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窮地ですか?
まさか、敵の新手か?
警戒した僕は後退りしようとしたが、後ろにも敵が居ることを思い出し、踏みとどまる。
幸いスライムの攻撃はまだ来ない。
徐々に開いていく扉の隙間を注視した。
……人影?
「……――、―――」
その人影は小さく呟く。
何を言っているかは聞き取れなかったが、このか細くも透き通る声には聞き覚えがある。
というか、さっき聞いたばかりだった。
「……『――・――――――』」
そして、人影から光の”線”が二本放たれる。
恐ろしいほど速く、精確に直進したそれは、寸分も違わずに、扉の前と、僕の後ろに居るスライムの中心をそれぞれ穿った。
急所を的確に貫かれたスライムは、大した間も置かず、そのまま霧散し魔石となった。
場が静まり返って、思わず人影に呼び掛ける。
「……ダリアさん?」
僕の知り合いの中で、光属性の魔法を使えるのは他に居ない。
いや、厳密には居るのかもしれないが……、――師匠とか。
それでもここに居るはずはないのだ。
「はい、お兄さん。 さっき振りですね」
思った通り、声の主はダリアだった。
しかし、彼女は先程別れた後、ダンジョンの入り口に戻って行ったんじゃなかったか……?




