界』というのは?」
「そのままの意味だ。 君が以前に生き、営んでいた世界だ」
「つまり、ここはその世界ではないと?」
「そういうことだ」
状況が整理できない。
ここは僕の知る世界ではない?
どういう事だ。
僕は昨日、いつも通りの日常を経て布団に入っただけのはずなのに。
目が覚めたら別世界? 冗談にしては笑えない。
「ちなみに、カラフィート王国はこの惑星の南部に位置している」
いやこの際どうでもいいわ!
別世界に飛ばされたショックでそんなの頭に入らないことくらい察せよ……。
そもそもどうして当たり前のように『別世界』などとSFじみた発言ができるのか。
訊こうとしたがそれより早く、
「それより、王都にだいぶ近付いてきたな。 君がこの世界に来たことに関係するのだが、あまりもたもたしてはいられないんだ」
「後でちゃんと説明してくれるんですよね?」
「ああ、事の収拾がついてからな」
一体何が起きているというんだ。
知りたいことは山ほどあるが、今はどうやら緊急の用があるらしい。
早いとこ『僕の居た世界』とやらに帰りたい……。