遭遇戦
通路の少し奥から、足音の様に鳴り響く独特な軽い音が薄らと聞こえる。
音の発生源は少しずつこちらに近付いて来ているようだ。
何だこの音……、今度も人間だろうか?
しかし、僕よりも音の発生源に近かったダリアは、いつの間にか僕の後ろに回り込んで、まさに先程決めた陣形をそのまま作り身構えている。
まるで何かが来るのを予見していたかの様だが、僕よりも高精度の魔力感知によるものだろうか。
何にせよ、穏やかな空気ではないのは明らかで、剣を持つ手にも力が入る。
緊張が走る中、足音を隠そうともせずに暗闇で動いていた影が、すぐ近くの松明に照らされて遂に姿を現す。
……骸骨だ。
理科室の骨格模型に酷似していて、ゲームにおいてはスライムと並んでポピュラーなそれは、師匠との訓練でも見た事があった。
剣も魔法も使わず倒すように指示され、そのとても硬い骨の身体をこの手で叩き伏せさせられた記憶が蘇る。
それが僕達の前に現れた。
ただし、その時とは大きな違いがあった。
色だ。
白が少し黄ばみ、クリーム色に近かった骨は、打って変わって、煤で汚れたような黒になっている。
ゲーム経験則から言うと、色違いモンスターというのは、大抵は質の悪い動きをしたり、強さが桁違いだったりと、碌なものではないが……。
黒い骸骨はその何も入っていない眼窩をこちらに向け、どうやったのか僕達を認識し、更には何処からとも無く長剣を取り出した。
そのカラクリは、存在しない感覚器官を補うための魔力感知と、そして恐らく、物体形成の魔法。
この一週間で教わったことに当て嵌めるならそんなところか。
と、悠長な事を考えている場合では無い。
骸骨は明らかに敵意を持って近付いて来ている。
後ろにいるダリアを確認して、僕は剣を骸骨に向かって構えた。




