書類の読み書き
「お待たせしました。 こちらに必要事項をご記入ください」
奥の部屋から戻ってきた職員が、筆記具と共に数枚の紙を受付のカウンター上に並べた。
それらを僕は一瞥した後、カウンターの前から徐ろに身を避け、振り向いて言う。
「師匠、お願いします」
全く情けない話だが、書類関係は人を頼るしかない。
単純に、文字の読み書きができないのだ。
翻訳魔法は会話に限定されているようで、紙面には所謂ルーン文字と酷似した謎の書記素が連ねられているとしか分からない。
「おう。 じゃあ、読んでくぜ」
ギルド本部の表側、冒険者ギルドからすれば裏側の場所で行ったように、師匠が読み、僕が答え、書いてもらう。 これを繰り返す。
師匠には本当に助けられてばかりだ。
「名前は――、さっきと同じでいいな」
書類には僕の本名が書き入れられているみたいだ。
名前くらいは自分でも書けるようにしたいが、今覚えたところで混乱するだけだろう。
いずれ字の勉強もしなくてはならないな……。
「職業、ここは空欄ーっと」
要は無職だ。
悲しくなるが、この世界に来たばかりだから仕方ない。
今までの召環者も、同じ苦しみを味わってきたはずだ……。
「戦闘スタイル、か。 おい、どうする?」
思わず吹き出す。
普通じゃ書かないようなことを正式な書類で訊かれたギャップが面白かった。
「えっと、それはどういった?」
大体字面通りだろうが、齟齬があったら困る。
「そのままだ。 戦闘において、どのような役割を果たすか――。 例えば、回復とか、遠距離とかって感じだ」




